1 刑事施設において被収容者が発信する信書の発送手続が完了した場合における刑事施設の長による当該信書の発信許可処分の取消しを求める訴えの利益
2 過去に刑事施設の被収容者から信書の発信を受けた者が,今後当該被収容者から当該者宛てに発信される郵便物について,刑事施設の長においてその発信を許可することの差止めを求める訴えが不適法とされた事例
スーパーマーケットの駐車場用地の一部を道路改良事業の事業用地として買収した市が買収の相手方との間で買収残地及び店舗敷地等を買い受ける旨の事実上の合意を成立させながら容易に実現困難な条件を設定するなどした上これらを履行した相手方に対し当該土地の買取りを拒否したことが相手方に対する不法行為となるとされた事例
窃盗保護事件により少年を第1種少年院に送致した決定に対する抗告審において,非行の内容,前歴関係,生活状況や保護者の監護状況などに鑑みると,試験観察に付すなどして在宅処遇と施設内処遇の優劣を検討する余地があるとして,直ちに第1種少年院に送致した原決定を処分の著しい不当を理由に取り消して差し戻した事例
会社の取締役の行為につき,重要な財産の処分ないし譲受け(会社法362条4項1号)該当性,利益相反取引(同法356条1項2号)該当性等が問題になった事例
被告らが原告の株主の地位を否定したことの違法性を認め,原告の株主の地位確認請求,株主総会決議不存在確認請求,計算書類等の交付請求等をいずれも認容した事例
1 前訴確定判決の認定に反する事実を前提として退職手当の支給制限の割合のみを変更した再度の退職手当支給制限処分が,行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力に違反する処分に当たるとして,取り消された事例
2 行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力に反する内容の退職手当支給制限処分がされたことにより,平穏な法律生活を享受する法的利益を違法に侵害されたとして,慰謝料等35万円の損害賠償請求が認められた事例
大麻取締法違反保護事件において少年を第1種少年院に送致した決定に対する抗告に関し,少年が非行事実を争い,大麻の所持場面を現認したとする現行犯逮捕手続書の記載内容の信用性を争っていたにもかかわらず,警察官らの証人尋問を実施することなく非行事実を認定し,少年を少年院送致とした原審の審判手続は,必要な審理を尽くしておらず,決定に影響を及ぼす法令違反があると判断して,原決定を取り消して本件を原裁判所に差し戻した事例
1 特別区の議会の会派無所属議員が区議会幹事長会及び区議会各派代表者会に出席し,発言する権利を有することの確認を求める訴え並びに区議会幹事長会運営規程及び区議会各派代表者会運営規程に違法があることの確認を求める訴えが裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらないとされた事例
2 特別区の議会の会派無所属議員が区議会幹事長会及び区議会各派代表者会に出席し,発言する権利の不存在並びに区議会幹事長会における議長の発言について違法な公権力の行使に当たらないとして国家賠償請求が棄却された事例
協議離婚した夫婦において,婚姻中に性交渉その他の性的接触がなかったことにより婚姻関係が破綻したと主張して不法行為に基づき被告(元夫)に対し慰謝料の支払を求める原告(妻)の請求について,夫婦間における性交渉等の重要性を認めつつも,単に性交渉等がなかったことだけではなく,その余の事情も考慮した上で,被告に不法行為責任を認めた事例
1 「出向手当」及び「交通費」の各性質につき,雇用契約書の記載その他の事情から認定される労働契約の内容,労働契約と就業規則の優劣,労働条件の不利益変更の要件等の観点から判断した事例
2 使用者が労働者に対し就労に伴う交通費を貸し付け,雇用契約等に違反した場合には全額を返還しなければならない旨の定めが,実質的に労働契約の不履行に違約金を定めるものとして労働基準法16条(賠償予定の禁止)に違反し,無効であると判断した事例
3 法人格否認の法理の適用を肯定した事例
無料の資料請求サービスを利用して資料請求を行った外国人に対して,外国籍であるということのみを理由に資料の送付を拒否することは,不当な外国人差別(国籍差別)に当たるとして,不法行為の成立が認められた事例
勤務先の研修に参加して保養所に宿泊していた原告が,宴会で飲食した後,客室の窓の外に避難用に設けられたバルコニーに立ち入り,バルコニーの手すりの開口部から誤って転落した事故につき,バルコニーに避難のために一時的に立ち入るという本来の用法に従って使用するにあたっては特段転落の危険を有するものではなく,また,酔客が緊急時以外にもバルコニーに立ち入ること自体を予測し得たとしても,本件のような事実経過で転落するようなことまで予測することが可能であったとまでは認められないなどとして,保養所を占有する被告に対する損害賠償請求を棄却した事例
東日本大震災の際に生じた原子力発電所の事故により被った損害に関して受領した賠償金を法人税の所得金額の計算上,損金の額に算入することはできないなどとしてされた法人税の更正処分等が適法とされた事例
1 更正の請求を経ていない納税者が,更正処分のうち自己の申告額を超えない部分の取消しを求めて提起した訴えが不適法であるとされた事例
2 相続により取得した大会社の発行する「取引相場のない株式」が「同族株主以外の株主等が取得した株式」に該当せず,仮にこれに該当してもその相続財産評価額を配当還元方式ではなく類似業種比準方式により評価することが正当と是認される特別な事情があるとする課税庁側の主張が,いずれも排斥された事例