1 水俣病の病像と認定
(その1)メチル水銀中毒の好発局所である神経系に障害が認められない以上、疫学条件が高度であってもメチル水銀中毒によるものとはいえない
2 水俣病の病像と認定
(その2)疫学条件を具備し、ハンターラッセル病状の一つがあるからといって水俣病であるとは断じがたい。しかし、メチル水銀中毒症状としての知覚障害とハンターラッセル症状が組み合わさっている場合は水俣病と事実上推定するのが相当であり、四肢の知覚障害のうち遠位部優位の手袋、足袋様の知覚障害の場合は、疫学条件がきわめて高度であれば、右症状が他の疾患に基づくことの反証がない限り、水俣病と認定できる。右反証の程度は、当該患者のすべての症状がもっぱら他の疾患によるものと疑わしめるに足るものであれば足りる。
3 環境庁が昭和52年に示した「後天性水俣尿の判断基準」は、昭和48年の水俣病被害者の会とチッソとの間の協定書所定の補償金を受給するに適する水俣病患者を選択するための判断基準となっており、広範囲の水俣病患者を網羅的に認定するための要件としてはいささか厳格に失する
1 本願寺(いわゆる東本願寺)の住職の後継者である「法嗣」の地位確認請求の訴えは、確認の訴えの対象となるべき適格を欠き不適法である
2 宗教法人法78条1項に規定する不利益処分は、包括団体に、宗教法人との間の包括関係の廃止を防止する目的を有するか、またはその廃止を企てたことを理由とすることを要件とし、包括団体がかかる意図を有していないときは右不利益処分の禁止に当たらない
眼部の炎症に対するステロイド剤点眼薬投与により両眼緑内障等に罹患したとの事実が認められないとして、開業眼科医に対する賠償請求が棄却された事例
甲が乙の氏名等を冒用したため、起訴状および判決書に被告人として乙の氏名等が表示されたが、現実に審理を受けたのは甲である場合における被告人の特定
1 40年以上前に他人の名前で婚姻届をなしたと主張する者が戸籍上の表示を真実のものと訂正することの許可を求めてきた申立てを却下した事例
2 戸籍法113条の規定は戸籍上の事項が軽微で親族相続法上の身分関係に重要な影響を及ぼさない場合に戸籍訂正として許すための規定で当事者の同一性に異動を来すような影響するところの大きい場合を予想しているものではない
自動車の所有者Aが友人Bのグループがドライブするためこれを貸与したところ、Bの仲間Cが交替運転中にこれを暴走させて同乗のDを死亡させた事故につき、Aの運行供用者責任が認められた事例
「保険料の支払を怠ったときは、その払込期日後に生じた事故については保険金を支払わない」旨の免責条項によって保険会社が免責されるのは、保険料の支払いの遅延につき保険契約者に責がある場合に限られるとされた事例
所有権に基づく土地明渡等請求の敗訴判決後同土地の所有権確認を求める訴えを提起することは信義則に反し許されないとされた事例
裁判官の争訟の裁判(手形訴訟)の違法を理由とする手形訴訟の訴訟代理人であった弁護士からの国家賠償請求が認められなかった事例
1 2級河川である平作川の溢水につき、河川管理者たる国および管理費用負担者たる神奈川県の国賠法2条ないし3条に基づく損害賠償責任を否定した事例
2 下水道の溢水につき、下水道の設置・管理に瑕疵を認めたうえ、本件降雨は下水道の溢水回避義務の範囲を超えていたとして、下水道の管理者たる横須賀市の国賠法2条に基づく損害賠償責任を否定した事例
交通事故に関して和解が成立し、その和解金の一部が支払われた場合において、その和解が損害の一部に関するものであり、しかもその損害項目が明らかでないときは、全損害を算定したうえ、受領した和解金を控除するのが相当であるとした事例