最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 昭和四〇年代後半から多数の水害訴訟が提起されたが、ダムの操作等の人為的要因が問題となるものを除けば、本件は最高裁における一連の水害訴訟の締めくくりに当たる事件である。本件水害の発生時期は、多摩川水害と同年の昭和四九年である(大東水害は同四七年、長良川水害は同五一年)。本件は...
《解 説》
一 本件は、宗教法人オウム真理教(以下「教団」という。)の元信者であった被告人が、被害者に誘われ、共に教団施設内で病気療養中の母親を助け出そうとしたところを教団信者らに見つかり、教団施設内の一室に連行され、両手に手錠を掛けられ教団幹部らに取り囲まれる中、教団代表者Aらと共謀の上...
《解 説》
一 本件は、県議会議員選挙において当選した原告の選挙運動における出納責任者が公職選挙法(以下「法」という。)二二一条三項三号の罪により刑に処せられたことにより、放置すると法二五一条の二第一項二号の規定により原告の当選が無効とされ、併せて五年間立候補が禁止されることになるため、原...
《解 説》
本件は、物上保証人に対する抵当権の実行によって被担保債権の消滅時効の中断効の生ずる時点についての解釈が争われた事件である。
本件土地の所有者であるAとX1は、昭和五四年一二月四日、その所有する本件土地上に債務者をBとし、Yを権利者とする極度額一九〇〇万円の本件根抵当権を設定し...
《解 説》
一 抵当不動産の所有者(抵当権設定者)は、競売による売却前は、目的物を通常の用法に従って使用収益することができる。抵当権設定者による通常の用法に従った使用収益の中に抵当不動産を他人に賃貸することが含まれるか否かは、本来一つの問題であるが、抵当不動産の管理上他人に賃貸しないと実際...
《解 説》
本判決要旨は、最高裁第二小法廷において本件と同日言い渡された平成五年(オ)第一三号事件判決の判決要旨二と同様の考え方に基づくものである。平成五年(オ)第一三号事件判決においては賃貸人が目的土地の所有者であるという場合が想定されているが、本件は、賃貸人が所有者である第三者から土地...
《解 説》
一 土地区画整理法一〇一条一項は、土地区画整理事業施工中に仮換地の指定を受け、その仮換地につき別に使用収益開始日を定められたため、従前の土地を使用、収益できないために生じた通常の損失について、権利者に対して補償すべき旨を定めている(土地改良法五二条の八は、土地改良事業における一...
《解 説》
一 Xは、平成六年五月一八日、有効な旅券又は乗員手帳を所持しないまま本邦に入国したことから、同日、旅券不携帯により現行犯逮捕された。これを受けて、入国審査官は、同年七月一九日、Xについて出入国管理及び難民認定法二四条一号に該当するかの審査を行い、同日、Xが有効な旅券又は乗員手帳...
《解 説》
X1・X2夫婦の子A及びX3・X4夫婦の子Bは、いずれもY1学校法人(当時の代表者Y3)の設置する幼稚園(同園長Y2)に通っていたが、同幼稚園は井戸水を使っており、井戸の近くに浄化槽及び汚水マスがあって井戸水を汚染したため、井戸水を飲んだA及びBが病原性大腸菌に感染し、急性脳炎...
《解 説》
Xは、業務上横領事件で起訴され、一部有罪判決が確定した者であるが、右刑事事件の第一審において裁判長Y2が訴訟指揮により公判の最終段階で公判調書の立証趣旨に関する記載等の書換えを行わせ、変更後の立証趣旨に対するXの意見陳述の機会を奪い、公正な裁判を受ける権利を侵害したとして国Y1...
《解 説》
一 事案の概要
本件は、注文を受けて家屋(以下「本件家屋」という。)を新築した請負人である原告(控訴人)が、注文主が請負代金を支払わないため、新築後六月以内に同家屋を注文主に引き渡さなかったので、被告(被控訴人)県税事務所長が原告に対してした地方税法(以下「法」という。)七三...
《解 説》
一 相続税法七条は、著しい低価で財産の譲渡を受けた場合には、譲受人は譲渡人から時価と対価との差額に相当する金額の贈与を受けたものとみなす旨を定めている。
他方、平成二年八月三日付け直評一二、直資二―二〇三による改正前の相続税財産評価に関する通達(昭和三九年四月二五日付け直資五...
《解 説》
一 市が、清掃工場の建設予定地として市有地及びその隣地である訴外A会社所有の社有地(以下「本件社有地」という。)を選定したところ、両土地には訴外人Bらの鉱業権(以下「本件鉱業権」という。)が設定されていたことから、市担当者が訴外A会社に代わって本件鉱業権の買取交渉を行った結果、...
《解 説》
地労委がA労働組合らのX会社を相手方とする不当労働行為救済申立てにつき、救済命令を発した(初審命令)が、X会社の再審査申立てに対して中労委(Y)は、A労働組合が消滅したので、再審査を進める理由がなくなったとして、再審査申立てを却下した(本件命令)。X会社が中労委の本件命令の取消...
《解 説》
一 Xは、平成二年三月、訴外A会社が、土地を買収し同地上の旧建物を取り壊したうえ、建物を建築し、パチンコ店経営等を行う事業計画をたて、右実現のための資金の融資を依頼してきたので、同土地等に抵当権を設定することとしたうえ一〇億円を融資することにした。
そして、その際、A会社は、...
《解 説》
本件は、外資系の有限会社Xに対する監査法人Y1による任意監査において、Xの経理部長Aが無断で借入れをし、預金を担保に入れていた事実を発見できず、無限定の適正意見を表明したことについて、Y1に対し債務不履行を理由に六億〇五五一万円余の損害賠償を、監査法人の社員(相続人を含む)Y2...
《解 説》
Xは昭和六〇年二月、Yの都市計画に基づく公園事業用地の買収に応じて所有地を売却し、同年七月及び同六一年三月、その代替地としてYから本件土地を購入した。Xは、同年七月ころ、本件土地上にレストランを建築し、同六二年四月から営業を開始した。Xは平成四年六月下旬、右レストランを解体し、...
《解 説》
Aは、X信用保証協会の信用保証の下にB銀行から一四〇〇万円を借り受けた。B・X間の約定書においては、Xの保証した貸付をもってBの既存の債権に充てないこと(旧債務振替禁止条項)、右の違反があった場合、Xは保証債務の全部又は一部の責を免れることが規定されていた。Aが借入金債務の弁済...
《解 説》
一 原告らは、被告保険会社と終身型変額生命保険契約を締結した。原告らは、この契約締結に際し、被告の従業員が原告に、この保険は一番率の良い貯蓄であるとか、貯蓄より有利な商品で元本の保証があるなどと騙したと主張し、支払った保険料と解約返戻金との差額を損害として請求した。
二 原告...
《解 説》
大正一五年一一月生の男性Xは平成二年七月、Y3銀行(担当者Y4)から九〇〇〇万円を借り受け、Y1保険会社の外務員Y2を介して基本保険金額一億四二三二万円余、保険料八〇〇〇万円の変額保険に加入した。Xは、その後、本件変額保険に係るY1の資産運用実績が悪いことを聞き、同三年四月、変...
《解 説》
Aは約束手形一〇通を振り出し、X1がそのうち二通(額面合計六〇〇〇万円)、X2がそのうち八通(額面合計九〇〇〇万円)を取得した。Xらが各手形を支払場所Y信用組合E支店に呈示したが、Yは、Aからの依頼に基づき、手形交換所に偽造を理由とする不渡届を提出するとともに、本件全手形につい...
《解 説》
X1は大正一〇年生まれの女性であるが、平成元年七月、Y1生命保険会社との間で五口の変額保険契約を締結し、そのうち四口の保険料一億四五二九万円余については、Y2銀行から借り入れて支払い、Y3信用保証会社の求償債権についてX1及びその長男X2所有の不動産に根抵当権が設定された。
...
《解 説》
一 Xは、平成三年四月、Y1の紹介により、埼玉県入間郡に所在する訴外Aの土地を買受けることになり、Aの代理人であると称するY2弁護士に対して、買付証拠金八〇〇万円と手付金一二〇〇万円を支払ったが、Y1がXを騙して金員を詐取するために、真実はAが右土地を売却する意思がないのに、こ...
《解 説》
本件は、被告発行の転換社債を複数取得した原告が、複数の架空名義に分散して転換請求を行い(右名義が架空名義であり真実の権利者が原告であることについては争いがない。)、右架空名義人が単位未満株主として登録された後(架空名義人四一七名・各九八五株・なお一単位は一〇〇〇株)、右各架空名...
《解 説》
一 本件の事案の概要は次のとおりである。
海上運送会社であるYは、Aとの間で、冷凍クラブ(蟹)を中味とする本件貨物をアメリカ合衆国アラスカ州ダッチハーバーから横浜まで海上運送する契約を締結し、Aに対して船荷証券を発行し、Aは、荷受人であるBに対して、右船荷証券を裏書譲渡した。...
《解 説》
一 事案を簡略に説明すると、債務者Aは、Yのために本件土地につき第一順位の抵当権、本件建物につき第三順位の根抵当権を設定し、Xのために本件土地につき第二順位の、本件建物につき第一順位の各抵当権を設定している。Yの申立てにより本件土地建物について不動産競売手続が開始された。執行裁...
《解 説》
本件は、沖縄県において、小学生の少女が駐留米国軍人三名により逮捕監禁されたうえ強姦され傷害を負ったという、いわゆる沖縄少女暴行事件の控訴審判決である。
第一審においては、被告人三名のうち、甲は自ら姦淫した事実を認めたが、乙、丙は自ら姦淫した事実を否認したところ、第一審判決(那...
《解 説》
一 本件は、私立K大学付属女子高校(以下「K高校」)の教諭である被告人が、放課後に教室内で再試験を実施していた際、再試験を受ける必要のなかった生徒Jが教室内にいたため、Jを廊下に出させようとしているうちに、Jがスカート丈についての校則に違反していることに気付き、スカート丈を直す...
《解 説》
一 本件は、被告人が、元暴力団組員の知人から、消費者金融の店舗を襲って現金を強取しようと誘われ、その旨同人と共謀の上、こもごも同店舗責任者らに暴行を加えて現金約一二一万円を強取したが、被告人が同店舗から逃走した直後に共犯者が右責任者をけん銃で射殺したという事案であり、被告人に対...