最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 本件は、診療契約上の債務不履行を理由に損害賠償を求める未熟児網膜症に関する医療過誤訴訟である。一審以来の主要な争点は、昭和四九年一二月に未熟児として生まれたXがYの設営する甲病院の診療を受けた当時、Xに対し定期的眼底検査及び光凝固法を実施すること、あるいはこれらのために転医...
《解 説》
Y1は小説家であり、小説「名もなき道を」を新聞七紙に連載した後、出版社Y2に単行本の出版を許諾し、既に第八刷を重ねた。本件小説は、大学を卒業後、司法試験を二〇回受けて変死した主人公Aとその恩師らとのかかわりを書いたものであるが、Xら夫婦は本件小説にAの妹夫婦として描かれた人物の...
《解 説》
宮崎県における青少年の健全な育成に関する条例においては、青少年の性的感情を刺激し、その健全な成長を阻害するおそれのあるものを県知事が有害な図書類(フロッピーディスクを含む)に指定し、指定された図書類の販売等については罰金刑を定めている。県知事Yは、平成四年七月一七日、Xの製造・...
《解 説》
一 本件は、被告が原告に対し、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴対法」という。)三条に基づき、暴力団指定の処分をしたことに対し、原告から右処分の取消しを求めた事案である。
二 暴対法は、同法一条に規定するように、「暴力団員の行う暴力的要求行為等について必要...
《解 説》
一 事案の概要
Xは別訴の書証として提出するとの理由でYに対し、Aの本籍と続柄を省略しない住民票の写し、戸籍謄本、戸籍の附票の写しの交付請求をした。甲市市長であるY1は、住民票についてはAの住所、氏名、年令及び性別のみを記載した写ししか交付できないとして拒否し、戸籍謄本、戸籍...
《解 説》
一 Xは、境港において水面貯木場における水面倉庫業を営む株式会社であるが、Xの水面貯木場に保管する原木に限り、原木を積載した船舶から卸下された原木の「いかだを組んでする木材の運送及び水面貯木場への搬入(いかだ運送事業)」を自ら行うことについての免許を求めた。
これに対して、Y...
《解 説》
近年、個人情報保護条例や情報公開条例に定められた自己情報開示請求権に基づき、調査書や指導要録等の教育情報の開示を求める事例が増えてきている(このような開示請求に応じる地方自治体も現れてきている。指導要録については、平成四年六月に箕面市で全部開示が行われた例があり、平成五年二月に...
《解 説》
一 本件は、別件の被告訴訟代理人であったXが、Y(国)に対し、裁判官Aの裁判の違法を理由に損害賠償を求めた事案である。
弁護士Xは、建物等の売主Bから買主Cに対して提起された別件売買代金請求訴訟につき、別件被告Cから、第一回口頭弁論期日の二日前に訴訟の委任を受けたが、第一回期...
《解 説》
XらはK市(市長Y1)の住民であるが、K市が第三セクターであるY2社から球技場等の体育施設を代金六億五四〇〇万円で買い受ける契約を締結したところ、右契約の対象物である球技場等及び造成地(土地の上層)は第三者(B財産区及びY2)所有土地の定着物ないし構成部分であって、土地と別個に...
《解 説》
一 事案の概要
本件は、原告が住民監査請求をしたところ、監査委員から却下されたため、監査委員を被告として住民監査請求却下処分の取消を求めた抗告訴訟である。
1 原告は、市長がした公金の支出が違法又は不当であるとして、地自二四二条に基づいて住民監査請求をした。
2 これ...
《解 説》
Xの夫Aは昭和三六年七月にT市の事務吏員に採用され、同五八年六月から同市の清掃工場業務係長として現業に携わっていたが、同六一年一月に清掃工場での勤務に加え、勤務時間外に法制執務研修に参加した。Aは同月一二日夜に帰宅し、翌日の研修に備えて予習をしていたところ、頭部に激痛を感じ、足...
《解 説》
個人で芸能プロダクションを経営するXは、歌手志願のY女との間で平成二年四月、期間を一〇年間とし(但し、Y側では一年契約と主張する)、出演料を一か月二〇万円とする芸能関係契約を締結した。Yが所定の出演を何回かしなかったため、Xは同三年五月に契約解除の意思表示をし、Yに対し、その育...
《解 説》
一 Xは、昭和六二年五月、Yが経営管理するゴルフ場「東都飯能カントリー倶楽部」の第一次個人正会員の募集に応じ、ゴルフ場会員契約を締結し、平成三年八月までの間に、入会金三〇〇万円、預託金一九〇〇万円を支払った。
そして、Yは、右契約を締結するに際し、Xに対し、①ゴルフ場は昭和六...
《解 説》
一 Xの夫Aは、昭和四四年ころから、Yに対し、東京都世田谷区所在の木造二階建店舗共同住宅の一階部分を賃貸してきたが、平成四年八月、右建物から出火した結果、柱、天井、根太、壁面などが炭化、焼損し、柱二本を残して全焼の状態となった。
そこで、Aの相続人であるXは、右建物は火災によ...
《解 説》
Xは家事手伝いをしていたAとその夫Bの名義を借用し、Y信託銀行との間で貸付信託契約を締結した。本訴は、XがYに対し、貸付信託の元金及び収益金合計八八四万円余の支払いを求めた事案である。Yは、届出印と照合した上での支払いによりYが免責されるとの約款を引用し、Aらから届出印及び証書...
《解 説》
本件は、民事訴訟における当事者本人尋問の結果(供述)が相手方に対する名誉毀損に当たるか否かが争われた事案である。
Xとその妻Aは、第一子が死産となったのは、助産婦であるYの責任であるとして損害賠償訴訟を提起した。右訴訟の被告本人尋問においてYは、Xに対し医師の診断を受けるよう...
《解 説》
一 Xは、昭和五六年五月、Yとの間で、本件建物(鉄骨造三階建共同住宅)の設計施工につき、請負代金を三五六五万円とする建築工事請負契約を締結し、同年一〇月、右工事を完成して、本件建物をYに引き渡した。
しかるに、Xは、Yが、請負代金の残金と火災保険料、登記費用等の立替金を支払わ...
《解 説》
本件は、拘置所に勾留されている刑事被告人である原告が、拘置所の看守に連れ添われ、外部の病院で眼科の治療を受けた際、両手錠・腰縄がむき出しのまま病院の廊下や診察室を歩かされたとして、国家賠償法に基づく損害賠償(慰藉料)を求めた事案である。これに対し、被告は、両手錠が原告の上着の下...
《解 説》
一 訴外Aは、昭和三年生れで丸紅関連会社の代表取締役の地位にあったが、Yの設置する成人医学センターにおける胃部X線検査の結果、高度の食道裂孔ヘルニアと診断され、内視鏡検査を受けるよう指示されたため、昭和六二年一二月、同センターで内視鏡検査を受けることになったが、その際投与された...
《解 説》
一 事案の概要は以下の通りである。
当時三六才の主婦であったAは、旅先で突然頻拍発作を起こし、救急車でY医院に搬入された。Y医師は、発作性心房性頻拍と診断し、抗不整脈剤等を投与したが、Aは夜間に嘔吐物の誤飲により呼吸困難、意識不明に陥り、翌日広島市内の病院に転送されたが、意識...
《解 説》
一 XとY1は共にスポーツ医学関係で名を知られた医師であり、Xは、月刊誌に「三十三歳からのぐうたら健康法」と題する著作(本件著作物)を発表していた。一方、Y1は、出版社であるY2から「あした元気になあれ Dr尾谷のやさしいスポーツ医学」と題する書籍(被告書籍)を刊行した。
本...
《解 説》
Y漁業協同組合においては、平成二年八月三〇日、通常総会において漁業権の一部放棄の特別決議を行い、その直後、緊急動議により漁業補償等の交渉に当たってきた交渉委員を漁業補償金の配分委員とするとの執行部案が提出され、出席正組合員六二名中、執行部役員八名を除き、三一名の賛成多数により可...
《解 説》
一 Xは、証券会社Yに対して、信用取引契約を締結したがYの従業員が説明義務に違反し、違法な取引勧誘行為を行ったほか、無断売買をするなどしてXに損害を与えたと主張して、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟を提起している。本件は、この訴訟において、XがYを相手方として申し...
《解 説》
一 訴外Aは、訴外Bに対して売掛金債権を有していたが、倒産直前の時期に、この債権をYに譲渡した。
Aの債権者であるXは、右の債権譲渡契約が詐害行為に当たるとして、Yに対し、民法四二四条の債権者取消権に基づき、その取消しを求めた。
Yは口頭弁論期日に出頭しなかったが、Yの支配...
《解 説》
Xは、Aに対する不動産仮差押命令を得た後、売買代金の支払を求める訴えを提起した。XとAは訴訟上の和解において、Xが仮差押命令申立事件を取り下げるのと引換えにAがX代理人口座に四〇〇万円を振り込む方法で支払うとの合意をした。右和解においては、Aが仮差押命令申立事件を取り下げるとの...
《解 説》
A社の破産管財人Xは、A社が六階建てビルの一階部分を賃借していたYに対し、未払賃料合計四〇〇万円余の支払を求める訴えを提起した。これに対しYは、Xに対する賃料債務の不存在確認を求め、A社の前主であるZ社に対し保証金の残額一二九〇万円余の支払を求める訴えを提起し、両者が併合審理さ...
《解 説》
一 本件は、被告人が自己の会社から銀行支店に対して行う協力預金の資金をノンバンクからの融資に仰ぐこととし、かつ融資の担保としてノンバンクのため右協力預金につき質権を設定することをノンバンクに約したが、銀行支店職員と共謀の上、右預金に質権を設定する意思等がないのにあるように装って...
《解 説》
本件は、二〇歳時に強盗殺人を犯して無期懲役に処され、一四年九か月間の服役の後仮出獄を許されていた被告人Aが、仮出獄の約二年六か月後に、相被告人Bと共謀して、一人暮らしの老女をドライブに誘い出し、山中で、被害者の後頭部を石で強打して失神させ、ビニール紐でその頚部を緊縛して絞殺し、...
《解 説》
本件は、覚せい剤自己使用の事犯について、尿の採取過程における手続の違法性及び尿の鑑定書の証拠能力が争われ、一審(原判決)と二審(本判決)の判断が分かれた一事例である。
本件事実関係の詳細は判文によられたいが、概略すると、職務質問から警察署への任意同行、同署への留め置き、尿の任...