最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 事件の概要
本件は、鉱業等を目的とするY社の従業員として伊王島炭鉱等で石炭採掘等の業務に従事していた労働者二二名がじん肺に罹患したことにつき、右労働者又はその相続人であるXら合計三二名からYに対し、安全配慮義務違反を理由に包括一律請求として労働者一名当たり三三〇〇万円の損...
《解 説》
一 本件訴訟の経過
1 大型の台風一七号の影響により昭和五一年九月七日から降り始めた長時間の豪雨のため、昭和五一年九月一二日午前一〇時二八分頃、長良川の河口から上流三三・八キロメートル付近の本件堤防が長さ約八〇メートルにわたって決壊し、岐阜県安八郡の安八町と墨俣町で、床上浸水...
《解 説》
一 商法二六七条五項、六項、同法一〇六条二項は、株主代表訴訟において、原告の訴えの提起が「悪意ニ出タルモノ」であることを被告が疎明したときは、裁判所は担保の提供を命ずることができる旨を規定するが、①②決定は、この担保提供命令申立事件に関し、被告の主張を一部認めて担保提供を命じた...
《解 説》
一 事案の概要等
Xは、共同相続した本件不動産を、いわゆる代償分割により、他の共同相続人に合計三〇〇万円を支払って単独取得したが、その後、本件不動産の一部を売却し、その際、右代償金(そのうち売却部分に相当する額。以下「本件代償金」という。)とその支払のために銀行から借り入れた...
《解 説》
一 農地(二筆)の時効取得の成否が争われた事案。すなわち、本件土地は原告の父Aが被告の先代Bから戦前より小作し、昭和二二年一二月三〇日受付でBから被告の弟Cへ(登記原因は昭和一八年三月一日贈与)、昭和五六年九月七日受付でCから被告へ(登記原因は同年八月一日売買)各所有権移転登記...
《解 説》
一 禁治産者の後見人がその就職前に禁治産者の無権代理人によって締結された契約の追認を拒絶することが信義則に反するか否かが争われた事件である。
意思無能力者について、家裁による後見人の選任手続を経ないまま、近親者が事実上法律行為をし、その後右法律行為をめぐって紛争になるという事...
《解 説》
一 原告が、被告は原告の夫Aと不貞関係を持ち、このため原告夫婦の婚姻関係が破綻し離婚するに至ったと主張して、被告に対し慰謝料三〇〇万円を請求した(第一事件)。これに対して被告は、右不貞関係を否認し、原告は被告とAが浮気をしたとの噂を近所の主婦らに振りまき、Aは原告の邪推を否定す...
《解 説》
一 本件は、父甲が所有し、友人丙が運転する自動車に同乗中に死亡した子乙の母である原告が、保険会社である被告に対し、自賠法一六条一項に基づき損害賠償額(限度額二五〇〇万円)の支払を請求した事案である。被告とは甲との間に自動車損害賠償保険契約を締結していた。
丙は乙と同じ職場に勤...
《解 説》
一 本件は、登記された二個の区分所有建物から成る一棟の甲建物について、滅失の事実がないのにその旨の滅失の登記がされて登記用紙が閉鎖された後、更に別の乙建物として表示の登記及び所有権保存登記がされた場合において、甲建物につき登記を経由していた根抵当権者が、根抵当権に基づく妨害排除...
《解 説》
一 本件は、不動産の二重譲渡事例において、参加の申出が民訴法七一条の要件を満たすか否かが問題となったものである。
甲は、乙に対し、本件土地(一)、(二)につき昭和四二年一二月九日の売買契約に基づく所有権移転登記手続を求める本訴を提起した。一審判決は甲の右請求を認容した。丙は、...
《解 説》
本件は、東京都区内を走っている環状六号線道路を拡幅し、その地下に自動車専用道路と地下鉄を走らせる都市計画事業のうち、道路拡幅事業と自動車専用道路建設事業(以下「地下道路事業」という。)に関し、都市計画法(平成三年法律第三九号による改正前、以下「法」という。)五九条に基づいて建設...
《解 説》
一 食肉輸入会社Xは、フランス料理に使われるバリケンという鳥の冷凍胸肉を輸入した際、税関の指示でバリケンはアヒル類であるとして関税を納めた。当時の関税定率法は、アヒルは家禽として一〇パーセントの関税をかけ、カモは鳥類として無税と規定していた。Xは、右関税の納付後、カモは無税と知...
《解 説》
一 本件は、福山市施行の土地区画整理事業において、福山市が取得した保留地を随意契約により売却したところ、その売却方法、相手方の選択及び売却価格の決定が違法なものであり、これにより福山市は保留地の時価と売却価格との差額に相当する損害を被ったとして、控訴人である福山市の住民らが、地...
《解 説》
YはXに対し、コンベアバックホー試作機一台の製作を代金一四六〇万円で発注し、内金七〇〇万円を支払った。Xは右試作機を完成し、その後もYの指示により改造・改良工事をしたと主張し、Yに対し残代金等九五八万円余の支払を求めた(本訴)。これに対しYは、右試作機の完成及び追加発注の事実を...
《解 説》
一 本判決は、京都地判昭62・12・11本誌六六四号一三四頁、判時一二七九号五五頁の控訴審判決である。原判決は、昭和四九年度厚生省研究班報告が公表された昭和五〇年八月以前に出生した未熟児一二名については医師の責任を否定し、昭和五一年一二月に出生した未熟児一名のみについて医師の責...
《解 説》
本件は、カラオケスナックにおける、いわゆるオーディオカラオケ装置又はレーザーディスクカラオケ装置を使用したカラオケ伴奏による従業員又は客の歌唱行為について、社団法人日本音楽著作権協会が提起した音楽著作物使用料相当損害金(著作権法一一四条二項)請求事件であり、① 右歌唱行為が店の...
《解 説》
Xは、業務用ビデオゲーム機等の製造販売等を業とする株式会社であり、Yは、書籍、雑誌の出版、販売を業とする株式会社である。Xは、ビデオゲーム「パックマン」の著作権者であるところ、Yが日本国内のパソコン通信において容易に入手できるフリーウエアないしシエアウエアのプログラムの中からウ...
《解 説》
Xは本件土地建物を所有していたところ、別居中の妻Y1はXの留守中にX方に入り込み、Xの印鑑登録カードと実印を持ち出し、金融ブローカーのY2(Y1の勤務先A社代表者Bが融資の斡旋を依頼していた)の示唆により所有名義をY1に変更したうえ、Y3信用金庫を抵当権者、A社を債務者とする根...
《解 説》
本件は、自動車事故による業務上過失致死傷被告事件について、訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる注意義務及び過失を認定したことが違法とされた事例である。
本件公訴事実(原審における訴因変更後のもの。以下、「本位的訴因」という。)は、被告人が自車を時速九〇ないし一〇〇キロメート...
《解 説》
本件は、訴訟費用(通訳費用)の負担を命じられた外国人が、検察事務官から右訴訟費用の納付告知書を送付されたので、刑訴法五〇二条の裁判の執行に関する異議を申し立てたものである。裁判所は、右申立ては不適法であるとした上、通訳費用の負担を命じることは、「市民的及び政治的権利に関する国際...
《解 説》
被告人、弁護人、その他の保釈請求権者が、保釈許可の裁判そのものに対して準抗告(抗告)をすることは、申立の利益を欠き不適法であるが、これらの者も保証金額が高過ぎるとしてその変更を求める準抗告(抗告)は適法になしうるのであって、この点に異論はないと思われる(新版令状基本問題〔小林充...