最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 事案の概要
本件は、決定文のとおり、刑訴法二八九条一項にいわゆる必要的弁護事件である。被告人は、差戻し前の一次一審途中から、公判期日への不出頭を重ねながら、裁判官忌避申立て等を繰り返し、国選弁護人には、公判期日への不出頭を要求し、裁判所にもその解任を要求するなどした結果、...
《解 説》
一 本件は、平成五年六月二七日に施行された東京都議会議員選挙(以下「本件選挙という。)に関し提起された、議員定数配分規定の違法を理由する公職選挙法(以下「公選法」という。)二〇三条に基づく選挙無効訴訟(いわゆる定数訴訟)である。
本件選挙当時、東京都議会議員の定数並びに選挙区...
《解 説》
一 恩給権者である元公務員が死亡した際、同人と内縁関係にあり生計を共にしていた女性が、恩給法七二条一項にいう「遺族」に当たるとして、同法七三条に基づき扶助料を請求したところ、被告岡山県知事から請求を却下されたため、右却下処分の取消しを求めた事案である。被告は、右元公務員には別に...
《解 説》
一 本件は、開発行為に関係がある公共施設(以下「関係公共施設」という。)の管理者が都市計画法(以下「法」という。)三二条所定の同意を拒否する行為の処分性が争われた事案であり、第一審判決は右処分性を否定し、原判決はこれを肯定していたところ、本判決は原判決を破棄し、第一審判決を維持...
《解 説》
一 上告人会社には、もともとその従業員によって組織された単一の労働組合甲が存在したが、同組合の内部抗争の結果、共に甲組合を名乗り、従前の組合との同一性を主張する乙組合と丙組合及びそれぞれの支部が併存するに至った。上告人会社は、右併存状態を認識しながら、丙組合が従前の組合と同一性...
《解 説》
一 本件は労働委員会の救済命令の取消訴訟であるが、労働組合の支部が組合員が一人もいなくなったことなどにより自然消滅した場合に、その支部に対して金員を支払うことを命じていた救済命令の拘束力がなお存続するかどうかが争点となった。
一審(札幌地判平2・12・25本誌七三六号二二四頁...
《解 説》
一 Xは、Sに対する貸金債権の回収が滞ったため、連帯保証人であるAの所有物件につき強制競売の申立てをした。Y信用組合も、Sに対して貸金債権を有し、右Aの被相続人(父)から右物件につきSのために信用組合取引による債権等を被担保債権とする根抵当権の設定を受けていたため、債権届出をし...
《解 説》
一 本件建物の賃貸人である反訴原告(本訴被告)は、敷地の使用借権を有していたが、建物の賃借人である反訴被告(本訴原告)側の失火により建物が全焼し、建物及び敷地の使用借権を喪失した(判文参照)。
本件建物は本件火災後一〇年程度は存続したものと推定される。賃貸人は火災保険金一三五...
《解 説》
一 本件は、遺言により法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人が、遺産を構成する特定不動産に法定相続分に応じた共同相続登記がされたことを利用して、右登記に係る自己の共有持分権を第三者に譲渡し、第三者が右持分の移転登記を受けた場合に、右第三者が取得する持分の割合は指定...
《解 説》
一 本件では、使用者側が提起した救済命令取消訴訟において、労働組合が労働委員会側に補助参加の申立てをしたところ、使用者から異議が述べられ、第一審は、終局判決の主文において、右参加の申立てを却下するものとした。これに対し、右組合が即時抗告をしたところ、原審は、これを控訴として扱い...
《解 説》
一 宮崎県、宮崎市及び民間企業数社は、宮崎市郊外の日向灘沿いにある広大な海岸地帯に大規模リゾート公園施設「シーガイア」を建設することを目的として第三セクター方式で観光開発会社を設立した。シーガイア建設予定地一帯は国有地であり、潮害防備保安林に指定されていたため、右観光開発会社は...
《解 説》
本件は、建物の所有者が、鉱業権者の掘採の影響で建物に損傷を被ったとして、石炭鉱害賠償等臨時措置法一一条の二に基づき鉱害賠償請求権の存在の確認の申請をしたところ、その旨の裁定がされたので、右鉱業権者が、右鉱害賠償債務の不存在確認を訴求した事件である。
原審(福岡地判平3・5・2...
《解 説》
一 本件は、T警察署の任意同行の求めに応じて早朝から警察官の取調べを受けていた被疑者Aの弁護人となろうとする弁護士Xが、正午頃T署を訪れ、Aとの面会を求めたのに対し、Xと応対した警察官Bは、T署から車で一〇分以上かかる派出所でAを取り調べていた警察官CにXからの右面会申し出の事...
《解 説》
Xは、和菓子等の製造販売業を営み、青色申告の承認を受けていたが、昭和六〇年分以後、右承認を取り消すとの処分を受け、同年から同六二年分までの所得に関して推計課税による更正処分及び過少申告加算税賦課決定を受けたので、右各処分・決定の取消しを求めて出訴した。Yの青色申告承認取消しの理...
《解 説》
本件は、じん肺患者の自殺について業務起因性を肯定した表記大分地裁判決の控訴審判決である。本判決は、被控訴人(原告)の請求を認容した原判決を取り消して被控訴人の請求を棄却しているが、本判決と原判決とで認定された事実は全く同一であり、両判決で結論を異にしたのは、事実に対する評価と法...
《解 説》
本件は、控訴人である債権者が申し立てた不動産仮差押申請に基づいて発せられた仮差押命令が執行され、目的不動産にその旨の登記がされた後一〇年以上を経過した時点で、債務者から被保全権利の時効消滅を理由として、事情変更による仮差押命令の取消しを求める仮差押異議が申し立てられ、原審がこれ...
《解 説》
一 原告Xはクリーニング業を営む者であり、被告Yはクリーニング業の加盟店を募集して共通のサービスマーク・標語等を用いて統一的な方法で宣伝、指導、援助等を行い事業の全国的展開を図っている事業本部(フランチャイザー)である。原告Xは、昭和六一年一一月ころYとの間で、入会金二〇〇万円...
《解 説》
Xは亡父Aが甲地・乙地を所有しており、丙地をY2から買い受けたところ(右三筆はいずれも農地)、右各土地にはBのため条件付所有権移転仮登記及び抵当権設定登記があり、その後Y1に移転付記登記が経由されたとして、Y1に対し右各登記の抹消登記手続を求め、Y2に対し丙地につき農地法三条に...
《解 説》
一 事案の概要は、判決の「事案の概要」欄記載のとおりであるが、これを要約すると、次のとおりである。Xら一〇名(以下、単にXと略称する)は、別紙図面の五一二番三、同番七の宅地、(以下、X土地という)を共有している。Yら二名(以下、単にYと略称する)は、別紙図面の五一三番の三の宅地...
《解 説》
XはYが建築基準法四二条二項の道路(同法三章の規定が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したもの)に鉄パイプ製車止めや植木箱を置いてXの通行を妨害していると主張し、妨害物の撤去、通行妨害の差止め、建築工事遅延による損害賠償、Y...
《解 説》
一 Xは、平成元年七月、Yに対し、所有土地約二〇〇平方メートルを駐車場用地として賃貸していたが、平成二年九月、右賃貸借契約が終了したのにかかわらず、Yがその明渡しを拒否したため、土地明渡断行の仮処分命令を得て執行したが、その際執行補助のための要員、機械確保の費用を支出したため、...
《解 説》
Xは自然食品の販売等をする会社であるが、Y放送局の関連企業で広告代理業を営むAとの間でテレビのスポットコマーシャルの放映委託契約を結び、Yに一五秒のスポットコマーシャルを一か月六本の割合で放映させていた。Xは、XとA、AとY間の契約は無期限であるところ、Yは「原発バイバイ」との...
《解 説》
一 X1は、平成三年一二月一八日、Yの経営するガソリンスタンドにおいて、灯油と誤ってガソリンを買求め、自宅まで運搬されてきたガソリンを石油ストーブに給油して点火したが、給油されたガソリンがタンクの内圧の上昇によりオーバーフローして引火し、絨毯に燃え移って自宅マンションの内部を焼...
《解 説》
一 鉄鋼関係の下請会社を経営するXは、知人に紹介された証券会社Yの外務員Aを介して昭和六三年秋頃から株式取引を始めたが、概ね数百万円最大で四〇〇〇万円の現物株式投資を一〇回ほど繰り返した後の平成元年四月、Aから株式会社神戸製鋼所発行の新株引受権証券(ワラント)時価約三五〇〇万円...
《解 説》
一 昭和六二年にロサンゼルスで大手商社の元ロサンゼルス支店長Aが行方不明となり、翌年、遺体で発見された事件に関し、Aの妻であるXがロサンゼルス市警にA殺害容疑で逮捕されたが、Yらマスコミ各社は、その発行する週刊誌等において右事件を報道した。しかし、結局、Xは釈放され、刑事訴追も...
《解 説》
一 本件の概要は次のとおりである。
XマンションのX管理組合(甲事件原告乙事件被告)は、隣接地所有者Y1(乙事件原告甲事件被告)が当初した説明及びX管理組合に差し入れた説明書の尚書きの記載等から、X管理組合とY1との間には、隣接地上には高層建築物を造らない旨の合意(現状保持の...
《解 説》
一 本件は、交通事故に遭った原告が、その加害者である被告に対し、自賠法三条に基づき、交通事故後に発症した顔面神経麻痺は交通事故と相当因果関係のある傷害であるとして、これに起因して就労できなかった期間の休業損害及び後遺障害による逸失利益等の損害賠償を求めたという事案である。
二...
《解 説》
Xらは、Y4県Y3市で製材業を営むY2社(代表者Y1)の製材工場の隣地に居住する者であるところ、Y2社が昭和四八年に工場を増築して以来、工場騒音が受忍限度を超え、そのためX2の夫でX1らの父であるAの病気を再発させて死亡するに至らせ、また、Xら自身も精神的、肉体的苦痛を味わった...
《解 説》
Aは、昭和六二年一月二七日、上腹部痛を訴えてY医師を受診し、血液検査を受けた結果、同月二九日、肝炎ないし慢性肝炎であるとの診断を受け、その後、Yの診断を断続的に受けた。Aは、平成元年五月二三日、激しく吐血し、救急車で他の病院に搬入され、肝硬変・食道静脈瘤の病名で入院し、同三年一...
《解 説》
一 本件は、昭和二三年五月五日、朝鮮人男と日本人女との間に出生した子(控訴人)につき、同年六月一七日、右朝鮮人男による出生届がなされた事案である。
同日、右朝鮮人男と日本人女の婚姻届もなされたが、後に右届出にかかる婚姻につき婚姻無効確認判決が確定したから、控訴人は、日本人母の...
《解 説》
X女とY男は昭和四四年一月に婚姻し、両名間に一男三女が生まれたが、同六三年一〇月に家庭裁判所の調停により離婚した。右調停において、長女、長男の親権者はYとするが、長女が成年に達するまで及び長男が高校を卒業するまで右二名の監護はXが行い、二女、三女の親権及び監護はXが行うこと、養...
《解 説》
本件は、債権者が商法二九三条ノ六の株主の帳簿閲覧等請求権を被保全権利として債務者の会計の帳簿及び書類の閲覧及び謄写を求めた仮処分命令申立事件であり、債権者が債務者会社の代表取締役であった経歴を有し、かつ、未だ営業を行っていないものの、帳簿閲覧等を請求する約九か月前に債務者会社の...
《解 説》
一 本件は、シナリオライターである原告が、被告会社が企画制作し、放映したテレビドラマ「四月四日に生まれて」の脚本(被告甲作成)は、「ぼくのスカート」と題する原告脚本(判決によれば、原告脚本は、昭和六三年度NHK大阪放送局ラジオドラマ脚本募集の入選作品となり、FMシアター「ぼくの...
《解 説》
本件は、内縁の夫から独身と偽られて同居し、以来約一六年余り同棲を続けている重婚的内縁関係にある妻が内縁の夫の氏への変更を申し立てた事案である。内縁の夫婦の間には、中学生の男児と六才の女児が出生し、また、内縁の夫には正妻との間に、長男、二男が出生している。内縁の妻は、中学生の男児...
《解 説》
一 本件は、民事訴訟の原告であり、当該訴訟において文書送付嘱託の申立をしたXが、嘱託に応じて送付された文書の閲覧を申請したのに対し、担当書記官Sが当該文書の一部について閲覧を拒否する処分(以下「本件処分」という)をしたため、民事訴訟法二〇六条に基づく異議の申立をした事案である。...
《解 説》
本件は、新聞でも報道された蒲田駅前ビルの競売事件である。
バブル崩壊後、不動産競売事件において、土地所有者からビル建築を請け負った業者が、未払請負代金を被担保債権とする留置権を主張する例が少なくない。完成した建物に民事・商事留置権が成立することは比較的問題はないが、建物建築途...
《解 説》
事案の概要は、次のとおりである。和議の申立てがあった事件につき、利害関係を有する申立人が担当書記官に対し、和議事件の記録の謄写を申請したところ、当該書記官が和議開始前の保全処分決定はなされたものの和議開始決定前であることを理由にその申請を拒絶した。そこで、申立人は、書記官の記録...
《解 説》
本件は、大手不動産会社系列のファイナンス会社代表取締役であるBが、自社の不良債権問題を解決するために、仕手筋であるAに対し、利益を出させる目的で資金を提供して特定の株式について人為的に株価を高騰させることを依頼し、ほか数名と共謀の上、東京証券取引所第一部上場の日本ユニシス株につ...
《解 説》
本件では、警察官が被告人方を捜索するに当たり宅急便の配達を装って住居内に立ち入るなどした行為の適否が争われた。すなわち、本件警察官七名は、覚せい剤取締法違反被疑事実につき発付された被告人方の捜索差押許可状を所持し、被告人方に赴いたが、玄関が施錠されていたため、宅急便の配達を装い...
《解 説》
本件の事案は、Yの設置するB高校の三年生であるA(身長一七八センチメートル、体重一〇三キログラム)が、平成元年九月、C教諭の水泳授業中、本件プール(水深が最深部で一・一七メートル、最浅部で一・一三メートル、飛び込み台の高さは水面から〇・三九五メートル)に飛び込んだところ、プール...