最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 Xら一三名(内三名は死亡し、相続承継があった)はいずれもYの経営する造船所において本工(三名)又は社外工(八名)として勤務していた者であるが、右造船所において振動機具(チッピングハンマー等)を使った作業をしたことにより、いわゆる振動障害に罹患し、精神的損害を被ったと主張し、...
《解 説》
一 本件はNTTのダイヤルQ2サービスに関する訴訟であり、原審においては、加入電話契約者であるXからY1(NTT)及びY2(Q2サービスの情報提供者)の両名に対する情報料債務及びこれに伴う通話料債務の各不存在確認請求(Y2に対しては前者のみの不存在確認請求)及びY1が発信停止措...
《解 説》
一 本判決は、衆議院議員で国務大臣北海道開発庁長官であった被告人が、その在職中に、北海道内においてリゾート総合開発計画を有していた株式会社共和の副社長から、北海道総合開発計画に基づく道路整備事業として事業化が見込まれていた高規格幹線道路の右リゾート開発地周辺の新設予定箇所に関す...
《解 説》
一 Y会社は、訴外A会社に二一二五万円を貸し付け、Aの代表取締役であったXは、これを担保するために、Yとの間にB会社の株式をYに譲渡する旨の譲渡担保契約を締結し、Yに株券を交付した。Xは、Yに対し、被担保債権の弁済を受けるのと引換えに本件株券を返還するよう求めて、本訴を提起した...
《解 説》
一 本件事案の概要
国民金融公庫が恩給受給者甲に対して、「国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律」(恩給担保法)三条一項に基づき、恩給を担保に貸付けをし、同条二項に従って、国からの恩給給与金の払渡しを受けて貸付金の弁済に充当したところ、後になって甲に対する恩給裁定が取り消...
《解 説》
一1 債権者Aは、債務者Bに対し、四二〇〇万円と一億二八〇〇万円の二口の貸付を行い、右各貸金債権(以下、それぞれ「甲債権」「乙債権」という。)の担保のため、B所有の不動産につき抵当権の設定を受けた(以下、それぞれ「甲抵当権」「乙抵当権」という。順位は、甲、乙の順である。)。
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《解 説》
本件の争点は、所有者以外の者の占有する財物を窃取した場合に、刑法二四四条一項が適用されるためには、同項所定の親族関係が窃盗犯人と誰との間になければならないかという問題である。
学説は、三説に分かれている。第一説は、刑法二四四条一項所定の親族関係は、犯人と所有者との間にあれば足...
《解 説》
一 本件は、東京証券取引所第一部上場の大手飼料メーカーである協同飼料株式会社が昭和四七年に行った株価操作事件である。本件当時の同会社の副社長及び経理部長は、時価発行公募により増資を実施するに当たり、当時の被告会社の株価が一株一七〇円から一八〇円程度であったのを二八〇円位まで高騰...
《解 説》
一 本件は、被告人が、一審判決宣告後に控訴を申し立て、更に上訴提起期間経過後に刑訴規則二五四条による跳躍上告を申し立てた事案であり、このような上訴提起期間経過後の跳躍上告申立ての適否が問題となった。
一審が自ら刑訴法三七五条により右跳躍上告申立てを棄却することなく最高裁に記録...
《解 説》
一 本件は、大阪府池田市長が、同市内に存在するすべての私立幼稚園の設置者等をもって組織される権利能力なき社団である池田市私立幼稚園連盟に対し、連盟が行った「幼稚園まつり」の経費の一部にあてるために補助金として六〇万円の公金を支出したことに関し、池田市の住民である原告が、池田市長...
《解 説》
平成四年六月二八日施行のK町議会議員選挙において、Xの得票数は一六八票、訴外小野精二は一六七票を得た。これを受けてK町選挙管理委員会はXを最下位当選者、小野を落選者とした。小野はK町選挙管理委員会に異議の申出をしたが棄却され、更にY選挙管理委員会に審査の申立をしたところ、Y選挙...
《解 説》
本件原告は中国国籍の女性で、在留期間六カ月として上陸許可を受け、勉学のため数回にわたり在留期間の更新を受けて在留中、日本人男性と婚姻し、出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)別表第二の上欄の「日本人の配偶者等」としての在留資格に変更する許可を受け、六カ月の在留期間を許可...
《解 説》
A社はB県知事からゴルフ場の開発を目的とする開発行為の許可を受けたが、その対象区域の一部約一万坪について、けい石等の採掘権を有し、約一〇万坪について耐火粘土の採掘権設定の出願をしたXが都市計画法附則五項、同法五一条に基づき、Y公害等調整委員会(公調委)に裁定の申請をした。公調委...
《解 説》
Xは主として木造建築の吹付塗装工事を営む個人業者である。Yの係官はXの昭和六一年から昭和六三年の各年分の所得税について調査のため、Xに説明及び資料の提示を求めたが協力が得られなかった。そこで、Yは推計による課税処分を行った。本件はその取消訴訟である。
本訴において、Yは、①反...
《解 説》
本件は、区が設置した特別養護老人ホーム(老人福祉法一五条三項、五条の三)につき、その開設に要した費用の使途に疑問があるとして提起された地方自治法二四二条の二第一項の住民訴訟である。区は、この開設準備事務をある社会福祉法人(以下「被告法人」という。)に委託し、委託料は概算払として...
《解 説》
本件は、堺市が元部落共有財産であった潅漑用溜池を公園事業用地とするため買収したのを、住民が右溜池はもともと堺市の所有であり、これを堺市が買受けて公金を支出したのは違法であるとして住民訴訟を提起したものである。本件訴訟においては、住民監査請求と住民訴訟の間に対象の同一性があるか、...
《解 説》
一 Xの夫A(六三歳)は、昭和五二年三月から名古屋市内の矢作電設株式会社に勤務し、取締役開発部長として、溶湯管理機器(3Eメーター等)の新製品開発、販売、市場開拓等の業務に従事していた者であるが、昭和五八年二月一五日から韓国釜山市に出張し、同月一八日夜、釜山市内の料理店「鮮美」...
《解 説》
債務者である四国旅客鉄道労働組合は、四国旅客鉄道株式会社及びその関連事業会社の従業員によって組織された法人格を有する労働組合であり、最高議決機関としての本部大会、これに次ぐ議決機関としての本部委員会及びこれらの決定の執行等を行う本部執行委員会が置かれている。債権者である四国旅客...
《解 説》
一1 本件は、甲がX(原告・被控訴人)農協の組合員であったが既に借入限度額を超えていたので、Y(被告・控訴人)に依頼しY名義でX農協から昭和五二年五月一五〇〇万円を借入れてこれを窓口交付の方式で貸し渡した(名義借による貸付でこの式の貸付はX農協には相当あった)もので、X農協は昭...
《解 説》
Xは昭和四八年に日蓮正宗から本門寺塔頭の坊の住職に任命され、同五一年一〇月一八日、Y1寺の住職にも任命されて、Y1寺の代表役員の地位にあり、同日から同五七年三月ころまで、宗教行事のないときは施錠をして本件建物等を直接所持し、その後、平成二年四月一二日ころまでの間、Aを本件建物に...
《解 説》
一 A市議会議長Bが急死し、喪主となった長男Yは葬儀業者Xとの間で、XがBの葬儀を執り行う旨の葬祭契約を締結し、これに基づきXが葬儀を行ったが、Yが葬儀代金の一部しか支払わなかったので、Xは残代金の支払いを求めて本件訴訟を提起した。Yは、XはBの葬儀の執行につき、十分な打合せを...
《解 説》
X1とY1は、X1をフランチャイザー、Y1をフランチャイジー、Y2、Y3を連帯保証人としてコンビニエンスストアのフランチャイズ加盟店契約を締結し、X1はY1に店舗二か所を他から借りて転貸していた。右加盟店契約においては、Y1が競業他者の経営に関与するなどした場合、X1は無催告で...
《解 説》
本件は、XがY証券会社に対し、その従業員Aの違法な勧誘によって、XがY会社に保護預けしていた自己所有の株式を、Aの信用取引の保証金として利用することを承諾するかわりに、利益金六〇〇万円を支払う旨の契約をしたが、その支払をせず、その期間内に利用させた株式が値下りし六〇〇万円の損害...
《解 説》
X1女・X2男夫婦は、I市において運転代行業を営んでいた者であるところ、Y1が組長、その兄で特別相談役のY2、組員のY3らで組織する暴力団D会I組が代行運転業者の組合の組織化に関与し、右組合に加わろうとしないXらに対し、Y3がX1の顔を切り付ける、組員らが従業員を脅迫する、Xら...
《解 説》
一 Xは、平成二年一二月二三日、近所の子供達とともに、Y1所有のビルの一階から二階に上がるエスカレーターに乗って遊んでいたところ、危険防止のため吊り下げられていたプラスチック製の三角部ガード板が脱落していた結果、右エスカレーターの手すりと天井との間に頭を挾まれ、左顔面左眼付近に...
《解 説》
一 Xは、もと兵庫県警察の警察官であるが、Y1が著わし、Y2が平成元年五月に発行・販売した「警官(ポリス)はこんなに無責任(クレージー)」と題する書籍によって、名誉を毀損されたと主張し、右Y1、Y2と発行人Y3に対し、慰謝料五〇〇万円の支払いと謝罪広告の掲載を求めた事案である。...
《解 説》
Xは平成二年二月当時、七歳の男児であるが、京都市三条通りを友達とともに横断しようとして、Y1が経営し、Y2が運転する電車に右大腿部を轢断される重傷を負った。Xは、Y2らに前方不注視の義務違反があったなどと主張し、Y1に対しては使用者責任により(その他、安全配慮義務違反の主張もあ...
《解 説》
一 本判決は、昭和五三年八月一八日生まれの極小未熟児(在胎週数二九週、生下時体重一一四〇グラム)が未熟児網膜症(本症)に罹患して両眼を失明したため、右未熟児X1及びその両親X2、X3から出生直後に入院した国立病院Yの担当医に義務違反があったとする請求の一部を認容した広島地判平1...
《解 説》
一 訴外Aは、昭和六二年九月頃から、Yの経営する病院に入通院して、高血圧及び糖尿病の治療を受けていたが、昭和六三年三月頃、胃癌の疑いがあるので摘出手術をすることになり、同月一五日、全身麻酔のもとに、胃の摘出手術を受けたが、手術後の状態が思わしくなく、同月二〇日、心肺停止・呼吸不...
《解 説》
Zは、Xと婚姻していたところ(第一回婚姻)、Yと同棲するようになって、Xに無断で協議離婚の届出をし(第一回協議離婚)、その後、Y不知の間にYとの婚姻の届出をした(第二回婚姻)が(Yはこれを追認した。)、その後Yと不仲になり、XにもYにも無断で、Yとの協議離婚の届出(第二回協議離...
《解 説》
X1は亡Aの子(六人兄弟の一人)、X2、X3は代襲相続人であるが、AがX1の弟Yに不動産を遺贈したことから、Xらは遺留分を侵害されたとして、遺留分減殺請求権に基づき、Yに対し、右不動産の遺留分相当の共有持分の移転登記手続を求めて出訴し、一審で勝訴した(なお、Xらは、遺贈に係る不...
《解 説》
一 本件は、遺産である土地建物の所有権の帰属をめぐる共同相続人Xら及びYらの間の紛争である。
本件土地建物については遺産分割等を原因としてYら名義の登記がされているが、Xらは、右遺産分割協議は成立していないと主張してYらに対し真正な登記名義の回復を原因として土地建物の持分の一...
《解 説》
一 Xは、昭和六三年一二月一二日に死亡した訴外Aの長女であるが、Aの長男であるYに対し、Aが昭和六三年六月八日付公正証書でもってしたA所有の本件土地建物をYに相続させる旨の遺言(以下「先行遺言」という。)に基づいてしたYへの所有権移転登記について、Aが昭和六三年七月七日付公正証...
《解 説》
一 本件は、いずれも昭和五九年七月一三日午後〇時一五分ころ、室戸岬沖で沈没したなち丸(総トン数四九九トン)に関する民事又は行政事件である。
二 ①事件は、なち丸を所有していた会社Xが、内航海運組合法一二条により運輸大臣の認可を受けて保有船腹調整規程を定めた日本内航海運組合総連...
《解 説》
一 Xは、ビールの製造、販売等を行う著名な会社であり、欧文字の「Asahi」をデザインした文字標章(原告標章)をその営業表示及び商品表示として使用し、かつ、右文字標章を商標登録(平成三年政令第二九九号による改正前の二八類・指定商品ビール等、同二九類・指定商品清涼飲料等)もしてい...
《解 説》
本件訴訟は建物新築等の工事請負契約に関する請負業者と注文主との間の紛争に係るものであるが、右紛争をめぐる手形金請求の別件において、本件紛争については別紙合意書に基づく調停により精算し解決することを確認することなどを内容とする訴訟上の和解が成立した。別紙合意書は、①本件訴訟を調停...
《解 説》
本件は、譲渡人Xらと譲受人Y間のA会社の株式譲渡につき、株券の交付がないとの理由から譲渡を無効と判断し、Xらの株主権存在確認の請求を認容した確定判決に対し、Yらが、当時A会社は株券を発行しておらず、株券を発行した証拠として提出された書証(株券)は、後日偽造されたもので、本件株式...
《解 説》
一 X(国、市川税務署所管)が提出した交付要求書には滞納所得税本税額は七五万四七〇〇円と記載されており、売却手続が進められた。配当期日が指定され、Xは延滞税を三二〇万六五〇〇円とする滞納現在額計算書を提出したが、計算書記載の延滞税は、交付要求書に記載された本税を元本として発生し...
《解 説》
本件は、債務者及び所有者が売却許可決定に対して提起した執行抗告事件であるが、争点は、競売土地の評価が低きにすぎ、これに基づく最低売却価額の決定に重大な誤りがあるといえるか、という点にある。
評価人は、本件土地の属する地域は中規模の典型的な農家集落であり、その最有効利用も農家敷...
《解 説》
一 ここで紹介する二つの東京高裁判決は、いずれも、傷害罪で被告人を有罪とした原判決を破棄し、正当防衛の成立を認めたものである。
二 まず、①事件の概要は次のとおりである。
1 被告人は、スナックで知人の甥と飲酒中口論となり、互いに立ち上がり、被告人は相手から胸ぐらを掴えられ...
《解 説》
一 本件は、空手初段の資格を有する被告人が、朝の乗降客で混雑している駅構内の喫煙場所以外のホーム上で喫煙していた被害者に対し、回し蹴りを加えて転倒させ、脳挫傷等の傷害を負わせて死亡させたという事案であり、禁煙運動や公共施設における分煙の動きとも絡んで、比較的広く報道されて巷間に...
《解 説》
本件は、夜間に近所の義姉夫婦宅に侵入してセカンドバッグの中から現金を窃取したという事件について無罪が言い渡された事案である。
本件では、捜査段階で被告人が犯行を自白し、その自白に基づき被告人が隠匿していた被害金額と同額の現金が発見されたうえ、被害者の義姉が犯行現場で被告人を目...