最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 昭和四八年法律第八四号による改正前の公有水面埋立法(以下「法」という。)の下では、埋立ての免許を受けずにされた埋立工事(無願埋立て)について、埋立免許権者である地方長官がこれを「追認」するという制度が認められており、この追認が行われると、そのときに埋立ての免許があったものと...
《解 説》
一 民法二一三条二項は、土地の所有者が土地の一部を譲渡し、袋地が生じた場合、袋地のため残余地に対する無償の囲繞地通行権が発生する旨を規定している。右規定の趣旨は、土地の一部の任意譲渡の場合には、通行権の必要性が当然予測され、かつ、袋地については囲繞地通行権による価値の増加が、残...
《解 説》
一 本件は、信号待ちのため停車中の自動車運転者の注意義務に関して、最高裁の職権判断が示された事例である。
事案の概要は、本決定中にも摘示されているが、被告人は、普通乗用自動車の後部座席に妻を同乗させて運転中に、約五〇メートル先の交差点の信号が赤になったため停止していた車の列の...
《解 説》
一 原告は、平成二年二月、岡山大学の入学試験を受けた。その合格者に対しては、同年三月九日に同大学の発信する電子郵便で、その旨通知されることとなっていた。原告は、右電子郵便が同月一三日の入学手続締切期限までに届かなかったため、不合格になったと思い、第二志望の私立大学に入学手続をと...
《解 説》
Xに対して債務を負っていたAは、昭和六一年九月二九日、地方裁判所支部に和議開始を申し立て、翌三〇日、Aに対し債務の弁済と担保提供を禁止するとの保全決定が発令された。しかし、担当裁判官は、その後整理委員の選任を行わず、一年以上経過して申立代理人と連絡をとろうとしたが、連絡がつかな...
《解 説》
一 本件は、横浜市が西武鉄道との間で、JR新横浜駅近くにそれぞれ所有する土地を等価交換したことについて、市民である原告らから、本件交換は普通財産を交換するときは「適正な価格」を交換価格とし、不等価の場合は差額を補足しなければならないという市条例(横浜市公有財産規則・財産の交換、...
《解 説》
一 本件は、被告の上級整備士である原告が、(1)勤務中にシャンパンを飲んだこと、(2)シャンパンを飲んだことを上司に報告せずに勤務を継続したこと、(3)自宅待機命令を無視して就労したこと等がいずれも就業規則所定の解雇事由に該当することを理由に行われた普通解雇処分の効力を争い、地...
《解 説》
サラブレッドの繁殖牝馬Aの所有者であるXは、競走馬の生産・飼育のための牧場主であるYとの間で、YにAを種付けを目的として預託した。Xの主張によれば、Aから産まれる子馬はXYの共有とする合意をしたのに、Yはこれを無断売却し、中央競馬のレースに出走して獲得した繁殖牝馬所有者賞金も着...
《解 説》
本件は、航行中の大型カーフェリー内で、乗客が気管支喘息発作を発症した際、同船の船長らが、最寄りの救急病院と電話連絡を取らず、右乗客を直近の港(松山港)に搬送するための航路変更もせずに予定航路上を航行し、右乗客が発作発症から約三時間後に今治市の病院に搬送された時には既に死亡してい...
《解 説》
一 本件は、昭和五八年一〇月から同六〇年四月までの間にY社からダイヤを購入し、同社との間にダイヤ販売媒介委託契約を締結して、同社のダイヤ販売媒介組織の会員となったXら(原告、被控訴人)一三名が、Y社の右ダイヤ販売商法は違法であるとして、Y社(及びその代表取締役。被告、控訴人)に...
《解 説》
一 Xらは、宗教法人幸福の科学の会員であり、同宗教法人の代表役員である中川隆(通称大川隆法)を信仰の対象とし、同宗教法人に帰依している者であるが、Y(講談社)発行の三種類の雑誌に掲載された幸福の科学及び大川隆法に関する記事が中傷及び捏造の記事であり、右記事によってXら各自の宗教...
《解 説》
そば店を経営するXは、Y2が製造し、Y1が販売した製麺機の清掃作業中に突然カッターが回転し、左手指先部を切断するという事故に遭遇した。そこで、Xが、この事故は、製麺機の構造上の欠陥が原因であると主張して、Y1に対して、主位的に不法行為、予備的に債務不履行(不完全履行)に基づき、...
《解 説》
〈事案の概要〉
昭和六一年三月二四日午後四時一五分ころ、大阪府豊中市にある交差点を直進しようとした普通乗用車が突如進路前方を横断した幼児(四歳)に驚き、ブレーキとアクセルとを踏み間違い、同幼児をはね、同児童は、高位の頚髄損傷のため、呼吸が止り、四肢が動かなくなり、呼吸のための補...
《解 説》
Y1が保有し、Y2の運転する乗用車がセンターラインを超え、X1が運転し、X2が同乗する乗用車と衝突してXらを負傷させた。本件はXらからYらに対し、右交通事故による損害賠償を求めた事案であるが、Xらの負傷の程度が問題となった。特にX2の場合、事故があった平成元年一月一五日から同年...
《解 説》
交差点を右折しようとしたY1の運転する乗用車と対向直進してきたY2の運転する乗用車とが衝突し、その反動でY2車が歩道上にいたAと衝突してAを死亡させた。本件は、Aの相続人であるXからYらに対し、自賠法三条により損害賠償を求めた事案であり、XがAの受給していた厚生年金保険法に基づ...
《解 説》
A女は、昭和五七年九月二日午後一時五〇分ころ、交差点を自転車で横断中、折から左折進行してきたB社の従業員Cの運転する大型トラックに腹部を轢過され、午後二時ころY1協同組合連合会が経営するD病院に救急車により搬入されて、Y2医師らの手当てを受けたが、同日午後一一時四分、大量出血に...
《解 説》
楽団演奏の提供及びキャバレー等の営業等を目的とするA会社(代表取締役Y)は、B会社から本件建物を賃借してキャバレーを経営していたところ、X会社は、A会社からこの店の造作設備を含む営業に関する一切の権利及びYから全株式を買い受けた。ところが、AB間の建物賃貸借契約には賃借権の無断...
《解 説》
Xは、①「MOET et CHANDON」、②「モエ エ シャンドン」、③「DOM PERIGUNON」なる各商標について酒類を指定商品とする商標権を有しており、また、商標①③、これを含むフロント・ラベル及び右ラベルを添付したボトルの形態は、Xの製造販売する最高級シャンパンワイ...
《解 説》
一 X(夫)とY(妻)は、共に中華人民共和国国籍で、中華人民共和国において婚姻の届出をした夫婦であったが、両名は離婚届に署名捺印し、Yがこれを高松市長に対して届出、受理された。
本件は、Xが、右協議離婚は無効である旨を主張して、協議離婚の無効確認を求めたものである。
二 原...
《解 説》
一 本件訴訟は、国が自衛隊をPKO活動に従事させるためカンボジアに派遣したことは違憲であるとして、原告ら五〇名が国を被告として右派遣の差止め、派遣が違憲であることの確認及び慰謝料(一人二万円)の支払いを求めた事案である。
二 原告らは、訴え提起の手数料として八六〇〇円を納付し...
《解 説》
一 本件は、賃貸人の破産後発生した賃料債権につき根抵当権の物上代位による債権差押命令を得た原告が、賃借人たる被告にその支払いを求めたのに対し、被告が、破産法一〇三条一項後段を根拠に、賃貸人に対する敷金返還請求権と相殺したとしてこれを拒否したことから、「賃貸人が破産宣告を受けた場...
《解 説》
本件は、被告人(判決当時九二歳)が、かねてより折り合いの悪かった同居中の次男の妻に嫌がらせを受けたことから激高し、同女の頭を斧で何度も殴りつけて殺害した事案である。
被告人の年齢が量刑上考慮されるべき一つの要素であることは異論のないところであり(刑法草案四八条二項、刑訴二四八...
《解 説》
一 本件は、いわゆる「名張毒ぶどう酒事件」として知られる殺人、同未遂事件に関する第五次再審請求棄却決定に対する異議申立棄却決定である。
昭和三六年三月二八日、三重県名張市内の公民館で開かれた三奈の会(近隣に居住する男女会員で組織されている生活改善グループ)の年次総会後の懇親会...
《解 説》
一 判示事項一について
覚せい剤取締法上の営利目的とは、一般に、犯人自ら財産上の利益を得又は第三者に得させることを動機・目的とする場合をいうと解されている(最一小決昭57・6・28刑集三六巻五号六八一頁、本誌四七三号一四三頁、判時一〇四五号七四頁)。
覚せい剤所持の事案では...