1 被告国には、予防接種により発生する障害等の結果につき、被接種者に対し、いわゆる安全確保義務があると認めることはできない。また、本件予防接種当時、厚生大臣には、接種による障害等の結果発生を認容する「未必の故意」または接種にあたっての具体的過失の存在を認めることはできない。従って、被告国には、民法上の債務不履行責任または厚生大臣の公権力の行使についての国家賠償法上の責任のいずれの責任もこれを認めることはできない。
2 被害児梶山桂子(15の1)については、予防接種の実施主体である東京都中野区長及び接種担当医師が、被害児河又典子(34の1)については、接種担当医師が、いずれも予防接種実施規則に定める接種方法に違反して、複数ワクチンの同時接種の立案、その実施と過量接種をした過失が認められる。右実施主体は、被告国の機関委任事務の遂行として、また、各接種担当医師は、いずれも特別公務員の立場にあったものであるから、被告国は、国家賠償法1条による責任がある。
3 被告国には、被害児梶山桂子(15の1)、同河又典子(34の1)を除く、その余の被害児らとその両親等に対し、憲法29条3項の類推適用により、損失補償すべき責任がある。
動産売買の先取特権による物上代位権行使のための差押えは、転売代金債権に対する差押えの方法によるべきであって、仮差押えの方法によることは許されないとされた事例
腰椎穿刺等の不実施ないしCTスキャン再撮影の懈怠からクモ膜下出血の確認ができず転医等の措置も講じないまま経過を観察した医師につき債務不履行等の責任を肯定したが、患者の死亡の結果に対する起因力を10分の6としてその責任範囲を限定した事例
建物賃貸保証金のうち原則として返還を要しない部分が所得税法上は賃貸人がこれを受領した時の属する年分の収入金額に算入されるとした事例
取締役会は設置されていないが、代表取締役が定められている有限会社の名目的取締役の代表取締役に対する監視義務に関し、監視義務の懈怠がないとして、有限会社法30条の3に基づく取締役の第三者に対する責任が否定された事例
有効期限3年の高校臨時免許状を有している者を雇用した被告学校法人が、臨時免許状の再出願について協力をしないで、期限到来により資格の喪失を理由とする解雇が解雇権の濫用にあたるとされた事例
人格権、環境権、物権的請求権等に基づき、球場ナイター設備(照明塔)設置工事の禁止を求める仮処分の申請中、照明塔工事が完成したことを理由に、将来の執行保全の目的を欠き、仮処分申請の利益が消滅したとして、右仮処分申請を却下した事例
約10か月近く父(夫)のもとで養育されていた1歳9か月の幼児につき、母(妻)からの人身保護請求(釈放・引渡請求)が認容された事例
日本を指定国の1つとして英語でされた国際特許出願について、所定期間内に願書の翻訳文の提出がなく、かつ、出願書類不受理処分に対する所定期間内の異議申立もなかったため、出願は取り下げたものとみなされるからとして、出願書類翻訳文の不受理処分の取消しを求める訴えも、184条の5の1項所定の書面および補正書翻訳文の不受理処分の取消しを求める訴えも、いずれも訴えの利益を欠き、不適法であるとして訴えを却下された事例
村議会議員の選挙においてAという姓のみを記載された投票99票がA候補者の姓と一致するとして同候補者への投票とされたことに対し、そのAという姓は別の候補者Bが選挙時より42年前に11年間用いていた姓と同じであり、今でもB候補者の通称として用いられているとし99票をABの両候補者の得票として按分せよという請求に対しAという姓が広くB候補者の通称として用いられていたとは認められないとして排斥された事例
国税過誤納金の還付金等の支払いにつき国税還付金支払通知書の送達を担当した係官に正当な権利者またはその代理人であることの確認を怠った過失があったとして、国の債権の準占有者に対する弁済の抗弁を排斥した事例
不動産に関する受任事件が訴訟上の和解により終了したのち、弁護士が同事件の事後処理として当該不動産所有者の代理人に金銭を貸与した行為につき民法110条の「正当理由」がなく表見代理は成立しないとされた事例
同一企業内に併存する労働組合の1つが労働協約の締結を拒否したためその組合員のみが年末一時金の支給を受けられなかった場合に不当労働行為が成立するとされた事例