《解 説》
本件は、埼玉大学学長という従来拐取罪の対象になった例に乏しい立場の者を誘拐した事件として世間の耳目を集めたものである。
事案の概要は、被告人らが埼玉大学学長を誘拐してその安否を憂慮する大学の幹部からみのしろ金を取得しようと企て、通勤途中の同学長を詐言をもって自動車内に閉じ込め...
《解 説》
一 Xは、平成二年九月七日から同月一一日まで、訴外A会社の主催で京都京阪ホテル「桜の間」で開催された毛皮・宝石展(本件展示会)に宝石類を展示していたが、同月九日、右宝石類が窃盗の被害にあい、約二〇〇〇万円の損害を被った。
そこで、Xは、平成二年四月、Yとの間で、宝石・貴金属に...
《解 説》
本件は、建物の所有者が、鉱業権者の掘採の影響で建物に損傷を被ったとして、石炭鉱害賠償等臨時措置法一一条の二に基づき鉱害賠償請求権の存在の確認の申請をしたところ、その旨の裁定がされたので、右鉱業権者が、右鉱害賠償債務の不存在確認を訴求した事件である。
原審(福岡地判平3・5・2...
《解 説》
一 本件は、Xら四名(うち二名は弁護士)がXのうち一名を原告とし、弁護士である二名を原告訴訟代理人とする別件の民事訴訟での訴訟活動について、被告の訴訟代理人であった弁護士Yが、有印私文書変造・同行使及び詐欺未遂等の罪名でXらを告発し、これに対して弁護士であるXがYを懲戒請求した...
《解 説》
Xは昭和四九年六月二八日以来、Y宗教法人の代表役員として任期(五年)を更新していたが、平成四年一月一七日、責任役員会において解任され、同年三月八日、新たにAがYの代表役員に選出された。Xは、Xの解任決議をした責任役員会は、召集権限を有しない者が集まった私的会合にすぎないこと、代...
《解 説》
本件は、夜間に近所の義姉夫婦宅に侵入してセカンドバッグの中から現金を窃取したという事件について無罪が言い渡された事案である。
本件では、捜査段階で被告人が犯行を自白し、その自白に基づき被告人が隠匿していた被害金額と同額の現金が発見されたうえ、被害者の義姉が犯行現場で被告人を目...
《解 説》
一 本件の事案は次のとおりである。
YがZに対し、いずれも、満期を平成三年一一月二二日と記載し、振出日、受取人を白地で本件各手形を振り出したところ、Zが満期を平成四年六月二二日と変造し、また振出日が平成三年一一月二五日と補充され、受取人も補充された。本件各手形の裏書譲渡を受け...
《解 説》
一 Xは、アメリカのタバコ製造販売業者であるほか、自動車レースチーム等のスポンサーとして、それらに関連する各種商品も取り扱っており、紙巻煙草等を指定商品とする「MARLBORO」の文字商標及び二五類紙類等、二六類印刷物等を指定商品とする「MARLBORO」の文字と図形との結合商...
《解 説》
XはA国立大学教授であるが、結婚前の旧姓名を用いて研究活動をしており、日頃、大学当局に対して各種文書、ポスター、情報等に旧姓名を使用することを申し入れていたが、大学側では、Xの氏名について取扱文書(本判決末尾に添付)を策定し、これにより人事記録等においては戸籍上の氏名、学内施設...
《解 説》
一 日本三景の一つである松島の公園内にある土産物販売店兼食堂を経営するX1有限会社とその経営者らX2らは、同業者Y1が既存の建物を取り壊してY2に建物新築を請け負わせて工事を進行させていることについて、眺望妨害行為であるとして、工事禁止の仮処分命令を申請してこれが発令された。こ...
《解 説》
事案を簡単にいえば次のとおりである。XはYに、自己の営む会社の不動産賃貸部門(貸ビル)の運営を任せていた。Yは、テナントの幾つかを退去させたあと、一部床面積を加えて、自己の営む店舗リース業を目的とする会社の名でこれをXから賃借し、内装工事をしたあと第三者に転貸した。XY間の契約...
《解 説》
Y女はX男に対し離婚を求める訴えを提起したところ、これを認容する判決が下された。XからYに対する財産分与として、第一審では三億円、控訴審では減額して二億円を支払うよう命じられ、Xからの上告が棄却されて右判決は確定した。右控訴審判決は、XにはYの精神的苦痛を慰謝すべき義務があるこ...
《解 説》
本件は、いわゆる浅草橋焼討事件に参加して懲役五年の刑に処せられ、刑期満了により釈放された男性(訴え提起当時は受刑中であった。)と、その未決勾留中に婚姻届けを出したその妻とが、本人受刑中妻との接見や妻への信書の発受信を違法に不許可とされ、精神的苦痛を受けたとして提起した損害賠償請...
《解 説》
X(代表者A)及びB社(代表者A)は、昭和五九年一一月、Y税理士との間で、税務顧問契約を締結し、税務代理、記帳代行等を委託した。Aは、同六〇年五月ころ、Yに対し、Xを解散し、株主たる地位に基づき、有利な残余財産の分配を受けたいとの税務相談をした。その趣旨は、XのB社に対する貸金...
《解 説》
一 Xは、昭和五九年一〇月当時、大宮市立宮原中学校二年に在学し、男子バレー部に所属していたが、同月一九日、大宮市民体育館において、バレーボール新人戦の終了後、同部の顧問教諭Y1から、試合の反省を迫って平手で顔面や頬を数回殴打され、よろけてコンクリートの壁に頭部を打ちつけたため、...
《解 説》
一 本件は、県立高校二年のXら四名及び訴外五名の生徒らが、一年の生徒Aに対し、一か月にわたり、集団で、「絞め落とし」(柔道の絞め技をかけて気絶させること)、殴打、蹴り、「ちょうちょ」(両手足を持って上下に振り、怖がらせること)、「デコピン」(額を指で強く弾くこと)等のいじめを行...
《解 説》
一 問題の所在
本件は、家庭裁判所が先に少年法一七条一項二号の観護の措置(少年を少年鑑別所に送致する観護措置)が採られていた事件の差戻しを受けた場合に、改めて同号の観護の措置を採ることができるかどうかが問題となったものである。
少年法一七条三項、六項によると、少年鑑別所に送...
《解 説》
一 原告らの主張した本件死亡事故の経緯は、次のとおりである。
貧血傾向にあった亡Aは、かかりつけのY被告病院で造血剤の点滴を受けたが、点滴終了後、嘔吐し、直後、その症状が急変し、苦しみもがきだした。Yは、Aに喘息の古い既往症があること等から、気管支喘息状態になったと判断し、も...