最も長い歴史をもつ判例実務誌
大阪地裁昭和62年1月29日判決(本誌630号156頁)、東京地裁平成4年6月26日判決(金法1333号43頁、金判903号18頁)
《解 説》
本件は、昭和六三年七月二三日、東京湾の出口にある浦賀水道において、海上自衛隊の潜水艦「なだしお」 (排水トン数二二五〇トン)と遊漁船「第一富士丸」(総トン数一五四トン)が衝突し、「第一富士丸」の乗客、乗員中三〇名が死亡し、一七名が負傷したという事件であり、当時の潜水艦の艦長と遊...
《解 説》
一 事件の概要
本件は、厚木基地(米軍と海上自衛隊の共用)から生じる騒音等による被害を理由に周辺の住民Xら一五六名が国Yに対し、飛行機の夜間における離着陸の禁止、六五ホンを超える騒音到達の禁止、過去及び将来にわたる損害の賠償を求めた、いわゆる厚木基地第二次訴訟の第一審判決であ...
《解 説》
一 本件は、国選弁護人を付された被告人が判決宣告後に上訴申立てのため必要であるとして、自ら公判調書の閲覧を請求した事例について、この場合は刑訴法四九条の「被告人に弁護人がないとき」に当たらず、閲覧は認められないとされたものである。
二 事案の経過の概略は、次のとおりである。申...
《解 説》
一 交通事故(傷害事故)の加害者である原告が、被害者に二三八一万円余の損害賠償債務を負担したとして、自動車保険契約に基づき、保険会社である被告に対し、右金員相当の保険金の支払を請求した事案。一、二審とも、本件事故については、原告に確定的故意こそなかったが、傷害の未必の故意があり...
《解 説》
一 本件は、転送電話を用いて行なわれた組織的な覚せい剤密売の事案において、犯罪捜査のため検証許可状に基づき通話者双方に知られずに電話の傍受・録音をしたことが違憲、違法ではないとされた事例である。
二 本件捜査の経緯、電話傍受等に関する検証許可状の発付と電話傍受等の実施、その結...
《解 説》
Xは自動二輪車にAを同乗させて通行中、前方で交通取締りが行われているのを見、ヘルメットを着用していなかったことから、検挙を避けるため、自動二輪車を反転させ、その場から逃走を試みた。付近にいて速度違反の現認に当たっていた警察官Bは、停止合図か護身に用いる目的で椅子を持って道路に出...
《解 説》
Xは昭和五四年一一月、亡父の後妻Aとの間で養子縁組をし、AがY市の区役所に届出をした。当時の民法七九五条によれば、養子縁組は配偶者とともにしなければならないとされていたが、Xには妻Bがいた。区役所の戸籍記載係はXの戸籍の身分事項にAの養子となる旨縁組届出を記載した後、審査担当者...
《解 説》
一 本件は、原告らが市長個人を被告として、被告のした市議会議員の海外出張費の支出につき、その目的地が有名な観光都市ばかりであることなどを理由に、右海外出張は行政事情視察に名を借りた観光旅行であり地方自治法第二〇四条の二に違反し、その費用分の損害が市に生じたとして、住民訴訟による...
《解 説》
一 本件事案は次のとおりである。
X町(原告、控訴人兼被控訴人)は、Y銀行(被告、被控訴人兼控訴人)に対し、金額一〇〇〇万円の定期預金三口(合計三〇〇〇万円、以下「本件各定期預金」とする)をしていたところ、Xの出納室長Aは、その権限がないのに、Xの町長名義の一時借入金の借入申...
《解 説》
本件は、土地所有者Xから土地(旧国鉄の貨物ヤードの一部)を占有するYら(貨物運送等を目的とする会社)に対する土地明渡請求事件(付帯請求は損害金請求)であるが、抗弁∥占有正権原の主張がされ、その成否が争点とされたケースである。これだけなら極めてシンプルな事案であるが、問題をやや複...
《解 説》
Xは、隣家Yのいくつかの窓から覗かれているのではないかという精神的な不安を感じ、また窓からの不快な騒音・臭気や排水パイプからの騒音により不快感を受けており、かつ、隣家の屋根の部分はXの土地の境界から五〇センチメートル未満しか離れていない状態であった。そこで、Xは、Yらに対して、...
《解 説》
一1 本件は、被相続人(父)甲の遺産をめぐる兄妹間の争いである。相続人は母(被相続人の妻)・長男(Y)と長女(X1)・次女(X2)であり、甲は死亡前約四〇日前に極めて簡単な内容を記載した遺書(らしきもの)を作成した。その「遺書」には、「証」と書いて、「私甲所有の土地家屋他現金書...
《解 説》
一 Aは、知人Bに代筆させて、自己の財産を全て孫のX(原告)に委譲する旨の条項を含む「遺言書」と題する書面を作成し、作成から約七年の後に死亡したが、A所有の不動産については、Aの死亡直前に、贈与や売買を原因としてYら(被告)への所有権移転登記がされていた。本件書面は、Aの自筆に...
《解 説》
Xらは、資産運用に関するコンサルタント業務を行うA社との間で投資顧問委任契約を締結したが、その契約は、顧客であるXらが所定の管理費用をA社に支払い、金銭貸付とその保証を業務とするB社を通じて取引口座に運用資産を預託し、右口座による有価証券売買につきA社に委任し、その指示する株式...
《解 説》
本件の抗告人は、地位確認、未払い賞与の支払を請求した訴訟事件の原告であるが、同訴訟事件に関し、原告の申請した証人等の採否に際しての訴訟指揮が不当であるなどとして、合議体を構成する甲、乙、丙の三名の裁判官の忌避を申し立てた。原審は、抗告人の主張する事実がいずれも忌避事由に当たらな...
《解 説》
判示事項一について
判示事項一は、捜索場所としてモーテルの「管理人室内」と記載されている捜索差押許可状の場所的範囲について判示したものであって、管理人室から植込を挟んで約一〇メートル離れた場所に存在し物理的には独立しているプレハブ平屋建建物が、モーテル敷地内では最も管理人室に...
《解 説》
本判決の引用する最決昭36・3・14刑集一五巻三号五一六頁は、公判調書の記載が明白な誤記である場合には、公判調書は正しい内容にしたがって証明力を有するとし、学説もこれを支持している(団藤・綱要四九〇頁等)。
本件は、この明白な誤記の事例であって、公判調書の裁判官及び裁判所書記...
《解 説》
一 本件は、難民国際救援センター内におけるベトナム難民間の殺人事件の控訴審において、過剰防衛の成立を認めるに止まった原判決が破棄され、正当防衛に該当する余地のあることを理由に無罪が言渡された事例である。
二 事案の内容は、被害者が被告人の姪の部屋に押し入って同女に対して包丁を...
《解 説》
一 本件は、「ワールド」、「WORLD」ないし「WORLD」を要部とする営業表示を使用するアパレルメーカーの原告「株式会社ワールド」が、「ワールド」ないし「ワールド」を要部とする営業表示を使用して消費者金融業を営む被告「株式会社ワールドファイナンス」に対し、不正競争防止法一条一...