子を面会交流させることを内容とする債務名義に基づき抗告人が間接強制を申し立てた事案において,相手方が抗告人との別居から約3年間面会交流を拒否し続けたことなどから,相手方に面会交流させる義務を継続的かつ確実に履行させるためには,相手方の収入や経済状況等を踏まえ,相手方に面会交流を心理的に強制させるべき相応の額の強制金の支払を命じる必要があるなどとして,強制金の額を不履行1回につき5万円とした原決定を変更し,不履行1回につき20万円とした事例
1 第二次納税義務の納付告知処分を受けた原告が,当該処分の取消しを求める訴えの提起前に,当該処分に基づく地方税を完納した場合の訴えの利益(肯定)
2 第二次納税義務の前提として法人格否認の法理を適用した事例
証人尋問請求の際の検察官による代替開示措置(刑事訴訟法299条の4第2項)について,その要件該当性を検討した上で,裁定請求を棄却した原決定の判断を是認した事例
暴行保護事件において少年を第1種少年院に送致した決定に対する処分不当を理由とする抗告につき,少年の資質上の問題が発達上の特質を背景として長年形成された根深いものであることや,保護環境が十分とはいえないことを指摘し,原決定の判断は相当であるとして,抗告を棄却した事例
ランニング中の者が,散歩中に飼い主が持っていたリードが放れ,単独で進行して前方に現れた犬を避けようと転倒し,負傷した場合に,ランニング中の者にも過失があるとして,過失相殺をした上で,飼い主に対する損害賠償請求及び飼い主を被保険者とする保険契約を締結する保険会社に対する保険金支払請求が,一部認容された事例
海外旅行傷害保険契約において,死亡が偶然の事故によることの主張,立証責任は保険金請求者にあるとした上で,被保険者の肺炎による敗血症性ショックによる死亡が偶然の事故によると認めた事例
覚せい剤,大麻等の単純所持等の事案において,公訴事実に争いがないものの,被告人が違法薬物の密売人であったことを否認し,原審弁護人もこれを争って関係者の供述調書を不同意としている状況の下で,被告人が違法薬物を密売していたことを立証趣旨とする関係者の証人尋問を採用し,その後,この者の供述調書を原審弁護人が不同意の意見を撤回して同意したことにより採用し,さらに,量刑の理由において,被告人が違法薬物の密売をしていたとの事実を認定した上,同種事案と比較して明らかに重い量刑をした原審の手続を全体としてみると,起訴されていない余罪である覚せい剤の営利目的による譲渡等の犯罪事実を認定し,これを実質上処罰する趣旨で被告人に対する刑を量定した疑いを免れず,違法であるとされた事例
労働組合の組合活動に,使用者や管理職者の名誉を毀損する行為があったとしても,正当な組合活動であるとして,不法行為の成立を否定した事例
市議会の2会派が,交付された政務活動費を広報紙に係る費用に支出したことが,同広報紙の内容からして一部違法であり,被告による同支出金額に相当する不当利得返還請求権の不行使が怠る事実に該当するとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同2会派に返還請求することを被告に対して求める請求が,一部認容された事例
癌ではなかったのに癌であるとして甲状腺切除術が実施されたことについて,穿刺吸引細胞診を行った病理医の診断に関する過失,主治医である外科医の病理医に対して診断内容等を確認すべき義務違反及び説明義務違反の過失がいずれも否定された事例
ピリミジン誘導体事件
1 特許権消滅後における特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益
2 刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合における引用発明の認定
1 消火器の破裂事故について,当該消火器が製造された当時の自治大臣が,消防法上の委任に基づいて有する消火器の規格省令の改正に関する職務上の権限を行使しなかったことについては違法性がないとして,国に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が棄却された事例
2 消火器メーカーで構成される一般社団法人及び破裂事故を起こした消火器のメーカーは,本件事故の発生を回避するための作為義務を負っていたとはいえないとして,不作為の不法行為に基づく損害賠償請求が棄却された事例
滞納処分による差押えがされた後に設定された賃借権により担保不動産競売の開始前から建物の使用又は収益をする者の民法395条1項1号に掲げる「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」該当性
株券が発行されていない株式(振替株式を除く。)に対する強制執行の手続において配当表記載の債権者の配当額に相当する金銭が供託され,その供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始の決定を受けた場合における破産法42条2項本文の適用の有無
妻である原審申立人が別居中の夫である原審相手方に対し婚姻費用分担金の支払を求めた事案において,原審が,①無職無収入である原審申立人の潜在的稼働能力を認め,賃金センサスに基づき収入を認定した上,②原審相手方による原審申立人の監護する子らの連れ去りの態様及びその後の一連の行動は,原審申立人が子らを正当に監護することを違法に妨げたことが明らかであるなどとして,原審申立人が子らを監護していなかった期間についても,監護していたことを前提として婚姻費用分担金の額を算定したのに対し,抗告審は,①子が幼少であり稼働できない原審申立人の潜在的稼働能力をもとに収入を認定するのは相当ではないとした上,②原審申立人が子らを現実に監護していなかった期間については,原審相手方に子らの監護に係る費用を請求し得ないものとして婚姻費用分担金の額を算定するのが相当であるとして,原審判を変更し,婚姻費用分担金の額を定めた事例
アスペルガー症候群による障害に関して,障害基礎年金の支給を受けていた者に対し,その障害の状態が障害等級2級に該当する程度のものではなくなったことを理由に,国民年金法36条2項に基づき障害基礎年金の支給を停止した厚生労働大臣の処分が違法であるとされた事例