《解 説》
一 日本で就労する意図のもとに短期在留資格で来日したXは、製本会社Y1に雇用され、約一年四ヶ月後右手の人差指の先を切断するという労災事故に遭った。そこで、Y1及びその代表者Y2を相手取って、Y1の安全配慮義務違反とY2の不法行為を理由に損害賠償請求をした事案である。
二 不法...
《解 説》
XはYとの間で自家用自動車保険契約を締結した後、車両の入替をしたが、その通知をYに対してしないうちにスリップ事故を起こし、物損の賠償として五三万円余を支払い、Yに保険金を請求した。
自家用自動車保険普通保険約款六章一般条項六条には、被保険自動車が廃車、譲渡又は返還された後、そ...
《解 説》
一 訴外Aは、平成元年一月当時、Y伊勢市の消防署に勤務していたものであるが、同月二五日、Yの消防本部が実施した耐寒訓練である朝熊山登山に参加し、登山道を歩行していた際突然直立不動のまま倒れ失心したため、救急車で病院に運ばれたが、同月、労作性狭心症による不整脈で死亡した。
そこ...
《解 説》
Xは、賃貸目的で本件建物を所有しており、Yは、洋菓子の製造販売を業として本件建物をXから賃借してきたところ、数度の更新後、Xは、建物の老朽化による建て替えを正当事由とする更新拒絶をYに通告し、期間満了後にYに本件建物の明渡しを求めた。
Yは、明渡しを拒んで本件訴訟となった。
...
《解 説》
一 本件は、X(宮城県仙台市在住)がY(広島市に本社のある会社)との間で学習塾加盟契約を締結し、契約金三七〇万円を支払ったほか学習塾の開設準備の費用として九八万円余を支出したが、右契約締結自体が詐欺であり不法行為に当たるとして、XがYに対し損害賠償を求めて仙台地方裁判所に訴訟を...
《解 説》
Xは、道路運送車両法(以下「法」という。)九四条の二の指定自動車整備事業の指定を受けて民間車検業を営む会社であるが、その選任した自動車検査員であり、形式的な従業員でもあるAが、違法な改造車につき、整備も検査も全くしないで保安基準に適合していることを証明したことにより、結果的に、...
《解 説》
本件は、昭和五九年四月二八日、原告が被告の開業する診療所で分娩中に、子宮破裂が生じ、児が低酸素状態に陥って重篤な脳性麻痺となり、結局生後一年八か月で死亡したという事案である。この分娩では、陣痛が起こる前から、子宮収縮剤(陣痛促進剤)オキシトシンが投与された。
主要な争点は、子...
《解 説》
一 本件は、東証上場株式会社の取締役である被告人が、自社の売上に多額の架空取引による売上が計上されていたことなどを知って、自己が保有していた自社株式二万二〇〇〇株を右事実の公表前に売却し、いわゆるインサイダー取引をしたという事案であるが、昭和六三年の改正により新設されたインサイ...
《解 説》
本判決の引用する最決昭36・3・14刑集一五巻三号五一六頁は、公判調書の記載が明白な誤記である場合には、公判調書は正しい内容にしたがって証明力を有するとし、学説もこれを支持している(団藤・綱要四九〇頁等)。
本件は、この明白な誤記の事例であって、公判調書の裁判官及び裁判所書記...
《解 説》
X1は昭和五六年に二筆の土地を、X2は同五九年に一筆の土地をそれぞれA社から取得したが、仮登記のままであった。Y市は同三九年にこれらの土地をA社から道路用地として贈与を受け、市道敷地と認定し、供用を開始していた。Xらは,主位的には所有権に基づき市道敷地の引渡しを求め、予備的には...
《解 説》
一 原告らは、主位的に、被告らの製造販売する患者用移動介助装置が、原告らの共有する本件実用新案権を侵害するものであるとして、右被告装置の製造販売の差止め、損害賠償及び謝罪広告の掲載を求め、予備的に、原告製品の形態が不正競争防止法一条一項一号の周知商品表示であることを前提に、被告...
《解 説》
Xらは、社会科の教育にY(文部大臣)検定に係る本件教科書を使用している中学校に通学する中学生とその親である。本件教科書には南京虐殺事件を実在の事実とする記述があるところ、Xらは、同事件は事実無根であって、かかる虚偽の事実を記載した右教科書は、義務教育諸学校教科用図書検定基準に規...
《解 説》
一 Xは、昭和六〇年一一月当時、Y2地方職員共済組合の職員であったが、同月二七日の昼休み時間に実施された宮崎県本庁各課及び宮崎総合庁舎内の各出先機関対抗バレーボール大会に出場し、職員厚生課チームの補欠選手として、コートサイドで待機、観戦していたところ、コート外に向って跳ね返った...
《解 説》
本訴は、商品取引員Y1の外務員Y2が顧客Xに対し、「元本を保証する。取引は一任してくれ」と述べて商品先物取引の勧誘をしたことが違法もしくは公序良俗違反、錯誤、詐欺に該当するとして、主位的に不法行為に基づく損害賠償を、予備的に不当利得に基づく預託金の返還請求をしたという事案で、反...
《解 説》
一 判示事項一について
Xは、換地予定地としての仮換地指定処分は換地計画決定基準を考慮して定められるものであるから、換地処分と仮換地指定処分とは内容において一致することが要求され、公益等の理由がある場合に一致しない処分が許されるが、本件ではその理由はない。そして、面積を四四・...
《解 説》
第一の論点は、被告人Aが商法四八六条一項にいう取締役に当たるか否かである。同族会社において、代表取締役兼オーナーであるBの母親Cを除く全株主が集合した際、Bから、同社の営業担当の幹部従業員である被告人Aが取締役に就任したとの紹介があり、出席者全員がこれに異議を述べず、その後、被...
《解 説》
本判決は、熊本地判平3・8・8本誌七八〇号一七二頁の控訴審判決である。事案の概要は原判決のコメント記載のとおりで、Xらがした転入届け出についてYが不受理処分をしたことが違法であるとして、主位的にYにはXらが届け出た内容のとおり住民票に記載すべき義務の確認、予備的に本件不受理処分...
《解 説》
一1 本件は、被相続人(父)甲の遺産をめぐる兄妹間の争いである。相続人は母(被相続人の妻)・長男(Y)と長女(X1)・次女(X2)であり、甲は死亡前約四〇日前に極めて簡単な内容を記載した遺書(らしきもの)を作成した。その「遺書」には、「証」と書いて、「私甲所有の土地家屋他現金書...