《解 説》
一、本件は、賃貸建物の譲渡担保権実行による所有権移転に伴い、賃借人が差し入れていた保証金の返還義務者が争われた事例である。
原告Xは、昭和五九年、被告Y1からその所有にかかる建物の一部を賃借し、保証金四九七〇万円を預託していたが、その後昭和六一年一月にY1は右建物をY2に譲渡...
《解 説》
Xらは、恐喝未遂で逮捕・勾留(接見禁止決定付)されている被疑者Oの弁護人であるが、主任検察官がXらに対し、接見についての協議及び指定書の受取りのため来庁を求めたり、F県警K警察署の留置副主任官が検察官の指示があるまでOとの接見を許さなかったことが違法であると主張し、Y1(国)及...
《解 説》
本件は、いわゆるロッキード事件の被告人として刑事訴追されたAがY税務署長に対して昭和四六年ないし同五〇年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課処分の取消しを求めていたところ、同人が同五九年一月に死亡したため、その相続人Xら七名が原告として承継したものである。
その争点は多岐に...
高速自動車国道料金値上げ認可処分取消請求事件
道路整備特別措置法二条の四に基づき建設大臣及び運輸大臣が行った日本道路公団に対する高速自動車国道の料金及び料金の徴収期間の変更認可は、行政機関相互間の内部的な行為と同視すべきものであり、抗告訴訟の対象となる行政庁の行為には該当しない
《解 説》
一、本件は、電車内でのいわゆる痴漢行為が大阪府条例に違反するとして起訴された被告人が無実を主張して争っている事案である。
二、まず、判示事項一であるが、本件においては、原審及び控訴審の審理を通じ、被告人を現行犯逮捕した被害者(A)の証言の信用性が最大の争点になったところ、原審...
《解 説》
本件は、日本語をほとんど理解できない外国人の被告人に対し翻訳文を付さないで起訴状謄本を送達したことが、刑訴法二七一条一項及び憲法三一条に違反するかどうかが争いになった事案である。この点につき、弁護人は、被告人に対する起訴状送達の趣旨は、被告人に起訴の内容を了知させ防禦の準備を尽...
《解 説》
Xはアメリカ合衆国にあるA会社の香港法人であり、A会社は広く国際市場において電気器具、玩具等の販売活動を展開しており、Xはその極東地域における営業活動を担当する会社である。一方、Yは玩具の製造販売を主な営業目的とする日本の会社であり、A会社の指示を受けたXの注文により、新型のロ...
《解 説》
一、事案の概要は以下の通りである。
甲女(当時四二歳)は、気管支喘息の検査等のために被告Yが運営する病院の呼吸器内科に入院していたが、昭和五八年六月に同病院の耳鼻科で鼻茸の切除手術を受けた。手術自体は一〇分余で終了したが、同日夕刻に鼻部疼痛に対して投与された鎮痛解熱剤ボルタレ...
リクルート事件NTTルート判決
一、NTTの代表取締役社長が、回線リセール事業等リクルート社の新規事業に支援と協力を与えたことに対する謝礼等の趣旨のもとに、リクルート関連会社の未公開株式を譲り受けたことが、日本電信電話株式会社法に定める収賄罪に該当するとされた事例
二、賄賂を追徴する場合の額の算定について、賄賂の価格は未公開株式の授受当時の価格によるべきであるとし、その価格は現実に形成された市場価格に基づき推計すべきであるとされた事例
《解 説》
一、本件は銀行預金の権利者が争われた事例である。
亡AはY銀行に当座、総合、普通の三口、合計約二億円の預金を有していたが、そのうち当座預金の大部分はAの死亡後に他から入金されたものであり、また普通預金は、これもAの死亡後に、Aの子であるBが「故A相続人B」の名義で開設したもの...
覚せい剤を服用した者がけん銃を発射し、三名に重軽傷を負わせ、警察官一名を殺害した事案につき、心神耗弱が認められた事例
《解 説》
一、本件は、賭博ゲーム機一〇台を備えたゲーム店を経営するAが、経営者に準ずる地位にあるBや従業員のCとともに約一か月半にわたり、Dほか不特定多数の客を相手として、いわゆるゲーム機賭博を行ったという事案である。争いになったのは、従業員Cの罪責であり、弁護人は、単純賭博罪の幇助犯が...
埼玉のパキスタン人放火事件
一、外国人に対する日本人目撃者の識別供述の信用性が否定された事例
二、外国人被疑者に対する取調べの際の黙秘
権・弁護人選任権等の告知が十分でなく、取調べの方法も不当であったなどとして、右取調べによって得られた自白の任意性が否定された事例
三、違法な別件逮捕中の自白又は別件逮捕中の違法な余罪取調べによる自白であるとして、自白の証拠能力が否定された事例
四、現住建造物等放火につき、情況証拠の証拠価値に重大な疑問があり、自白の信用性もないとして、無罪が言い渡された事例
《解 説》
本件は、被告人が、自閉症に罹患している自己の長男(当時六歳)を、「先天性梅毒による進行性麻痺」に罹患していて関係者によって安楽死させられるとの妄想から、荷作り用ビニール紐で窒息死させて殺害したという事案である。
本件で、弁護人は、被告人の本件犯行当時の責任能力を争い、当時罹患...
《解 説》
一、本件は、電話加入権を目的とする質権の実行としての差押え及び換価命令を受けた者が、質権設定契約の不存在を理由として、民事執行法(以下「法」という。)一九三条二項、一四五条五項により右命令の取消しを求めた事案である。
二、これに対し、本決定は、担保権実行としての差押え命令に対...
《解 説》
一、本件は、K市がアメリカ合衆国州立大学の日本校を誘致したことに伴い、今後補助金として支出が予想される公金支出(Xらは少なくとも三二億円と主張し、Yは最大二五億円と主張している)等の差止及び同校の暫定校舎建築のためになされた市有地の賃貸借契約を解除しないことが違法であることの確...