万人共有の財産である文字・記号の表出に不可欠な書体は、その限度で排他的権利の対象とすることは許されず、本来的に実用的機能を期待された創作の結果であるタイプフェイスは、一品製作的な著作権法上の美術の範囲には属さないとして、その著作物性を否定した原審の判断を維持した事例
電力会社が送電を中止して県道における交差点の信号機が作動していなかった間に、右交差点で発生した交通事故につき、仮に電力会社と県に信号機の作動に代る措置をとる義務があったとしても、右義務懈怠が事故発生に占める責任の割合は極めて小さいとした事例
侵害が予想される状況下で、相手から先に脇差で頭部を切りつけられ、これに反撃してその胸部を出刃包丁で刺して殺害した行為につき、侵害の急迫性を欠くとして、正当防衛の成立を否定した事例
都立高専の一般教養科助教授が、教授選の対立候補である助教授の教授昇任を妨害し、自己の教授昇任を図るために不明瞭な工作をしているかの如き印象を与える文書が、教職員で構成する一般教養科会議に配布された場合に、当該文書が公共の利害に関し、公益を図ることを目的として作成、配布されたものであって、記事の内容は真実であることなどから、当該文書の作成配布行為の違法性は阻却されるとした事例
会社が商号・本店所在地・代表取締役変更の登記をした後旧商号・旧代表取締役及び右本店所在地と異なる肩書地を表示して振り出された手形については会社は責任を負わないとされた事例
油圧式故紙梱包機のホッパーの押え蓋と投入口の縁に挟まれ腹背部を切断されて死亡した経営者の死亡事故につき、その原因が右機械の瑕疵にあったとはいえないとして、右機械の売主等に対する損害賠償請求が認められなかった事例
被告が原告製品の性能につき虚偽の事実を記載した文書を原告取引先に送付したことが、営業上の信用を害するものであるとして不正競争防止法1条1項6号に基づく差止請求及び損害賠償請求は認められたが、その虚偽事実の内容と送付態様からして信用回復措置請求までは認められないとされた事例
商標法26条1項1号に基づき商標権の効力の範囲外とされうる自己の名称は、普通に用いられる方法で表示されているものに限られるから、めだつ字体など特殊な態様で表示されているときには、他人の商標権の効力によって抹消されても違法な執行とはいえない
「輪中堤」の占用許可取消に伴う損失補償において、その文化的価値についての損失は、右「輪中堤」の所有権相当価格の約1割にあたる額とするのが相当とされた事例
1 課税処分の取消訴訟において手続的違法事由も審理の対象となるか(積極)
2 総所得金額の算定については訴訟での実額認定が推計額に優先するか(積極)
3 推計の方法につき、主位的主張の同業者比率よりも予備的主張の本人比率の方がより合理性が高いとして、先に予備的主張の当否を判断し、これを採用した事例
交通事故によって負傷した被害者が自賠法施行令2条1項2号の傷害を受けた者に対する保険金の支給を受けたのちに死亡した場合は、右保険金は同項1号の死亡した者に対する保険金に充当される
1 借地権の無断譲受人は、譲受建物に競売申立登記がなされた後でも借地法10条の建物買取請求権を行使できるか(積極)
2 競売手続中の建物にかかる借地法10条の買取請求権行使に対し、賃貸人は競売申立の取下又は競売手続の完結まで代金支払を拒絶できるか(積極)
3 競売手続中の建物にかかる借地法10条の買取請求権行使に対し、代金支払拒絶権が行使された場合に、買取請求権者の代金供託請求にもかかわらず賃貸人が右供託をしないときは、賃貸人は代金支払拒絶権を失うか(積極)
4 賃貸人が、競売手続中の建物にかかる借地法10条の買取代金の支払を拒絶しながら、代金供託請求に応じなかったため代金支払拒絶権を失った場合でも、買取請求権者は、建物の明渡等の請求に対して、代金の支払ではなく代金の供託との引換えにするとの同時履行
会社の社屋の屋根の雪降し作業中足を滑らせて地上に転落して負傷した会社員の事故につき、会社側の安全配慮義務違反がないとされた事例
商店街にある印刷作業場から発する振動、臭気、騒音が受忍限度を超えるものではないとして、その損害賠償責任が否定された事例
1 原商標出願について、審決取消訴訟中であることにより未確定の時点で連合商標登録出願に変更された以上、商標法11条2項、3項に規定する変更出願手続の要件を満たしているので、原出願時に遡って手続が開始・進行され、これと同時に原出願の手続は取下げたものとみなされ、その効力を失い、その間の拒絶査定はもとより審決も当然その効力を失い、確定の問題も生じない
2 右のような場合には原出願についての審決の取消を求める訴は法律上の利益を欠き不適法である
地方公共団体である市の女性職員が、5等級から4等級へ昇格させられなかったのは、女子であることを理由とするもので、性別による差別的取扱いであるとして、国賠法1条に基づき損害賠償を求めた請求が排斥された事例(名古屋高裁昭和58年4月28日)