《解 説》
一 法人等の発意に基づき、その法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等の著作名義で公表されるものについては、契約、勤務規則等に別段の定めがない限り、その法人等が著作者となる(著作権法一五条一項)。本件は、Xの描いた図画がこの「職務著作」に当たるかどうかが争わ...
《解 説》
一 本件で問題となった建造物等以外放火(刑法一一〇条一項)は、被告人が、妻と共謀の上、小学生の長女の担任教諭が駐車していた自動車にガソリンを掛けて火を付けたという事案である。
同教師の自動車は、当時、小学校の敷地から間に道路一本を隔てたところにある教職員用の駐車場に停められて...
《解 説》
1 Xは,「マルチウインドウ表示制御装置」に係る特許権(本件特許権,昭和61年2月15日出願,平成10年1月9日登録)を有しており,Yは,パソコンの製造販売等を業としている。本件は,XがYに対し,Yによるパソコン(Y製品)の製造販売が本件特許権を侵害するとして,Y製品の販売等の...
《解 説》
1 本件は,損害保険会社のYとの間で自らを被保険者及び保険金受取人とする傷害保険契約を締結した保険契約者のXが,その受傷による保険事故の発生を理由として,Yに対し,保険金の支払を求めた事案である。Xは,本訴提起前,Yに保険金の支払を求めたが,Yにおいて,本件保険契約は,いわゆる...
《解 説》
1 被疑者を逮捕する場合には,逮捕の際に予め発令された逮捕状を示すのが原則であるが,例外的に逮捕状を示すことなく被疑者を逮捕できる場合があり,これを一般に逮捕状の緊急執行と呼ぶ。すなわち,刑訴法201条2項の準用する同法73条3項は,「勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示す...
《解 説》
1 訴外Aは,平成5年4月27日,Yの開設管理するB病院において出生したが,その後もB病院において検診を受けていた。
Aは,平成5年12月23日,喘鳴及び発熱のため,B病院に入院したが,同月28日,症状が軽快したとして退院した。
しかし,Aは,平成6年1月1日,高熱となり,...
《解 説》
山口組の最高幹部の一人であるTが、その側近組員が拳銃を所持していたことに関して共謀による所持罪の嫌疑を受け、逮捕状が出されていたところ、同幹部組員は身を隠して逃走生活をしていたが、被告人の配下組員Sらが被告人所有の山荘で同幹部をかくまっていたことが判明した。本件は、被告人が配下...
《解 説》
一 本件は、大手鉄鋼メーカーであるY社(新日鐵)が、合理化のための構内輸送業務委託化に伴って行った、Y社に籍を置いたまま業務委託先の協力会社(日鐵運輸)に労働者を出向させるいわゆる在籍出向について、出向対象者であるXらが、出向命令等の有効性を争っている事案である。
鉄鋼業は、...
《解 説》
一 本件は、証券会社が昭和六〇年に顧客との間で損失利益保証契約を締結した場合に、顧客が同契約の履行として金銭の支払を請求することが認められるかどうかが争われた訴訟である。X社は、バブル期に複数の大手準大手証券会社で巨額の金銭を運用し、財テク企業として著名であった。Y証券は、準大...
《解 説》
1 Xは,平成11年9月27日,慢性中耳炎のため,Aクリニックで受診したところ,両耳の鼓膜に穿孔が認められ,中耳炎の原因になると診断され,鼓膜穿孔をふさぐ手術を受けるため,Yが開設するB病院を紹介された。
Xは,その後B病院で受診したところ,両鼓膜に中等度の大きさの中心性穿孔...
《解 説》
1 事案の概要
Xの長男Aは,平成7年5月下旬,Y経営の美容外科医院において,陰茎の体外に出ている部分を長くする「長茎術」と,自らの脂肪を亀頭や陰茎に注入して太くする「亀頭・陰茎増大術」とを同時に受けたが,その直後から亀頭下部にリンパ浮腫が生じて陰茎がパンパンに腫れ,絞扼輪付...
《解 説》
1 事案の概要
本件は,砂利採取業を営むX(一審原告,控訴人)が,長崎県対馬島沖合の海域(漁業権の設定されていない一般海域)で海底から土砂を採取することを計画し,長崎県知事から委任を受けて公有土地水面の使用又は産物採取の許可についての権限を有する行政庁であるY(一審被告,被控...
《解 説》
一 会社の従業員等が職務上行った発明、すなわち、「職務発明」については、特許を受ける権利又は特許権が会社、従業員のいずれに帰属するのか、会社に帰属するとした場合に従業員は会社から代償を受けられるのかが問題となる。職務発明に関する法制度は国ごとにかなり異なるが、我が国の現行特許法...
《解 説》
一 本件は、宗教法人(仏教寺院)の責任役員で、代表役員の委任を受け、宗教法人所有の不動産等を管理していた被告人が、その経営する会社の資金等に充てるため、前後六回にわたり、寺有地七筆をほしいままに売却したという業務上横領の事案である。
そのうち、二回にわたって売却した二筆の土地...
《解 説》
一 本件は、いわゆる「戦後補償裁判」の一つである。もっとも、戦後補償裁判といっても、事案は多種多様であって、簡単に類型化し得るものではない。本判決は、日中戦争当時、中国に侵攻した大日本帝国陸軍の兵士ら(日本兵)から性暴力被害を受けたという中国人女性ないしその相続人が国家賠償のほ...