最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、教祖等が松本サリン事件・地下鉄サリン事件などの一連の事件を引き起こしたとして起訴されているオウム真理教について、検察官及び東京都知事が宗教法人としての解散命令を請求し、広く世間の注目を集めていた事件についての第一審決定である。
事案の経過・概要は、新聞・テレビ等で...
《解 説》
一 本判決は、野村證券の株主が、平成二年三月に行われた野村證券の東京放送に対する損失補填につき、野村證券の当時の代表取締役一四名に対し、商法二六六条一項五号による取締役の会社に対する責任を追及した株主代表訴訟の控訴審判決である。本件については社会的関心も大きく、東京地裁が平成五...
《解 説》
一 事故の発生等
Xら夫婦の子A(昭和五一年一月二〇日生まれの男児)は、同年四月一三日(生後八三日目)に国立大学医学部附属病院構内に所在する保育所でうつぶせ寝により睡眠中、仮死状態で発見され、医師の手当てを受けたが、無酸素性脳症による後遺症を残し、同五二年四月一五日、窒息死し...
《解 説》
一 本判決は、要役地共有の場合の地役権設定登記は共有物の保存行為に当たり、右設定登記手続請求訴訟は固有必要的共同訴訟に当たらないと判断したものである。
要役地共有の場合の地役権設定登記が保存行為に当たるか、地役権設定登記手続請求訴訟が固有必要的共同訴訟か否かについては、今まで...
《解 説》
一 本判決は、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法という)に基づく退去強制手続によりタイ国へ強制送還された者の検察官に対する供述調書の証拠能力が争われた事案についての最高裁判決である。
本事案は、売春クラブの経営者AとマネージャーB及びCが共謀の上、タイ人女性一四名、日本人...
《解 説》
本件は、大阪府が茨木市に建設計画中の安威川ダムの地質調査資料の公開を求めた大阪府の住民が、部分公開(一部非公開)決定を不服として、非公開部分の取消しを求めた訴訟である。一審判決は請求棄却としたのに対し、本判決は非公開決定を取り消したものであり、当時、住民側逆転勝訴などとして、大...
《解 説》
一 本件は、予防接種とその後の症状との因果関係が争われた事例である。
原告X1は、小学六年生であった昭和五八年一一月、二度にわたってインフルエンザの予防接種を受けた。Xはそれまで順調に成育していたのが、同月下旬頃から、目をかっと見開くようになる、表情が乏しくなる、前傾姿勢にな...
《解 説》
一 原告らは、大阪市及びその周辺でタクシー事業を営んでいるものであり、消費税施行後も運賃を改定していなかったが、消費税が施行されてから二年を経過した平成三年三月になって、消費税(タクシー運賃の三パーセント相当額)を顧客に転嫁するため、消費税相当分の運賃の値上げをすることにし、同...
《解 説》
一 本件の経過は、次のとおりである。
平成四年七月三日 被告が債務者(国税滞納者)の所有にかかる本件不動産について競売の申立て
同年七月六日 競売手続開始決定
同年九月一六日 原告(高崎税務署長)が本件交付要求書を提出
平成五年一〇月四日 本件不動産の売却
...
《解 説》
一 本件は、Ⅰ市の市長を含む幹部職員とⅠ市内の町内会長・副会長との温泉地の旅館における懇談会・懇親会に支出した費用について、市長、助役、収入役に連帯しての損害賠償責任を認めた住民訴訟である。
二 本判決は、①本件懇談会・懇親会(以下「本件懇談会」という)は、Ⅰ市の広報、広聴活...
《解 説》
X町において、Y2は元町長で水道事業管理者、Y1は収入役の各地位にあった者であるが、そのころ部下で出納室長をしていたAが町の公金及び水道事業会計の金員を着服横領した。Y2の後任の町長は、Aの責任割合を七割、Y1の責任割合を三割としてY1に三億四三七二万円余、水道事業管理者たるY...
《解 説》
一 本件は、長崎地判昭62・11・27本誌六六七号一一五頁の控訴審判決である。事案を要約すると次のとおりである。XらはY長崎造船所の造船現場部門及び機械現場部門に所属するYの従業員であった。Y長崎造船所の従業規則では、①一日の労働時間は八時間(始業時刻午前八時、終業時刻午後五時...
《解 説》
亡Aの子として、長男Y1、長女B、次女Y2、三女Cがいるが、弁護士であるXは、CからAに対する訴訟(Cの敗訴後、控訴審で訴えが取り下げられた)、BからAに対する訴訟(後にYらが承継した。一審、二審ともBは敗訴した)、CからYらに対する訴訟(Cが一審では勝訴、二審では敗訴した)に...
《解 説》
一 Xは、平成三年五月、Yの経営する「永野ゴルフ倶楽部」の平日会員となる旨の会員契約を締結したうえ、Yに対し入会金一五〇万円、預託金六〇〇万円を支払ったが、Yが、オープン後、休業日を金曜日から火曜日に変更したことが会員契約上の債務不履行に該当すると主張し、会員契約を解除したうえ...
《解 説》
一 本件は、いわゆる消費者金融業者が貸付残元金と利息制限法所定利率による遅延損害金を請求したところ、これに対し、被告は、右貸付は貸金業の規制等に関する法律(以下、「貸金業法」という。)に定める過剰貸付禁止条項に違反して無効であり、また、かかる請求は多重債務者を拡大再生産しておき...
《解 説》
一 Xは、平成二年五月、「三越デパート」において、「古美術・茶道具の展示即売会」を開催したが、Yは、その発行する「週刊文春」(平成二年六月七日号)において、「Xが六〇〇万円で売る『茶杓』不昧公愛用の真贋」との見出しで、その展示即売する茶杓に真贋の疑惑があり、それについてのXの態...
《解 説》
一 Xは、大手商社系列のスーパーマーケットの専務取締役で、昭和六一年暮にY証券会社に取引口座を開設して以来、多数回にわたって株式やワラントの売買を行なっていたが、購入したN社の株式が平成二年五月頃には半値近くまで下落して約七六〇万円程度の損失を生じていたため、Yの支店の担当者で...
《解 説》
一 Xは、大正一三年生まれの男性で、昭和五七年ころから証券取引等で生活資金を得ていた者であるが、平成元年九月から同年一一月にかけて、Y1証券会社を通じて、三種類の株式投資信託の受益証券を順次購入し、右代金合計一億六二〇〇万円をY1に対し支払ったところ、右各受益証券の価額は、本件...
《解 説》
Xら二四五名は、N抵当証券の発行する抵当証券を購入した者であるが、本件抵当証券には、同社からA社(代表者Y)に対して証券発行後に融資したこと、A社から利息や手数料の入金はなく、証書販売代金のみがN抵当証券の唯一の収入であり、いずれ破綻することが当初から予測できたこと、不動産の鑑...
《解 説》
一 Xらの被相続人Aは、昭和六三年七月二一日午後一時四〇分ころ、マムシに右手甲を噛まれ、同日午後一時五八分ころ、Y病院に搬入された。Aは直ちにセファランチンを投与され、入院して経過観察を受けていたが、同日午後五時四五分ころ、担当医師Bは、Aの病状が重症化すると判断し、マムシ抗毒...
《解 説》
一 本件は、妊娠中の悪阻に対する治療の不手際が脳障害を招いた事例である。
主婦X1は、三四歳であった昭和六二年当時、妊娠中の悪阻が悪化し、Y医院に通院、後に入院して治療を受けていたが、殆ど食事を摂取できない状態が継続するうちに脳障害を発症した。その後、大学病院に転送されたもの...
《解 説》
一 本件は、歯科医師における医療過誤事件であり、事案の概要は、以下のとおりである。二〇年来の喘息患者であったAは、過去一〇回近く意識障害を伴うほどの喘息発作を起こし、また、ピリン系の薬剤に対するアレルギーがあったため、被告Yの歯科治療を受診する前に、予診録に喘息の既往症がある旨...
《解 説》
一 Xらの兄Aは、病的な飲酒癖を有し、かつ、肝硬変、糖尿病等の慢性疾患を有するところ、数日間病的に飲酒し続けた結果、吐き気と腹痛を訴えYが開設し院長を務めるO病院において受診し、急性アルコール中毒との診断のもとに入院治療を受けたが死亡した。Aの相続人である母B(同女は、訴訟継続...
《解 説》
一 X1は、昭和六〇年七月当時、埼玉県立本庄高校二年に在学していたが、同月二〇日、同校体育館で行われた体操部の練習に参加し、トランポリンの練習をしていたが、前方二回宙返りに失敗して重傷を負った。
そこで、X1とその両親X2、X3は、体操部の顧問教諭の指導監督に過失があったなど...
《解 説》
一 Y1及びY2の各取締役を兼ねるAは、Y1名義の約束手形を振り出し、これにY2名義の裏書をして第三者に交付し、その後これをXが取得するに至った。Xは、Yらに対し、主位的に手形金請求をするとともに、仮に、Aに本件手形の振出及び裏書の代理権がなかったとしても、AはYらの当時の代表...
《解 説》
本件は、精神分裂病の患者として入院中の者が外出し、投身自殺したことについて、当該病院を開設している原告が、患者の遺族に対して病院側の過失を認め、一〇〇〇万円余の金額を損害賠償として支払ったが、日本医師会医師賠償責任保険(「本件保険」という。)に基づく保険金の支払がされなかったこ...
《解 説》
一 本件は、商品の形態が、特定の企業の商品であることを示す周知な商品表示となったことを根拠とする不正競争防止法による差止請求事件である。
二 チョコレートの製造販売を営むXは、販売するバレンタインデー向けの別紙物件目録一記載のチョコレートについて、そのバラの花の形態が、Xの商...
《解 説》
一 本件は、平成元年三月末日に締結した転貸目的の建物の賃貸借契約において、期間を一二年とし、三年毎に、経済情勢の変動を考慮して協議の上賃料の見直しを行うが、その際には、いかなる場合でも、改訂後の賃料を改訂前の賃料の一定割合増とする旨合意した(以下、「本件特約」という)として、原...
《解 説》
民事執行法六三条は競売物件の最低売却価額で、手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権を弁済して剰余を生ずる見込みのないときは、執行裁判所において、差押債権者に対し、いわゆる無剰余通知をするものとし、この通知を受けた差押債権者が、通知を受けた日から一週間以内に、剰余を生ずる見込...
《解 説》
一 本件は、根抵当権に基づく土地の競売手続において、債務者兼土地所有者から建物建築を請け負って土地上に建築工事を開始した建築業者が敷地について商事留置権(商法五二一条)を主張し、執行裁判所が、その成立を前提に、買受人に引き受けになる留置権の金額が最低売却価格を上回り剰余を生じる...
《解 説》
一 被告人は、種類の異なる二丁のけん銃をそれぞれの拳銃に適合する実包とともに同一室内に保管して所持していた。これが平成五年法律第六六号によって新設された銃砲刀剣類所持等取締法(以下、「銃刀法」という)三一条の二第二項のけん銃の加重所持罪に該当することは明らかである。そして、第一...
《解 説》
本決定は、死刑確定事件(被告事件名は、強盗殺人、同未遂、放火)に関する再審請求(第五次)棄却決定に対する即時抗告の決定である(結論は棄却)。
右確定事件の事案の概要は、請求人は、共犯者と共謀の上、かつて勤務していたマルヨ無線株式会社川端店に押し入り、宿直員二名の頭部を小型ハン...
《解 説》
一 近時、日本語に通じない外国人の刑事事件が急増するに伴い、捜査段階あるいは公判における通訳の適正が争われる事例が多くなっている。特に、問題は母国語ないし日常使用している言語がいわゆる少数言語の場合で、その場合に関する判例もこれまでいくつか紹介されている(東京高判昭35・12・...