最も長い歴史をもつ判例実務誌
1 行政組織法上の行政機関以外の組織が行政事件訴訟法 12 条 3 項にいう「事案の処理に当 たった下級行政機関」に該当する場合
2 日本年金機構の下部組織である事務センターが行政事件訴訟法 12 条 3 項にいう「事案の 処理に当たった下級行政機関」に該当しないと した原審の判断に違法があるとされた事例
1 労働大臣が石綿製品の製造等を行う工場又 は作業場における石綿関連疾患の発生防止のた めに労働基準法(昭和 47 年法律第 57 号によ る改正前のもの)に基づく省令制定権限を行使 しなかったことが国家賠償法 1条 1項の適用上 違法であるとされた事例(①事件)
2 労働大臣が石綿製品の製造等を行う工場又 は作業場における石綿関連疾患の発生防止のた めに労働基準法(昭和 47 年法律第 57 号によ る改正前のもの)に基づく省令制定権限を行使 しなかったことが国家賠償法 1条 1項の適用上 違法であるとはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例(②事件)
生活保護法 62 条 3 項に基づく保護の廃止の決 定に先立ち,処分行政庁による被保護者に対す る同法 27 条 1 項に基づく指示が生活保護法施
行規則 19 条により書面によって行われた場合 において,当該書面に記載されていた事項に代 わる対応として処分行政庁が口頭で指導してい た事項が指示の内容に含まれると解することは できないとされた事例
元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合におい て,借主から約定の毎月の返済額を超過する額 の支払がされたときの充当関係
死刑確定者から再審について相談している弁護 士宛ての信書に,支援者等に対する差入れの謝 礼の伝言依頼などが記載されている部分が存在 する場合に,同信書の上記部分の発信は,交友 関係を維持するために必要であるから刑事収容 施設及び被収容者等の処遇に関する法律139条2項によって許可されるべきであるとして, これを許可しなかった拘置所長の判断が違法で あると判断された事例
社債,株式等の振替に関する法律の適用を受け る国債を買い付けた者は,日本銀行から国債の 振替えを行うための口座を開設した金融機関を 通じて国債の償還を受けるべきであり,国に対 して直接償還請求することはできない
船員等の労働組合が国際的労働協約を締結して いない海運会社に労働協約締結を訴えるデモ行 動をした際に通行人に「賃金を搾取する会社」 等の記載のあるビラを配布し,労働組合の機関 紙である新聞に「悪徳船主」である旨の記事を 掲載したことが,真実性・誤信相当性を欠き, 海運会社に対する名誉毀損を構成するとされた 事例
1 国は,刑事収容施設の被収容者の診療行為 に関して,安全配慮義務を負担している
2 刑事収容施設の被収容者に対する鼻腔経管 栄養補給措置の実施が安全配慮義務に違反する として,国に対する損害賠償責任が認められた事例
拒絶査定と異なる主引用例を引用して判断しよ うとするときは,主引用例を変更したとしても 出願人の防御権を奪うものとはいえない特段の 事情がない限り,原則として,法 159 条 2 項に いう「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見し た場合」に当たるものとして法 50 条が準用さ れる
移動体操作傾向解析方法第 2 事件 名称を「移動体の操作傾向解析方法,運行管理 システム及びその構成装置,記録媒体」とする 発明につき,進歩性が欠如するとして,特許無 効審判請求不成立審決を取り消した事例
「北斎」との筆書風の漢字と葛飾北斎が用いた 落款と同様の形状をした図形からなる本願商標 が,商標法 4 条 1 項 7 号にいう「公の秩序又は 善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当 するとした審決を取り消した事例
「液晶用スペーサーおよび液晶用スペーサーの 製造方法」に係る発明について,被告による訂 正は,新規な技術的事項を導入するものであり, 平成 23 年法律第 63 号による改正前の特許法134 条の 2 第 1 項ただし書及び同条 5 項において準用する同法 126 条 3 項に違反し,不適法で あるとされた事例
運動靴の甲の側面に付された本件商標から,4 本の細長いストライプではなく,それらの間に 存在する空白部分を 3 本のストライプと認識す る場合などがあり,3 本のストライプから著名 なアディダスのスリーストライプ商標を想起す るから,単に本件商標と引用各商標との外観上 の類否を論ずるだけでは足りず,本件商標と引 用各商標(アディダスの著名商標)との構成態 様より受ける印象及び両商標が使用される指定 商品の取引の実情等を総合勘案すると,本件商 標を指定商品「履物,運動用特殊靴」に使用したときは,その取引者,需要者において,当該 商品がアディダスの業務に係る商品と混同を生 ずるおそれがあるとした事例
人工歯意匠事件 人工歯に係る意匠につき,相違点の看過及び意 匠の類否判断に誤りがあるとして,公知意匠に 類似することを理由に拒絶査定不服審判請求を 不成立とした審決を取り消した事例
北朝鮮に居住し,北朝鮮国籍を有する者らが PCT に基づいて行った国際出願に関して,特 許庁長官が,上記出願が日本が PCT の締約国 と認めていない北朝鮮の国籍及び住所を有する 者によりなされたものであることを理由に行っ た手続却下処分が維持された事例
商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的 意味を有し,不正競争防止法 2 条 1 項 1 号にい う「商品等表示」に該当するためには,①商品 の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著 な特徴を有しており(特別顕著性),かつ,② その形態が特定の事業者によって長期間独占的 に使用され,又は極めて強力な宣伝広告や爆発 的な販売実績等により(周知性),需要者にお いてその形態を有する商品が特定の事業者の出 所を表示するものとして周知になっていること を要する
商標法 51 条 1 項にいう混同を生ずるおそれの 有無については,商標権者が使用する商標と引 用する他人の商標との類似性の程度,当該他人 の商標の周知著名性及び独創性の有無,程度, 商標権者が使用する商品等と当該他人の業務に 係る商品等との間の性質,用途又は目的におけ る関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要 者の共通性その他取引の実情等に照らし,当該 商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断される べきものである
指定商品を「スプレー式の薬剤」とする,右手 にスプレーを持ち首筋から背中にかけてスプレ ーを噴霧して薬剤を使用している人物の様子を 表した図形商標が,商標法 3 条 1 項 6 号に該当 するとされた事例
「あずきバー」事件
「あずきバー」という標準文字からなる商標が 指定商品「あずきを加味してなる菓子」に使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品 であることを認識することができるに至ったも のと認められた事例
1 第三者に無断譲渡する意図を秘して自己名 義で携帯電話機の購入等を申し込む行為と詐欺 罪にいう欺罔行為の成否
2 第三者に無断譲渡する意図を秘して自己名 義で携帯電話機の購入等を申し込んだ被告人両 名の行為は,販売店の店長が被告人両名に携帯 電話機を販売交付したのは錯誤によるものであ ると認めるには合理的疑いが残るとしても,詐 欺未遂罪を構成するとされた事例
被告人が覚せい剤を自己の身体に注射して使用 した事案につき,覚せい剤密売人からけん銃を 頭部に突き付けられて覚せい剤の使用を強要さ れたため,断れば殺されると思い,仕方なく覚 せい剤を使用した旨の被告人の供述の信用性は 排斥できず,被告人の供述を前提にすると,被 告人の覚せい剤使用行為は緊急避難に該当する として,原審の有罪判決を破棄し,無罪を言い 渡した事例
大阪地検犯人隠避事件控訴審判決 地方検察庁の幹部検察官 2 人が,共謀の上,職 務に関して証拠を隠滅した犯人である部下の検 察官を隠避したと認められた事例
在留特別許可をしないでされた出入国管理及び 難民認定法 49 条 1 項に基づく異議の申出は理 由がない旨の裁決が裁量権の範囲を逸脱し又は これを濫用したものとして違法とされた事例
1 FX 取扱業者である被告がインターネット 上のFX取引画面上にレートを表示する行為は, 各顧客の申込みに対する個別の承諾の意思表示 ではなく,交叉申し込みの意思表示であり,各 顧客と被告の各申込みの意思表示が合致する限 度で,決済取引が成立する
2 被告が市場レートからかけ離れた誤レート を FX取引画面上に表示して各顧客に提示した 場合には意思表示について錯誤無効が認められ るところ,当該誤レートの提示につき,被告に おいて通常期待される注意を著しく欠いている 状態にあったと認められない場合には,被告に 重過失は認められず,当該決済取引は無効となる
本人確認情報提供制度の趣旨からすれば,司法 書士である被告には,本人確認を行うに当たり 高度な注意義務が課せられているところ,被告 はこれを怠ったため,過失責任が認められた事 例
インターネットのサイトから写真をダウンロー ドし,自ら運営するブログに写真をアップロー ドした被告について,写真の利用権原の有無の 確認を怠ったとして,著作権(複製権,公衆送 信権)侵害に係る過失を認めた事例
身体疾患により日々の服薬と定期的な検査が欠 かせない状態にある 18 歳の少年に対する窃盗 保護事件について,少年を医療少年院に送致し た事例