雇用保険法62条1項及び雇用保険法施行規則109条が定める特定求職者雇用開発助成金である特定就職困難者雇用開発助成金及び高年齢者雇用開発特別奨励金について,事業主が,偽りその他不正の行為によって助成金の支給を受けたとして,原状回復義務に基づき助成金の返還義務を負うとされた事例
1 児童福祉法(平成28年法律第63号による改正前のもの)27条1項3号に基づく里親委託措置がされた児童を受託した里親につき,当該里親委託措置を解除する旨の処分の取消しを求める法律上の利益の有無(消極)
2 児童福祉法(平成28年法律第63号による改正前のもの)27条1項3号に基づく里親委託措置がされた児童について,個別の里親に対する当該児童の委託を解除する旨の知事又はその権限の委任を受けた児童相談所長の行為の処分性の有無(消極)
有期労働契約を締結していた労働者が労働契約上の地位の確認等を求める訴訟において,契約期間の満了により当該契約の終了の効果が発生するか否かを判断せずに請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
別居親である抗告人(父)が,同居親である相手方(母)に対し,前件調停事件の調停条項に基づく面会交流が実施されなくなったとして,未成年者らとの面会交流を求めた事案において,間接交流のみを認めた原審判を変更し,従前の父子関係,直接交流時の状況,未成年者らの心情等からすると,直接交流を禁止すべき事由は見当たらず,これを速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うとして,直接交流を認めた事例
被相続人がした複数の遺言の効力及び解釈について相続人間に争いがあり,これに関して民事訴訟の提起が予定されている遺産分割事件につき,遺産全部の分割を2年間禁止する旨の審判がされた事例
ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否
国会が民法750条及び戸籍法74条1号の改廃を行わない立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けるものではないとされた事例
顧客と販売店との間で締結された割賦販売契約に付されていた債権譲渡の承諾条項は,民法468条1項の異議をとどめない承諾としての効力を有しないとした上で,いわゆる名義貸しに加担した顧客(控訴人)が,割賦代金債権を販売店から譲り受けた被控訴人に対して,販売店に対する抗弁を主張して残代金全額の支払を免れるというのは信義則に反するとして,控訴人に対し,5割の限度で割賦代金の支払を命じた事例
インターネット上で様々な商品を販売するウェブサイトを運営する法人が,当該ウェブサイトにおいてされた不当景品類及び不当表示防止法5条2号が規定する不当な表示に該当する二重価格表示を表示した事業者に該当するとされた事例
被相続人の法定相続人である抗告人らが相続放棄の各申述をした事案において,抗告人らの各申述の遅れは,相続放棄手続が既に完了したとの誤解や被相続人の財産についての情報不足に起因しており,抗告人らの年齢や被相続人との従前の関係からして,やむを得ない面があったというべきであるから,本件における民法915条1項所定の熟慮期間は,抗告人らが,相続放棄手続や被相続人の財産に関する具体的説明を受けた時期から進行するとして,熟慮期間を経過しているとして本件各申述を却下した原審を取り消し,各申述をいずれも受理する決定をした事例
社会保険労務士が強制執行を免れるために社会保険労務士法人を設立した行為が法人格を濫用したとして,社会保険労務士法人の責任が認められた事例
占いサイトの鑑定を受けるためのメール送信料として有料ポイントを費消させる行為が社会的相当性を逸脱しているとして,同サイトの運営業者らに不法行為責任が認められた事例
1 統合失調症の影響で弁護人との意思疎通が困難な状態にあり,原審公判廷において趣旨不明の不規則発言をし,被告人質問における発言も断片的であったり,意味不明であったりするものが大半であった被告人の訴訟能力に関し,原審において精神鑑定を行った医師の意見や被告人の公判廷における言動,弁護人の訴訟活動等(判文参照)を総合して検討し,被告人の防御権の行使に実質的な支障が生じていたとは認められず,弁護人からの適切な援助と裁判所の後見的役割により,なお訴訟能力を保持している状況にあったとして,公判手続を停止しなかった原審の訴訟手続に法令違反はないとした事例
2 3日間にわたり,3軒の民家に侵入し,家人合計6名を包丁で突き刺すなどして殺害した上,金品を強取し,4名の死体を隠匿遺棄した住居侵入,強盗殺人,死体遺棄の事案において,各金品強取の目的等を認めた原判決の判断は,精神鑑定により認定できる被告人の精神的な不穏状態(状況を誤って被害的に確信し,その誤った確信によって衝動的で突発的な行動をする状態)を十分に検討していない点で不合理であるが,結論は是認できるとしたものの,完全責任能力を認めた原判決の判断については,動機の形成過程が了解可能なものであるか否かは,精神障害が犯行に及ぼした影響をみる上で重要な考慮要素と考えられるのに,それを捨象するという誤った判断枠組みに基づき,本件各犯行の動機やその形成過程,犯行の合目的性の認定及び評価を誤り,ひいては原審における精神鑑定を正しく理解せずに判断するなど,不合理であるとした上で,被告人は,統合失調症による職場関係者やその者が差し向けた男から危害を加えられるなどという妄想や精神的な不穏状態に非常に大きく影響されていたが,これらに完全に支配されていたとまでは評価できないとして,心神耗弱の状態にあったと認めた事例
危険運転致死傷等被告事件の公判前整理手続で,因果関係がなく危険運転致死傷罪の成立が認められないとの結論を明示かつ断定的に書面で表明した原裁判所の訴訟手続には権限逸脱の違法があり,その見解の変更を前提とする主張や反証の機会を訴訟当事者に一切与えないまま有罪判決を宣告した訴訟手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるとして,原判決を破棄して差し戻した事例
申立人と相手方は,子らについての親権を申立人と相手方の共同親権として外国において離婚が成立しているところ,申立人が相手方に対し,子らの親権者を申立人に指定するとの審判を求めた事案において,我が国の裁判所に国際裁判管轄があり,準拠法は日本法となる旨判断した上で,本件離婚は民事訴訟法118条の要件を満たすところ,外国における父母の共同親権とする定めが我が国においても有効とされる場合,民法819条6項に基づき,父母の一方の単独親権とすることができるとし,申立人の単独親権へ変更することが子らの利益のために必要であるとして,申立てを認容した事例
夫である相手方(原審申立人)が,別居中の妻である抗告人(原審相手方)に対し,抗告人が未成年者を連れて別居を開始したことが,別居開始前に当事者間で交わされた示談書中の親権者指定等に関する条項に違反する違法な子の連れ去りに当たるとして,未成年者の仮の監護者の指定及び仮の引渡しを求めた事案において,示談の経緯及び内容等に照らし,上記条項の存在をもって抗告人の別居開始が違法な子の連れ去りに当たるとはいえないとした上で,当事者の監護者としての適格性に関する調査の状況等に照らし,未成年者の監護を相手方に委ねることが抗告人の監護を継続するよりも相当であると認めることはできないから,本案申立てを認容する蓋然性が高いとはいえず,保全の必要性もないとして,原審判を取り消し,申立てをいずれも却下した事例
金融機関が,口座名義人以外の第三者のする払戻し等の請求に応じたときに,当該払戻し等が,預金契約(金銭消費寄託契約)における注意義務に違反し,債務不履行となる場合について判断した事例