法定管轄裁判所に訴えが提起され, 専属的合意管轄裁判所への移送申立てがされた事案において, 訴訟の著しい遅滞を避け, 又は当事者間の衡平を図るため必要があると認められる場合には, 専属的合意管轄裁判所に移送せずに, 法定管轄裁判所において審理することが許されるとされた事例
ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項柱書の「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」の犯罪構成要件としての明確性
自動販売機内部から火災が生じたとしてその製造業者に対して製造物責任法3条に基づく損害賠償を請求するなどした事案において,同自動販売機内部から出火したと認めることはできないとして,請求が棄却された事例
福島第一原子力発電所の事故と近隣病院の入院者の失踪及び死亡との相当因果関係を認め,遺族に対する損害賠償が一部認められた事例
民法859条の3に定める被後見人の居住の用に供する建物に該当しないとして,後見人が被後見人に代わって行った建物の売買行為が無効であるとはいえないとされた事例
大阪女児焼死事件(東住吉事件)再審判決
現住建造物等放火,殺人,詐欺未遂の罪により無期懲役の判決を受けた者に対する再審事件につき,被告人及び共犯者の自白には任意性が認められず,これらを除いた証拠からは,自然発火の可能性が合理的な疑いとして認められるから,被告人が犯行を行ったとは認められないとして,無罪を言い渡した事例
農業共済組合連合会の理事らがその余裕金を用いて国債取引を繰り返し,損害を発生させたとして,農業共済組合連合会が理事らに対してした損害賠償請求が,損害の発生も理事らの善管注意義務違反も認められないとして,棄却された事例
戻し収容申請事件において少年を少年院に戻して収容する旨の決定に対する処分不当を理由とする抗告について,少年の資質上の問題や適切な受入先がないことを考慮して,これを棄却した事例
1 検察官から実質証拠として取調べ請求がされた被告人の自白を内容とする取調べ状況の録音録画記録媒体について, 自白の内容は被告人質問で明らかになっていること, 争点については共犯者等の供述の信用性が判断の決め手であること, 取調べ中の供述態度を見て供述の信用性を判断するのは容易とはいえないことを指摘して, 取調べの必要性を否定して請求を棄却した原審の証拠決定には合理性があるとし, 取調べ状況の録音録画記録媒体を実質証拠として用いることには慎重な検討が必要であることに照らしても, 同証拠決定が証拠の採否における裁判所の合理的な裁量を逸脱したものとは認められないとされた事例
2 控訴審において検察官が取調べ請求をした被告人から弁護人を介し共犯者に授受された手紙について, 第一審においては共犯者が任意提出を拒み, 接見交通権に対する配慮という点でも重要証人である共犯者の証人尋問を有効に実現するという点でも, 差押えをするには支障があったという本件事実関係の下では, 第一審の弁論終結前に取調べ請求をすることができなかったことに刑訴法382条の2第1項の「やむを得ない事由」があると認められた事例
1 遺産分割申立事件において,現金等の分割とともに不動産の換価競売を命ずる場合には,競売による換価代金が当該不動産の評価額と異なるものとなることが避けられないから,当事者間の公平を図るためには,換価代金は,できる限り,各当事者の具体的相続分の割合に応じて分配するのが相当であるとされた事例
2 遺産分割申立事件が係属中に被相続人の相続人が死亡し,不動産の換価競売に基づく換価代金の一部を死亡した当該相続人に分配すべきこととなる場合には,同部分は同人の相続人らの遺産共有状態にあるから,同人の相続人らに相続分に従って保管させるのが相当であるとして,その趣旨を主文において明らかにした事例
警察官らが,身柄を拘束されておらず,相手が警察官であることを認識していない被告人に対し,そのDNA型検査の資料を得るため,紙コップを手渡してお茶を飲むように勧め,そのまま廃棄されるものと考えた被告人から同コップを回収し,唾液を採取した本件行為は,合理的に推認される被告人の黙示の意思に反して個人識別情報をむやみに捜査機関によって認識されないという重要な利益を侵害しており,強制処分に該当し,令状によることなくされた本件行為は違法である上,本件行為及びこれに引き続く一連の手続には,令状主義の精神を没却する重大な違法があり,逮捕後に任意提出された口腔内細胞のDNA型に関する鑑定書を証拠として許容することは将来における違法捜査の抑制の見地から相当でないとして,上記鑑定書は違法収集証拠として証拠能力を否定すべきであるとされた事例
被相続人所有の不動産につき弁護士の助言により被相続人から孫に贈与を原因とする所有権移転登記をした相続人が単純承認したものとみなされたことにつき当該弁護士に説明義務違反があるとされた事例
被告人が,大型貨物自動車を運転し,信号機による交通整理の行われている交差点を左折進行し,横断歩道上を自転車で走行していた被害者に自車を衝突させて転倒させるなどして死亡させたという事案において,被害者の自転車が自車左側方部の死角の範囲内と範囲外の境界線付近にいたことまでしか証拠上認定できないとして,・自車の死角の範囲内の安全確認等の注意義務を怠った過失と・死角の範囲外で横断歩道上の安全確認等の注意義務を怠った過失を択一的に認定した原判決は,過失の内容が特定されておらず,罪となるべき事実の記載として不十分である上,確信に至らなかった犯情の重い過失を認定しており「疑わしきは被告人の利益に」の原則に照らして許されず,理由不備の違法があるとされた事例
国税通則法71条1項2号の更正の理由として国税通則法施行令6条1項5号の理由を除外する旨の同令30条及び24条4項の規定の法適合性
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき,父である抗告人が,母である相手方に対して,子をその常居所地国であるフランス共和国に返還するよう求めた事案において,子はその意見を考慮に入れることが適当な年齢及び成熟度に達しており,返還を拒否する意向を示していることから,法28条1項5号の返還拒否事由があると認められるとして申立てを却下した原決定は相当であるとして抗告を棄却した事例
ジャーナリストである被告が執筆し,週刊誌に掲載された弁護士の弁護活動に関する批判的記事について,事実摘示部分の真実性ないし相当性を認め,論評部分については論評としての域を逸脱したものとはいえないとして,名誉毀損による不法行為の成立を否定した事例
相手方が,抗告人に対し,相手方と未成年者らが面会交流する時期,方法などにつき定めることを求めた事案において,抗告人が当事者参加人と再婚し,当事者参加人と未成年者らが養子縁組をして,抗告人と当事者参加人が未成年者らと共に新しい家庭を構築する途上にあるとしても,相手方との面会交流を認めることは未成年者らの福祉に適うとして,相手方と未成年者との面会交流を認めた事例
抗告人から相手方に対し,未成年者らの監護者を抗告人と定めるとともに,未成年者らの引渡しを求めた事案について,別居前の主たる監護者である抗告人の監護に問題があったかどうか,抗告人が監護者と定められた場合に予定している監護態勢と相手方による現状の監護態勢のいずれが未成年者らの福祉に資するかについて更に審理を尽くすべきであるなどとして,上記問題の有無等を明らかにせずに抗告人の申立てをいずれも却下した原審判を取り消し,差し戻した事例