相手方が,抗告人に対して,未成年者の監護者を相手方と指定すること及び未成年者を相手方に引き渡すことを求めた事案において,相手方は未成年者を含む二人の子を連れて転居し,抗告人と別居を開始したものの,未成年者はその後,自らの意思に基づき抗告人宅に戻り,別居前から関係の良好であった抗告人との同居の継続を強く求めている一方で,相手方に対する不信感等から相手方との同居を拒んでいることなどを考慮して,原審判中未成年者に関する部分を取り消し,未成年者の監護者を抗告人と指定し,相手方の子の引渡しに係る申立てを却下した事例
1 住宅等の賃貸借契約(原契約)に基づく賃料等債務に係る保証委託契約において,一定の要件の下で賃借人が賃借物件の明渡しをしたものとみなす権限を受託保証人たる家賃債務保証業者に付与し,賃借物件内の動産類を賃貸人及び家賃債務保証業者が任意に搬出・保管することに賃借人が異議を述べない旨定める条項が,消費者契約法8条1項3号に該当するものとされた事例
2 上記保証委託契約において,受託保証人である家賃債務保証業者に原契約を無催告解除する権限を付与する条項及び同業者による原契約の無催告解除権の行使について,賃借人等に異議がないことを確認する旨定める条項などが,消費者契約法8条1項3号又は10条後段に該当しないものとされた事例
覚せい剤の使用の事案において,職務質問の開始から強制採尿令状の執行までに約8時間30分が経過しているところ,被告人が警察署,病院,コンビニエンスストア,駅等へ次々と場所を移動し,警察官らがこれに同行し,この間に被告人に対して有形力を行使したという一連の手続のうち,2回にわたり被告人がタクシーに乗り込もうとするのを制止した点,駅において被告人が電車に乗ろうとして改札を通過するのを制止した点は,被告人の移動の自由を不当に制限したものであって,違法であるといわざるを得ないが,有形力の行使の程度,時間,全体としての移動の自由の制限の程度,強制採尿令状執行確保に向けてのものであったことを考慮すると,本件の一連の手続における違法は,令状主義の精神を没却するような重大なものではなく,被告人の尿の鑑定書等を証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合には当たらないとされた事例
大崎事件再審請求事件
鑑定等の新証拠が無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるとして再審開始の決定をした原々決定及び結論においてこれを是認した原決定にはいずれも刑訴法435条6号の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
原告が執筆したいわゆる従軍慰安婦問題に関する新聞記事の内容が捏造であるなどとする投稿記事等により,原告の名誉が毀損され,平穏な生活を営む法的利益等が侵害されたなどとして求めた損害賠償等の請求が認められなかった事例
追突事故により車両が損傷し,乗車していた原告が受傷したことを理由とする自動車総合保険契約に基づく損害保険会社に対する直接請求につき,当該事故は,被保険者の故意によって発生したものであるとして,請求が棄却された事例
私立大学の女子大学院生が単身居住するマンションの一室に当該大学の教授が一晩滞在した行為及びその後に当該教授が当該女子大学院生宛にメールを繰り返し送信し,食事に誘った行為が,いずれもセクハラ,アカハラに該当するものとして懲戒事由に当たり,当該教授に対する5年間の准教授への降格処分が有効であると判断された事例
1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)57条3項にいう特定資本関係が合併法人の当該合併に係る事業年度開始の日の5年前の日より前に生じていることにより,同条2項の適用による未処理欠損金額の引継ぎに関して同条3項の適用が除外される適格合併(同法2条12号の8)において,同法132条の2を適用して被合併法人の未処理欠損金額を損金の額に算入することを否認することの可否(積極)
2 親会社がその完全子会社を被合併法人とする適格合併(平成22年法律第6号による改正前の法人税法2条12号の8)を行って当該子会社が有していた未処理欠損金額を同法57条2項の適用により自社の欠損金額とみなして損金の額に算入したことが,同法132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるとされた事例
親権者である養父及び実母から暴行等の虐待を受け,一時保護の措置がとられている子について,親権者らによる親権の行使が不適当であり,そのことにより子の利益を害することは明らかであるとして,親権者らの子に対する親権をいずれも2年間停止した事例
社員2名のみの合同会社において,社員1名の除名を求める会社法859条に基づく訴えにつき,同条3号ないし5号の除名事由が認められなかった事例
貸金の支払を求める訴訟において,前訴でその貸金に係る消費貸借契約の成立を主張していた被告が同契約の成立を否認することは信義則に反するとの原告の主張を採用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例
祖父に当たる養親と縁組をした抗告人が,養親の死亡後に,離縁についての家庭裁判所の許可を求めた事案において,養親と抗告人の縁組が養親の財産を抗告人が相続することを目的としてされたものであっても,養親と抗告人との間に法定血族関係を形成する意思がある限り,直ちに縁組を無効とすることはできず,死後離縁の申立てが法定血族間の道義に反する恣意的で違法なものと認めるに足りる事情もないとして,申立てを許可した事例
タクシー会社の運転手数名が速度超過運転を繰り返し,同社の運転業務の統括運行管理者がその常態化を容認していたとしても,統括運行管理者は自らタクシー乗務員として自動車を運転することはないこと等から危険性帯有者とまでは評価できず,統括運行管理者に対する運転免許停止処分は国家賠償法上違法であるとした原審の判断が維持された事例
地方公共団体の設置する中学校に勤めていた教員が過重業務等により精神疾患を発症し自殺したとして,遺族の国家賠償法に基づく損害賠償請求が一部認容された事例
覚せい剤使用の事案において,被告人の陰部付近に薬物を隠匿しているのではないかと考えて,令状がないのに陰部付近の捜索を行い,続けざまに被告人に対してそのプライバシーや羞恥心への配慮を全く欠いたまま公道上でパンツを脱ぐように要求し,実際に被告人がパンツを脱ぐに至らせた上,これらの手続的な違法を糊塗するために,令状請求の疎明資料に,裁判官をして覚せい剤の隠匿の嫌疑に関する事実を誤解させる記載をして提出したもので(判文参照),令状主義の精神を没却する重大な違法があり,強制採尿手続により採取された被告人の尿の鑑定書は,違法収集証拠として証拠能力を否定すべきであるとして,原判決を破棄し,無罪を言い渡した事例
固定資産評価審査委員会に審査の申出をした者が当該申出に対する同委員会の決定の取消訴訟において同委員会による審査の際に主張しなかった事由を主張することの許否
市営住宅の建物賃貸借契約において,賃貸人が連帯保証人に未払賃料等を請求したのに対して,連帯保証人からの黙示の意思表示による連帯保証契約の解除を認めて解除日以降の未払賃料等の支払義務を否定し,前記解除日以降の支払請求は権利濫用として許されないとした原審判決の判断について,黙示の意思表示により連帯保証契約の解除を認めることはできないとしたが,本件の事実関係の下では,一定時期以降の賃貸人の連帯保証人に対する未払賃料等の請求は権利濫用にあたることを認めた事例