《解 説》
一 本件は、塗装業務に従事していた控訴人(一審原告)が、会社内で会議中に脳出血で倒れ、右片麻痺、言語障害等の後遺症を残すに至ったが、被控訴人(一審被告)労働基準監督署長から、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付をしない旨の決定(本件決定)を受けたので、その取...
《解 説》
Y女は、昭和三八年五月、Xら夫婦の子A男と結婚し、Xが所有する本件建物でXらと同居したが、Aはその後他の女性と親しくなり、同五九年九月に家を出て行き、Yと離婚するに至った。その際、AからYに別の不動産が財産分与され、また、Yは引き続きX方に居住するが、Xらと折合いを欠くに至った...
《解 説》
建物賃貸借契約が建物の一時使用を目的とするものである場合は、借家法の適用が排除され(借家法八条)、解約申入れには正当事由が不要であり、法定更新の適用もない。一時使用の賃貸借であるか否かの判断は、その期間の長短だけでなく、「賃貸借の目的、動機、その他諸般の事情から該賃貸借契約を短...
《解 説》
一 本件事案の概要等は、次のとおりである。
1 不動産競売事件において、競売不動産の所有者の代理人(弁護士)が、裁判所書記官に対し、同事件の記録の閲覧・謄写を申請したところ、これを拒絶された。そこで、この拒絶処分に対して異議の申立をしたが、これが却下されたので、更に、抗告し...
《解 説》
一 事案の概要
原告は、略称をJR総連といい、東日本旅行鉄道労働組合などの単位組合の連合体であるが、右総連の総務部長が平成元年一二月二日帰宅途中、自宅付近で何者かによって殺害されたため、同人を追悼する合同葬を行うことを計画し、同月一六日、上尾市福祉会館に対し(以下、「本件会館...
《解 説》
一 X(原告)は、Z(被告補助参加人)を債権者、Y(被告)を債務者兼所有者とする不動産競売申立事件(本件競売)において、一括売却された五筆の土地である本件土地を買い受け、代金を納付した。本件競売の期間入札の公告書、物件明細書、現況調査報告書、評価書には、いずれも登記簿の記載に基...
《解 説》
一 本件は、C信託銀行本店(以下、C信託という。)不動産営業部次長の地位にあり、同本店における不動産取引の業務に従事する傍ら被告人株式会社A(以下「被告会社」という。)の実際上の経営者としてその業務全般を統括していた被告人甲が、(ⅰ)その実弟で被告会社の経理事務担当取締役であっ...
《解 説》
一、Xら六名(弁護士)は平成二年二月に施行された衆議院議員選挙において広島県第一区の選挙人であったが、その当時議員一人当たりの選挙人数の最も少ない宮崎第二区の一〇万五九三九人と最も多い神奈川県第四区の三三万六八五九人との間で投票価値の較差が約三・一八対一となっていたことから、Y...
《解 説》
一 相続税法二二条は、相続税の課税価格となる相続財産の価額を、特別の定めのあるものを除く外、相続開始時における当該財産の時価によるべきものと規定し、同法二三条以下において、地上権(借地権を除く)、永小作権などの評価方法について規定しているが、借地権を含むその他の財産については特...
《解 説》
本件は、ゴルフ会員権に関し、支払催告のない除名の効力及び会員権の消滅時効が争点となった事案である。
ゴルフ会員権には、社団法人社員会員権、株主会員権、預託金会員権の三種類のものがあるが、わが国では預託金会員権が圧倒的に多い(大西武士・判例金融取引法(上)五四三頁以下、同(下)...
《解 説》
一 本件は、簡易宿泊所に止宿する被告人が、同宿者とドアの開け閉めを巡って口論となり、所携の改造シャープペンで同人の首筋を突き刺して傷害を負わせたという単純なものであるが、被告人の責任能力について、弁護人から、被告人は本件犯行当時精神分裂病に罹患しており心神喪失状態にあったとの主...
《解 説》
XらはA市の住民であるが、A市の市長Yが昭和五八年一月から一〇月までの間、市職員全員に対し一律に昇給期間を短縮して昇給発令したことを給与条例主義(地方自治法二〇四条の二、地方公務員法二四条六項・二五条)に違反すると主張して損害賠償を求める住民訴訟を提起した。Yは、右昇給期間短縮...
《解 説》
地方税法は、固定資産につき、これを学校法人がその設置する学校において直接教育の用に供している場合には、固定資産税を課さないこととしている(都市計画税も同様)。
しかし、同法は、固定資産を有料で借り受けた者が、これを右の用途に供する場合には、その固定資産の所有者に固定資産税を課...
《解 説》
一 本件は、離婚した前妻Aを登山ナイフや牛刀で刺して殺害したYに対し、Aの父と母と兄が不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。主要な争点は、(1)Aの兄に固有の慰謝料請求権があるか、(2)Aの父が捜査協力や刑事裁判傍聴のために上京するのに要した旅費、宿泊費等の費用は、本件...
《解 説》
一 本件は、昭和六一年七月二〇日和歌山県下で行われたいわゆるトライアスロンにおける水泳競技において競技者が溺れ、後日死亡したという事故について、主催者の安全配慮義務が問われたものである。
右競技大会は、Yほかが主催する水泳二・〇キロメートル、自転車走三〇・一キロメートル及び長...
《解 説》
一 Xは、昭和五四年から、Yに建物を賃貸しているものであるが、Yに対して、昭和五六年一月分から六月分までの賃料の支払を求めて、本訴を提起した。これに対し、Yは、抗弁として、右賃料をXの受領拒否を理由として供託したと主張した。
Xは、Yの供託は、現実の提供をせずになされたもので...
《解 説》
一 本件事案の概要は次のとおりである。X弁護士は昭和六二年二月五日午後三時ころ、愛知県中川警察署に赴き、競馬法違反で勾留中の被疑者との接見を申し出たところ、一旦は被疑者との接見が開始されたが、同被疑者については担当のA検察官によりいわゆる一般的指定がなされていたため、一、二分後...
《解 説》
一、失火責任法は、失火による不法行為責任を重過失の場合に限定する。しかし、失火の結果として債務不履行となる場合には、この債務不履行から生じた損害の賠償責任が生ずることになる。かくて、賃借人の失火による賃借建物の焼失は賃借物の返還債務の不履行として損害賠償債務を生ずる(最二小判昭...