最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件の経緯
東京地検検事正及び東京都知事は、宗教法人法(以下「法」という。)八一条一項に基づき、東京地裁にY宗教法人の解散命令の請求をした。その理由とするところは、Yの代表役員Aが、信者多数と共に組織的に、不特定多数の者を殺害する目的で、サリンの生成を企て、もって殺人の予...
《解 説》
本件は、在留外国人の指紋押なつ拒否事件の刑事上告審判決である。
一 本判決の要点
本判決は、指紋押なつ制度の合憲性に関して初めて最高裁の判断を示したものである。その要点は、次のようなものである。
①指紋押なつ制度について
「指紋は、指先の紋様であり、それ自体では個人の私...
《解 説》
一 本件は、原告らが、自衛隊掃海艇をペルシャ湾に派遣する旨の内閣の閣議決定(本件閣議決定)並びに右派遣に関する内閣総理大臣及び防衛庁長官の指揮命令(本件各指揮命令)は違憲であるとして、本件閣議決定及び本件各指揮命令の違憲無効確認を求めるとともに、本件閣議決定及び本件各指揮命令に...
《解 説》
一 本件は、禁錮以上の刑に処する確定裁判を経た罪と刑法四五条後段の併合罪の関係に立ついわゆる余罪について、右確定裁判が実刑判決の場合、刑法二五条一項一号によりその刑の執行を猶予することができるかが問題となった事案である。
二 余罪の執行猶予については、昭和二〇年代終わりから昭...
《解 説》
Y公安委員会は、任侠団体を名乗るXに対し、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)三条に基づく暴力団の指定をしたが、Xはその指定処分の取消しを求めて出訴した。Xの主張は多岐にわたっており、暴対法自体が憲法一三条・一四条・二一条に反すると主張するほか、同法の立法体系...
《解 説》
一 本件は、被告国から、父親(元中国残留孤児)が自己の志望によって中国国籍を取得していたため「出生の時に父が日本国民であるとき(旧国籍法二条一号)」に当たらないとして日本国籍取得を認められなかった原告が、父(本件訴え提起時には既に死亡していた)が任意に中国国籍を取得したことはな...
《解 説》
一 Xらは、いずれも奈良県天理市の住民であるが、天理市が、平成二年九月に、奈良県から約七億四五八二万円で払い下げた土地を、平成三年三月に建設会社に約九億八〇〇〇万円で売却したことについて、右土地の建設会社に対する売却は極めて低廉な価格での売却であって、当時の市長、助役及び建設会...
《解 説》
一 本件は、Xらがそれぞれ所有していた本件各土地につき、宅地造成するため都市計画法(以下、「法」という。)二九条による開発行為の許可申請手続を行うにあたり、同法三二条による協議を経て、地方公共団体であるY1に対し本件各土地を無償提供することとし、同法四〇条二項に基づく所有権移転...
《解 説》
本件は、X(専門学校の設立準備委員会)がY(厚生大臣)に提出した柔道整復師養成施設の設置計画を承認しないとのYの通知について、それが取消訴訟の対象となる行政処分に当たるか否かが争われた事案であり、第一審の東京地判平6・7・19及び本控訴審判決とも、これを消極に解した。
柔道整...
《解 説》
一 訴外Aは、平成四年一一月当時、長崎県大村市教育委員会教育次長であり、同月二六日から一泊二日の滞在予定で東京に出張し、同日夜、Yの経営する「市ケ谷会館」に宿泊したが、同会館内の和風レストランで飲食した後、トイレで倒れるなどして脳挫傷等の傷害を負い、翌朝東京女子医科大学病院に搬...
《解 説》
一 A会社は、平成四年一二月二二日、C地方建設局から公共工事を請け負い、B会社が工事完成保証人となった。そして、A会社は、右請負契約につき、公共工事に関する前払金の保証事業等を営むY2会社から前払金保証を得た上、平成五年二月八日、発注者であるC地方建設局から、Y1銀行東陽町支店...
《解 説》
一 鉄道保守工事の下請業者Zは、新聞広告等で募集した従業員を宿舎に寝起きさせ、元請人Yの注文に応じて、作業に派遣従事させていた。元請人Yの鉄道保守作業は、昼夜二作業に別れ、昼間作業は午前八時二〇分ころ宿舎を出発し、午前九時ころから午後二時三〇分ころまで作業に従事し、夜間作業は午...
《解 説》
一 Aは腹痛でY病院に入院し、胃潰瘍との診断を受け、手術をしないまま退院したが、再び腹部に痛みを感じて入院し、Y病院の非常勤医師であったXから虫垂炎の診断を受け、Xの執刀により手術を受けた。その後、Aは退院したが、ウイルス性肝炎に罹患していることが判明し、三たびY病院に入院した...
《解 説》
一 交通事故等の被害者の逸失利益を算定するに当たっては、一般にホフマン方式あるいはライプニッツ方式により中間利息を控除するという方法が取られているが、この場合の利率としては年五分の利率が用いられていることは周知の事実である。本判決は、バブル経済崩壊後の不景気に対して、わが国経済...
《解 説》
一 本件事故は平成二年九月二七日Y運転のトラックがユーターンに失敗して同方向後方を走行中のX運転の普通乗用車に衝突し、頸椎捻挫、腰椎捻挫等々の障害を負わせたもので、Xは休業損害・逸失利益・慰謝料等合計三八七五万九九六〇円の損害額中一二二〇万〇八〇〇円を請求した。
二 Yは損害...
《解 説》
TAEないしTAIとは、肝癌の細胞がその栄養を依存している肝動脈に塞栓物質ないし抗癌剤を注入して特定部位の癌細胞を壊死させる治療法である。具体的手技としては、セルディンガー法により大腿動脈からカテーテルを挿入した上、選択的血管造影により腫瘍浸潤の程度、腫瘍の部位・大きさ、転移の...
《解 説》
本件は、X(妻)がY(夫)に対し、離婚とこれに伴う慰謝料及び財産分与の請求をしたのに対して、Yが婚姻破綻の原因及び夫婦共同財産形成の経緯ないしこれに対する当事者の寄与について争うとともに、仮定抗弁として、YのXに対する不当利得返還請求権や慰謝料請求権等を自働債権、Xの請求してい...
《解 説》
本件は、X及びYを含む亡Aの相続人らが、Aの遺産に関して遺産分割協議の上、遺産分割調停事件において調停が成立するに至ったが、右X及びYらは、右調停を前提とする相続税の申告にあたり、右調停によって各自が取得ないし負担した遺産の項目を調整し、実際にはXが負担した債務についてXの申告...
《解 説》
一 本件は、抵当権の実行による競売によって不動産を買受けた申立人からの引渡命令が認められたので、相手方である占有者が、建物について差押前からの短期賃借人から転借していたと主張し、執行抗告を申立てた事案である。
本件の買受人取得の建物は三件(工場二、事務所一)であって、工場の一...
《解 説》
本判決は、強姦致死、殺人被告事件(原審認定罪名は、強姦、殺人)の控訴審判決である。
事案の概要は、当時一八歳の被害者が、昭和五六年六月二七日午後一一時四〇分ころから翌二八日午前零時三〇分ころまでの間に、当時居住していた大分市内のアパートの二〇三号室において、何者かによって強姦...
《解 説》
一 本件は、強制競売の目的物である建物に借地権が存在することを前提として建物の評価及び最低売却価額の決定がされ、売却が実施されたことが明らかであるにもかかわらず、実際には建物の買受人が代金を納付した時点において借地権が存在しなかった場合に、建物の買受人が、買受けの目的を達するこ...
《解 説》
一 X1は、平成三年一一月、栃木県藤岡町内で、X2の所有する建物を賃借してパチンコ店「モナミ」を改装し、「パチンコ七福」を新装開店したところ、暴力団甲野組(組長Y1)の組員Y2から「みかじめ料」を要求されたので数回その要求に応じて支払いをしてきたが、平成四年春頃、Y2の「みかじ...