夫である相手方が,別居中の妻である抗告人に対し,未成年者らの監護者を相手方と指定するとともに,現在,抗告人の下で養育されている二女及び三女を相手方に引き渡すことを求める一方で,抗告人が,相手方に対し,未成年者らの監護者を抗告人と指定するとともに,現在,相手方の下で養育されている長女を抗告人に引き渡すことを求めた事案において,原審は,未成年者らの監護者をいずれも相手方と指定し,二女及び三女を相手方に引き渡すよう命じたところ,抗告審は,姉妹分離の点については,監護者指定に当たっての一考慮要素にすぎないとした上で,二女及び三女との関係では,従前ないし現在の監護環境を維持することが最も子の福祉に合致するとして,長女の監護者を相手方と,二女及び三女の監護者を抗告人とそれぞれ定め,抗告人及び相手方のその余の申立てはいずれも却下した事例
「出て行け」などと記載した文書と人糞を封筒に入れて外国公館に郵送し,関係職員に開封させて内容物を認識させた行為が刑法234条にいう「威力を用い」た場合に当たるとされた事例
1 国会議員の私設秘書として採用する旨の黙示の合意の成立が否定された事例
2 国会議員の公設第一秘書として採用される旨の期待権侵害の成立が否定された事例
前件審判時と同程度の稼働能力を有すると認められるから,前件審判を変更すべき事情変更が認められないとして婚姻費用分担金の減額申立てを却下した事例
約1年間にわたり著しい長時間労働に従事していた調理師が,劇症型心筋炎を発症して最終的に死亡したことについて,長時間労働による過労状態と死亡との間の相当因果関係を肯定して使用者及びその代表者に対する損害賠償請求を認容した事例
個人番号制度によって,個人に関する情報がみだりに収集,利用され,又は第三者に開示・公表される具体的な危険が生じているとは認められないから,番号利用法に基づく個人番号制度が原告らのプライバシー権を侵害しているものとはいえないとされた事例
1 経過観察を受けている被爆者が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律10条1項所定の「現に医療を要する状態にある」と認められる場合(①事件)
2 経過観察自体が,経過観察の対象とされている疾病を治療するために必要不可欠な行為であり,かつ,積極的治療行為の一環と評価できる特別の事情があるといえるか否かについての判断の方法(①事件)
3 慢性甲状腺炎について経過観察を受けている被爆者が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律10条1項所定の「現に医療を要する状態にある」と認められるとはいえないとされた事例(①事件)
4 放射線白内障についてカリーユニ点眼液の処方を伴う経過観察を受けている被爆者が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律10条1項所定の「現に医療を要する状態にある」と認められるとはいえないとされた事例(②事件)
原告らが,被告に対し,原告らの母を養母,原告らの母の孫にあたる被告を養子とする養子縁組は無効であると主張して,その旨の確認を求めた事案において,養子縁組届の外形や,原告らの母の意思能力の状態,養子縁組に至る従前の経緯等からすると,原告らの母が,その意思に沿って,被告の父に署名を代筆させたとは言えず,本件養子縁組が原告らの母の意思に基づくものであると認めることはできないとして,原告らの請求を認容した事例
1 許可認可等臨時措置法(昭和18年法律第76号)及びその委任を受けた都市計画法及同法施行令臨時特例(昭和18年勅令第941号)により内閣の認可を受けることなく行われた旧都市計画法(大正8年法律第36号)に基づく都市計画決定が違法であるとはいえないとされた事例
2 関東地方整備局長が行った道路の整備に係る都市計画事業の認可がその前提となる都市計画決定後の社会・経済情勢の変化との関係において違法であるとはいえないとされた事例
1 派遣先の役員らが派遣労働者の肩に手を回した行為及び役員と共に食事に行くことなどを内容とするくじ引きを派遣労働者にさせた行為はそれぞれ人格権を侵害する違法行為であるとして役員らの不法行為責任を肯定した一方で,派遣先及び派遣元の就業環境配慮,整備義務違反は認められないとして不法行為責任を否定した事例
2 派遣先による労働者派遣契約の不更新は不当労働行為意思に基づくものと認められないとして,派遣先の派遣労働者に対する不法行為責任を否定した事例
暴力団対策法31条の2本文が定める「威力利用資金獲得行為」における「威力を利用」する行為について,資金の獲得のために威力を利用するものであれば足り,被害者に対して威力が示されることは必要ではないとして,いわゆるオレオレ詐欺行為を行う特殊詐欺グループに加担した指定暴力団員の行為が「威力利用資金獲得行為」に該当するとされ,指定暴力団の会長の責任が認められた事例
未成年者らの父である相手方が,母である抗告人に対し,離婚の際の合意により定められた未成年者らの養育費の支払義務の免除を求めた事案において,相手方の養育費支払義務については,支払義務がないものと変更することが相当であるとした上で,既に支払われて費消された過去の養育費につきその法的根拠を失わせて多額の返還義務を生じさせることは,抗告人らに不測の損害を被らせるものであるといわざるを得ない一方,相手方は,養子縁組の成立時期等に重きを置いていたわけではなく,実際に本件調停を申し立てるまでは未成年者らの福祉の充実の観点から合意した養育費を支払い続けたものと評価できるとして,養育費の免除の始期については,本件調停申立月とすることが相当であるとして,原審を変更した事例
1 外国為替及び外国貿易法48条1項に基づき経済産業大臣の許可を要する貨物として定められた重合体繊維から他の繊維を製造する装置の「部分品若しくは附属品」は,当該「装置」の部分品ないし附属品としての用途以外の用途に用いられるものに該当しないこと(専用性)を要する
2 当該貨物である不融化炉及び炭化炉の各炉殻が,前記装置の部分品として用いられることを前提に特に設計・製作され,これが他の用途に転用される可能性が具体的,現実的なものとはいえないなどの本件事実関係(判文参照)の下では,当該貨物は前記装置の「部分品」に該当し,これらを経済産業大臣の許可を受けないで輸出した行為につき平成29年法律第38号による改正前の外国為替及び外国貿易法69条の6第2項2号の罪が成立する
児童相談所長である申立人が,児童福祉法28条1項に基づき,児童に対する児童心理治療施設への入所措置または同施設が定員で入所できない場合に対応するために選択的に児童養護施設への入所措置の承認を求めた事案において,保護者らの,児童の特性に配慮しない暴力等の不適切な行為や児童相談所等による指導への対応等からすると,保護者らに児童を監護させることは,同条同項の「保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合」に該当するとした上で,児童に対しては,早期にトラウマ治療や心理教育など,その特性に合わせた専門的な心理治療を行いながら,生活の安定が図られることが必要であるとして,本件申立てを認容し,併せて都道府県に対し,保護者らに対する指導措置を採るよう勧告した事例
中間省略登記の方法による不動産の所有権移転登記の申請の委任を受けた司法書士に,当該登記の中間者との関係において,当該司法書士に正当に期待されていた役割の内容等について十分に審理することなく,直ちに注意義務違反があるとした原審の判断に違法があるとされた事例
事件本人の養子から後見開始の審判の申立て(甲事件)がされた後,事件本人と任意後見契約を締結した弁護士から任意後見監督人選任の申立て(乙事件)がされた事案において,乙事件申立人が任意後見人となることにより権限が濫用される具体的なおそれまでは認められないものの,公平らしさという点で問題が残ることや,同意権・取消権のない任意後見制度では事件本人の保護の万全を期することができるかについて問題があることなどから,任意後見契約が登記されている場合における後見開始の審判の要件である「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」(任意後見契約に関する法律10条1項)に該当するとして,甲事件の申立てを認容し,乙事件の申立てを却下した事例