最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一 事案の概要は、次のとおりである。
上告人(Y)は、ハイヤー会社であり、その乗務員の給与は、主として、基準内賃金及び歩合給から成っており、歩合給は、当該乗務員の運賃総収入から一定の金額(以下「足切額」という。)を控除した後の金額に一定の支給率(以下単に「支給率」という。)を...
《解 説》
一 本件は、全国税関労働組合(全税関)神戸支部(以下「原告組合」という。)とその組合員一四一名(以下「原告組合員」という。なお、一部の者の地位を相続人が承継している。)が、神戸税関長が原告組合員に対して組合員であることを理由に昇任、昇格、特別昇給において差別的な不利益取扱いをし...
《解 説》
一 本件は、死刑判決を受けた未決拘禁者(上告中)に対する拘置所長の書籍閲読不許可処分につき、これを違法とすることはできない、としたものである。
本件の原審判決は、右不許可処分の対象となった書籍の一部に①死刑執行の具体的手順、②死刑執行状況の具体的な描写、③自殺の方法、発火方法...
《解 説》
一 本件事案の概要は次のようなものである。
1 原告は、大阪府八尾市に住所を有する大阪府医師会に所属しない医師である。
2 原告は、国民健康保険法一三条に基づき国民健康保険事業を行う公法人である被告(大阪府医師国民健康保険組合)に対し、加入の申込をしたところ、被告の組合規約...
《解 説》
本件は、原告ら所有地について何らの権限取得がないまま市道供用開始処分がなされたとして、原告らが被告市長に対し、右供用開始処分の無効確認を求めた事案である。
本件判決は、行政処分の無効確認の訴えは、処分をした行政庁を被告として提起しなければならないところ、市道の供用開始処分をし...
《解 説》
Xら県民は、県知事Yが昭和天皇の病気見舞記帳のために上京したのは国民主権主義及び法の下の平等に違反するものであり、またYが県庁前に記帳所を設置したことは地方公共団体の事務に該当せず、違法であると主張し、これらの費用総額五七万円余の損害賠償を求めて住民訴訟を提起した。一審の福岡地...
《解 説》
A村は河川改修工事をB社に請け負わせたが、B社は定められた工事期限を七三日間超過して工事を完成させた。住民であるXは、村長YがA村財務規則の定める遅延日数一日につき契約金額の一〇〇〇分の二に相当する遅延損害金を徴収しなかったことは違法であると主張して監査請求したが、監査委員はX...
《解 説》
本件は、公立の保育所に保母として勤務し、保育業務に従事していたX(原告・被控訴人)が保育業務による過労が原因で頚肩腕障害、腰痛症に罹患したとしてY(被告・控訴人)に公務災害の認定の請求をしたところ、公務外との認定処分を受けたので、審査請求等を経てその取消しを求めた事案である。
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《解 説》
本件は、出版業を営むY会社に雇用されていたXが、Yに対して雇用契約上の地位の確認並びに時間外賃金及び冬季賞与の支払を求めた事案である。XY間においては、雇用関係についての争いを経て、YがXにこれまでの残業料見合い分として一定額を支払うこと、Xが一定の期日限り退職すること等を内容...
《解 説》
一 Xは、昭和四六年六月一日、Y市の市長から、Y市労働相談員を嘱託する旨の辞令の交付を受けて、Y市の公務員に任用され、その後、ほぼ一年ごとに同様の辞令を受け、Y市労働相談室(その後雇用労働相談所)の事務に従事してきたが、昭和五七年一〇月一日、任期を六箇月とする辞令の交付を受けた...
《解 説》
一 本件は、A市立保育園に勤務する保母Xが「頚肩腕症候群・背腰痛症」を発症し、地方公務員災害補償法にしたがい、Y(地方公務員災害補償基金支部長)に公務災害の認定の申請をしたところ、Yは公務災害とは認定しない旨決定したので、Xは審査請求等の手続を経たうえこの決定の取消しを求めて出...
《解 説》
本件は、従姉弟であるYから平1・11・24贈与を受けたと主張するXが、Yに対して契約金の支払いを請求したケースである。Yからの贈与の趣旨は、親戚でもあり親しくしていた時期もあること等からXに先祖を供養してもらう代わりに財産を贈与するというものであったようである。これに対して、Y...
《解 説》
一 Bは、亡Aの妻であったが、Aとは別の男性CをA本人に仮装してA本人として振る舞わせ、第一ないし第三事件被告(反訴事件原告)からA、Bを連帯債務者として金銭を借り入れた上、A所有の不動産について被告のため根抵当権等を設定して登記し、被告の社員に右借入金債務に係る執行受諾文言付...
《解 説》
一 訴外Aは、昭和三五年三月、訴外Bに対し、その所有の本件土地を非堅固建物の所有を目的として、期間五年、賃料一か月二四四五円の約定で賃貸した。
そして、Xは、昭和三九年九月、Aの死亡による相続により賃貸人としての地位を承続し、Y1は、昭和五五年三月、右借地上の建物の遺贈を受け...
《解 説》
一 Xは、昭和六三年六月当時、Y1の経営する「相模野カントリー倶楽部ゴルフ場」に勤務していた者であるが、同月一五日、同ゴルフ場の相模コース九番ホールにおいてキャディーとして勤務中、Y2が同ゴルフ場の城山コース一番ホールティーグランドから打ったゴルフボールを前頭部に受け、頭部挫傷...
《解 説》
一 本件は、ゴルフ場を経営するX社及び会員の団体であるX倶楽部らが、Y社らに対し、①立て看板の撤去、②印刷物の配布等の差し止め、③名誉または信用毀損による損害賠償を請求したものである。
二 本訴に至る経緯は判文に詳しいが、要点を述べると次のとおりである。
Bは昭和五三年頃、...
《解 説》
本件は、Y1経営の産婦人科医院において出生した男児X1が新生児仮死となり脳性まひ等による重度の障害者となったのは、Y1及び勤務医Y2の責任であるとして、X1及びその両親X2、X3が、Y1らに対して不法行為に基づき損害賠償請求をした事案である。
X1らは、Y1らの帰責事由として...
《解 説》
一 XとYは、昭和一七年に婚姻した夫婦であるが、Xは、昭和二四年ころから自分の経営する店の従業員であったAと不貞関係を続け、Aとの間に生まれたBを認知した。Xは、Y及び二人の子の居住する自宅とA宅とを行き来する生活を続けていたが、昭和四〇年に事業拡大のために上京する際、AとBの...
《解 説》
一 本件は、土地に対する担保権実行としての競売事件において、売却のための保全処分(民執五五条一項)として、債務者兼所有者A、賃借権仮登記権者B、その移転仮登記を得たC、及びBから転借したと主張するDに対し、これらの者が執行妨害を目的として競売土地上に土砂を搬入し、建物を建築した...
《解 説》
市議会議員である本件債務者は、自ら経営する水産会社の倒産による多額の債務を抱えていたところ、債務者の唯一の収入である議員報酬債権の差押を受けた。債務者の同居の家族である実母には遺族年金の所得があり、妻には身体障害者年金があり、その所得によって債務者らの生活を維持することは可能で...
《解 説》
一 事案の概要
主債務者(被告)が自己破産の申立てをしたため、保証人である原告が、主債務(原債権)を代位弁済し、求償金(代位弁済金に対する遅延損害金残金)の支払いを求めた事案である。
被告は、本件求償債権は商事債権であり、破産事件の終局決定が公告されてから五年を経過したこと...
《解 説》
判示事項一について
刑法四五条後段、五〇条の適用を遺脱した場合の判決への影響につき、名古屋高判昭31・2・28裁特三巻六号二四二頁、東京高判昭63・8・2本誌六八二号二三七頁は、特に理由を付していないがこれを消極に解している。刑法五〇条を、その文言どおり、さらに余罪につき処断...
《解 説》
一 本件は、公立高校の校長及びその誘いに応じた教諭二名による入試答案改ざん事件として、発覚当時マスコミに大きく取り上げられて世間を騒がせた事件の判決である。被告人らは、受検生の父兄から合格のため便宜を計って欲しい旨の依頼を受け、校長室の金庫に保管してあった学力検査問題解答用紙の...
《解 説》
一 本件は、覚せい剤の自己使用事犯において、尿の提出前の警職法三条一項一号の保護手続を違法とし、その過程において行われた採尿手続も違法ではあるが、右違法は令状主義の精神を没却するほど重大なものではないとして、右手続によって得られた尿についての鑑定書を証拠として採用し、被告人を有...
《解 説》
一 Xらは、日興證券株式会社の株主であるが、同社の取締役Yらが同社の一部の顧客に対し証券取引等に関して生じた損失を補填するという違法な行為をしたことにより同社に損害を被らしめたと主張し、商法二六七条の株主代表訴訟の規定に基づき、四七〇億七五〇〇万円を同社に連帯して支払うよう求め...