最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、いわゆるセクシャル・ハラスメントの法理につき初の本格的な司法判断が示された事例として、注目を集めたものである。
二 裁判所の認定した事実関係の概要は、以下のとおりである。
原告は、昭和六〇年一二月に、学生向けの情報雑誌の発行等を業務としていた被告会社乙に入社し、...
《解 説》
一 本判決は、信用取引の顧客であるインド国籍の投資家Xが、Y証券会社の従業員の無断売買によって生じた差損等に相当する金員をXの信用取引口座から引き落とし処理されたとして、Yに対して右引き落とし処理にかかる金員と同額の損害賠償を請求する事案につき、証券会社の従業員が顧客の信用取引...
《解 説》
1 本件は、原審が、口頭弁論期日においてした弁論の終結が不公正であり、憲法三二条に違反するとして、右事件の原告が、特別抗告を申し立てたものである。
本決定は、本件抗告がその対象としている原審のした弁論終結の決定は、訴訟指揮の裁判に属するものであって、これに不服のある者は終局判...
《解 説》
一 X(仲間清昌)及びZ(与儀勇英)らは平成二年九月に執行された町議会議員選挙に立候補し、当初、Xの最下位当選及びZの次点が発表され、Zからの異議申し出も棄却されたが、審査申立てによりY県選管は町選管においてXに対する有効投票とされた別記1、2の投票を無効とし、〇・六一三票の差...
《解 説》
一 事案の概要
被告(千葉県知事)は、ガス会社に対してガス整圧器設置等のための土地使用許可(行政財産使用許可)処分をしたが、この土地に近接して土地・建物(マンション)を所有する原告が、ガス整圧器の設置はガス漏れによるガス爆発の危険性を生じさせ、原告の土地・建物の所有権の正当な...
《解 説》
一 本件は、温泉をゆう出させる目的で、自己所有の土地を掘さくし、動力を装置しようとした原告が、被告(県知事)に対して許可申請をしたところ、いずれも不許可とされたため右各処分の取消しを求めた事案である。
温泉の掘さく及び動力を装置しようとする者は、それぞれ温泉法三条、八条に基づ...
《解 説》
一 本件は、在監者に対する書籍の閲読不許可処分を違法としたものである。在監者に対する書籍の閲読制限を違法とした裁判例には、東京地判昭59・8・8本誌五四〇号二〇七頁、東京地判昭59・12・3判時一一四六号四二頁、長崎地判昭60・5・22本誌五六二号一四四頁、東京地判昭62・6・...
《解 説》
一 事案の概要
原告は、略称をJR総連といい、東日本旅行鉄道労働組合などの単位組合の連合体であるが、右総連の総務部長が平成元年一二月二日帰宅途中、自宅付近で何者かによって殺害されたため、同人を追悼する合同葬を行うことを計画し、同月一六日、上尾市福祉会館に対し(以下、「本件会館...
《解 説》
Xはフリーの照明家であるが、Y県が設置管理する多目的ホールにおいて行われる予定の芝居公演のためシーリングライトの操作準備をするべく、天井裏のキャットウォークからシーリングライト付近の梁上に足を掛けようとしたところ、誤って九・五メートル下の客席補助椅子上に転落し、骨盤骨折等の傷害...
《解 説》
一 本件の事案の概要はこうである。(一) 被告税務署長は、看板業を営む原告に所得税更正処分をした。(二) 被告の部下職員は、前後三回にわたり原告の店舗を訪問した。原告は、しかし、多忙を理由に調査を拒絶した。(三) その後、原告店舗を訪問した際、同調査官は、原告の在、不在を確認す...
《解 説》
一1 原告の主張によると、原告は、昭和五七年八月一一日丙1会社(セントランス・被告・被控訴人)との間で、形式的に雇用契約を締結し、同日、丙1社から形式的に丙2会社(セントラルエンジニアリング・被告・被控訴人)への出向を命ぜられ、さらに丙2社から乙会社(松下通信工業・被告・被控訴...
《解 説》
地方公務員法二八条の二は職員の定年による退職について定め、同法二八条の三は、任命権者は、職員が定年により退職すべきこととなる場合に、「その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき...
《解 説》
一 本件は、住宅ローン貸付を業とするX会社が借主Yに対してなした貸金請求事件において、Yが消滅時効の援用をしたところ、X会社が、連帯保証債務の物上保証人に対する根抵当権の実行による差押えを理由に時効の中断を主張したので、右差押えが時効中断事由としての「裁判上の請求」ないし「裁判...
《解 説》
一 本件は、二〇〇〇億円という高額の融資等を条件に東京都千代田区内の一等地約九〇〇〇平方メートルの土地を賃貸し、また地上建物(ホテルニュージャパン)を譲渡する旨の合意の成否が争われた事例である。
X・A(=Y会社の代表取締役)間で、Bらの仲介により昭和六一年頃から、Y会社が本...
《解 説》
本件は、ある契約関係が、転貸借か否かについて争いとなった事案である。Xは、YらがAから賃借していた建物(原宿竹下通りに面している)の一部を昭和六二年四月から店舗として利用し、エステティックのスタジオを経営していたが、この店舗の利用関係設定について転貸借であると主張し、後記のよう...
《解 説》
一 本件は、運転免許取得・バイク乗車禁止を定めた私立高校生活指導規定(校則)に違反することを理由にしてされた退学処分の処分を受けた者から当該退学処分の違法性を理由に損害賠償約七五三万円を請求した事案である。
一審判決は、証拠調べの結果に基づき、詳細に事実関係を認定したうえ、前...
《解 説》
一 X1は、昭和五六年三月、Y1の経営する「ピープルスポーツクラブ新座」の会員として入会し、体育実技の指導を受けていた者であるが、昭和六二年一〇月一七日、右クラブの従業員Y2の指導で鉄棒のトカチェフ(背面開脚後ろ飛び越し)を練習中、飛び越し時に大腿部を鉄棒のバーに接触させて鉄棒...
《解 説》
一 本件は心室中隔欠損症(心臓の左心室と右心室とを隔てる壁に穴が開いていること)の手術の首尾が争われた事例である。
原告X1は心室中隔欠損症であったが、五才であった昭和五七年六月、被告Yが開設、運営する国立療養所岐阜病院に入院してその欠損孔を閉じる手術を受けた。閉鎖手術自体は...
《解 説》
一 本件は、肝細胞癌による患者の死亡につき、延命利益の侵害を理由とする慰謝料が認容された事例である。
訴外Aは昭和六一年当時五五才であったが、被告Yが開設する医院に十年来通院して、糖尿病、肝硬変等の治療を受けていた。Aは同年二月の肝機能検査で異常を呈し、大学病院でCT検査を受...
《解 説》
一 Aは昭和五九年当時一七歳の高校生であったが、一〇月三日夜、腹痛と発熱でYが開設、運営する病院に入院した。医師は諸検査によって急性虫垂炎と診断したが、開腹手術の結果、重症の急性腸炎と診断を改め、その後これに対する治療を行った。しかしその後もAは腹部の膨満や腹痛が続いて、同月八...
《解 説》
一 事案の概要は以下の通りである。
Aは昭和五六年当時五一歳であったが、吐血に対する治療のため、被告Yが運営する徳島大学医学部附属病院に入院した。病院側は食道静脈瘤等の診断を下し、その治療のために食道静脈瘤塞栓術(TIO)を施行したところ、手術中にAは呼吸停止を生じ、三日後に...
《解 説》
一 X1は、昭和六〇年七月当時、埼玉県立本庄高校二年に在学していたが、同月二〇日、終業式終了後、同校体育館で行われた体操部の練習に参加し、ミニトランポリンの練習を開始した直後、膝と腰を伸ばすタイミングを失したため、マットの上に頭から落下し、頚髄損傷等の傷害を負った。
そこで、...
《解 説》
Yは商品先物取引の受託業務等を目的とした株式会社で、XはYとの間に昭和六一年四月から九月までの間、ニューヨーク取引所におけるコーヒーの商品取引委託契約を締結し、その差損益残高勘定で差損金・帳尻不足金を生じた。XはYに昭和六一年四月交付した取引委託保証金三〇〇万円及び同月中更に交...
《解 説》
一 Xは、昭和九年一〇月、酒類の醸造、販売等を目的として設立された合名会社であり、現在の社員は、訴外A及びYの二名であるが、(一)Yは、昭和二二年から昭和五一年まで検察官の職にあって会社の業務を執行しなかったこと、(二)Yは、昭和五六年五月、Xの解散の訴えを提起し、これに敗訴す...
《解 説》
X1A夫婦が海外旅行中妻Aが海岸で溺死した事故について、保険契約又は補償契約に基づき、X1及び親族であるXらが保険会社・旅行会社であるYらに対し、死亡保険金及び補償金を請求したのに対して、東京地判平2・3・19本誌七四四号一九八頁は一部認容判決をした。これに対して、XYら双方か...
《解 説》
一 X1とX2の子Aは、平成三年四月八日夜、同僚Bの運転する貨物自動車の助手席に同乗して、埼玉県行田市内を走行中、運転ミスにより右自動車が路外に逸脱転倒したため、死亡するに至った。
ところで、右自動車の所有者Cは、Y(保険会社)との間で、右自動車を被保険車として、自家用自動車...
《解 説》
一 本件事案は、次の通りである。X(原告、控訴人)は、アメリカ合衆国ミネソタ州法に準拠して設立された会社であり、Y(被告、被控訴人)は、日本国の商法に準拠して設立された株式会社であるところ、Yは、Xに対し、継続的にナイロン皮膜を売り渡していたが、昭和六二年に、Xは、右売買契約の...
《解 説》
一 原告は、アメリカのミネソタ州法に準拠して設立された会社。被告は日本法人。原告は被告よりナイロン皮膜を購入したが、右製品に瑕疵があったとしてミネソタ州地裁に損害賠償請求訴訟を提起した。同地裁はわが国の裁判所を通じて、被告に訴状及び召喚状を送達したのに対し、被告は、日本を仲裁地...
《解 説》
本件は、居宅とその敷地(大東市北条六丁目一四八〇番地一。公簿面積八一五・五七平方メートル。以下「本件土地」という。)を所有する原告が、右居宅とその北側を東西に流れる小河川(宮谷川。以下「本件河川」という。)との間に存在する土居(土塀)の敷地部分の土地(実測面積八六・二九平方メー...
《解 説》
本件は、行方不明の債務者に対し、横領の損害賠償債権を有する債権者が、債務者の給料及び退職金債権を被差押債権として、債権差押え命令の申立てをした事件である。
債務者は、行方不明となって約五年経過しており、その間給料や退職金を取りにくることもなかったので、債権者は、法律の定める差...
《解 説》
一 本件は、競売建物の所有者が、競売建物を取り毀そうとしたことが、競売不動産の価値を著しく減少するおそれのある行為に該当するとして、競売建物の取り毀しを禁止する保全処分が認められたものである。
申立書等によると、本件事案の概要は次のとおりである。本件競売申立債権者は、金融業を...
《解 説》
一 事案の概要等
1 本決定は、競売建物三棟につき、その所有者及び占有者を相手方として、占有移転禁止及び執行官保管を命ずる売却のための保全処分(民執法五五条一項、二項)を認めたものである。
2 申立書等によれば、本件競売申立債権者は、不動産会社である所有者が分譲目的で所...
《解 説》
本判決は、いわゆるみなし公務員である国鉄清算事業団の幹部職員が、測量会社の社長ら三名の業者に対し、職務上の便宜をはかったなどとして積極的に金品を要求し、前後五回にわたり、現金合計三四〇万円および時価一三〇万円相当の外国製中古自動車を賄賂として収受したという事案である。収賄事犯の...
《解 説》
被告人は、「コロンビア人女性L及びその弟と称するDらと共謀の上、法定の除外事由がないのに、営利の目的をもって、Kに対し、コカイン約五〇〇グラムを代金三〇〇万円で譲渡した」として、営利目的によるコカイン譲渡の事実で起訴されたが、公判では、「営利の目的」があったかどうかが争われた。...
《解 説》
一 本件は、殺人等の罪で第一審において死刑を言渡され控訴を申立てた被告人が右控訴を取下げたのに対し、弁護人から右控訴取下の効力に関し疑義が提出されたため、裁判所が決定によりその見解を表明したものである。
弁護人は、(1)被告人は本件控訴取下書を提出した当時、その意味を認識し理...
《解 説》
Xらの子でY市立小学校六年生のAは、幼少の時から気管支喘息の持病があり、七歳の時に食事アレルギー症の一種であるそばアレルギー症に罹患していたところ、学校給食に出たそばを食してアレルギー症状が発生し、帰宅途中、強度の喘息発作のため異物を誤飲して窒息死した。本訴は、Xらが担任教師及...