1 成年に達した子については,基本的には自 助の原則が妥当すると解されることから,既に 25 歳となった無職無収入の子の扶養義務につ いては親族間の扶養義務として検討・考慮され るべき問題であって,夫婦間の扶養義務に基づ く婚姻費用分担の一部として当該子の扶養を考 慮するのは相当ではないとされた事例
2 以前の婚姻費用減額審判においては事情の 変更と認められなかった申立人による婚外子の 認知について,新たに婚姻費用分担義務を定めるにあたり,当該子の福祉の観点からは,申立 人の婚姻費用分担能力について再吟味をする必 要があるというべきであるとして,申立人によ る婚外子の認知も本件における事情変更として 考慮するのが相当であるとされた事例
国から占用許可を得て市が公園の一部として開 放し維持管理していた人工砂浜での埋没事故に ついて,同砂浜を含む海岸の工事,管理に関す る事務を担当していた国土交通省職員に同砂浜 に関する安全措置を講ずべき業務上の注意義務 があったとされた事例
大規模な金融機関である第三債務者に対して, 送達場所である本店に差押命令が送達された時 から 1 時間後において,東京都内の本店及び全 支店のうち最も預金合計残高が多額である店舗 が有する預金債権について,先行の差押えの有 無や預金の種類等による順位を付して,差押債 権額に満つるまでの差押え及び券面額で債権者 に転付する旨の転付命令の申立てが,差押債権 の特定を欠き不適法であるとされた事例
傷害致死の事案につき,懲役 10 年の求刑を超えて懲役 15 年に処した第 1 審判決及びこれを是 認した原判決が量刑不当として破棄された事例
主債務が再生債権として異議なく確定し,再生 計画認可の決定が確定し,再生債権者表に記載 された場合に,その連帯保証債務の消滅時効期間も10 年に延長されると判断した事例
1 産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物 処分業の許可処分及び許可更新処分の取消訴訟 及び無効確認訴訟と産業廃棄物の最終処分場の 周辺住民の原告適格
2 産業廃棄物の最終処分場の周辺住民が産業 廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業の 許可処分の無効確認訴訟並びに上記各処分業の 許可更新処分の取消訴訟の原告適格を有すると された事例
元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合におい て,借主から約定の毎月の返済額を超過する額 の支払がされたときの充当関係
交通事故の加害者からの賠償金の支払が人身傷害保険金より先行した場合において上記賠償金の額が人身傷害基準額を超過しているとして被害者の人身傷害保険金請求が棄却された事例
抵当権設定時には対象建物が建物としての独立 性を有していなかったことが担保不動産競売手 続中に判明した場合に民事執行法 53 条を類推 適用して対象建物に対する競売手続を取り消し た事例
未成年者らの監護者を申立人(母)と指定する ことを求める申立てについて,未成年者らの心 情や,現在,共同監護のような状態であること などを踏まえ,未成年者らの監護者として申立 人と相手方のいずれかを指定することは相当で ないとして,これを却下した事例
逃亡犯罪人引渡法35条1項が同法14条1項に基づく逃亡犯罪人の引渡命令につき行政手続法第3章の規定の適用を除外し上記命令の発令手続において改めて弁明の機会を与えることを要しないものとしていることと憲法31条
インプラント手術におけるサイナスリフトに先 立って行われた下顎枝からの骨採取の際,歯科 医師が,切削器具が下顎管まで到達しないよう 慎重に操作すべき注意義務に違反したと判断さ れた事例
更生管財人で更生会社の出資予定者であった株式会社企業再生支援機構のディレクターらが,更生会社の従業員等により組織する労働組合に対してした発言が,支配介入の不当労働行為に当たるとされた事例
1 弁護士法 23 条の 2 に基づく照会を受けた公 務所又は公私の団体は,当該照会により報告を 求められた事項について,照会をした弁護士会 に対して,法律上,原則として報告する公的な 義務を負うが,照会に対する報告を拒絶することによって保護すべき権利利益が存在し,報告 が得られないことによる不利益と照会に応じて報告することによる不利益とを比較衡量して, 後者の不利益が勝ると認められる場合には,正 当な理由があるものとして,その報告を拒絶で きる
2 税理士が弁護士法 23 条の 2 に基づく照会に 応じて,委嘱者であった納税義務者に係る確定 申告書や総勘定元帳の写しを開示したことが, 納税義務者に対する関係で不法行為に該当する として,当該税理士に慰謝料の支払が命じられ た事例
母親が,重度の知的障害を有し,難病に罹患した娘との無理心中を図り,娘を殺害した事案について,介護の負担や娘の病状は将来を悲観しなければならないほどの状況ではないから,殺害行為に及んだのはうつ病の影響のみによる疑いがあり,心神喪失の状態にあったとして,無罪を言い渡した事例
1 真正な登記名義の回復を原因とする持分権 移転登記手続を求める訴訟において,請求どおりの移転登記をすると実体的権利関係に合致し ない事態を招来する場合に,登記名義人は,真 の持分権者に対し,現在の実体的権利関係に合 致する限度において,実体的権利関係に合致し た公示に協力すべき義務を負うとされた事例
2 前訴と訴訟物を異にする後訴における被告 の抗弁を争うことが前訴で解決された紛争を不 当に蒸し返すものであって信義則上許されない とされた事例