最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一、土地、建物の賃貸借契約は相当長期に及ぶことが予定される継続的契約関係であり、契約当事者間の信頼関係が重視されるということができる。ところで、賃貸借契約の解除については、やむを得ない事由を解除の要件とする雇用契約に関する民法六二八条ではなく、民法五四一条の債務不履行による解除...
《解 説》
一、本件の事実関係のうち判決要旨に関する部分を要約すると、次のとおりである。Y(日本信託銀行)は、昭和四七年九月、A(国際技研)に対し、二億二〇〇〇万円を貸し付け、担保として、当時Aが所有していた甲不動産と乙不動産に抵当権を設定した。両不動産は共同担保の関係にあった。その後、昭...
《解 説》
X(高校三年生)は、教室内で喫煙をしたことを理由として、昭61・11・12学校から自主退学するよう勧告されたが、Xはこれに従わなかったため昭和62・3・23退学処分を受けた。その間、学校側はXに対して学習指導をせず、定期考査も受けさせなかった。そこで、Xは、①本件退学処分は、喫...
《解 説》
一、本件は、昭和二四年九月に日本人を母として出生したことにより日本国籍を取得した原告が、昭和二七年二月に中華民国国籍を有する男性によって認知され、同男及び母の両名の名義で提出された国籍離脱届に基づき、同年一〇月二五日付けでその日本国籍離脱が官報に告示されたところ、その後、平成二...
《解 説》
亡Xは、昭和三五年に無拠出制の障害福祉年金受給権の裁定を受けたが、同三六年以降国民年金保険料を納付し、六五歳に達した後の同五四年に老齢年金の受給権の裁定を受けた。亡Xが国民年金法二〇条、同法施行規則(同六一年厚生省令第一七号による改正前のもの)一七条、三二条により、いずれの年金...
《解 説》
一、石炭鉱害賠償等臨時措置法(以下「法」という。)は、一一条の二以下において、鉱害賠償に関する地方鉱業協議会による裁定制度を設けた上、同協議会の裁定に不服のある者は、裁定書の謄本の交付を受けた日から三か月以内に、賠償義務者又は被害者を被告として訴えを提起できる旨定めている(法一...
《解 説》
一、本件は、関西電力が供給する電気及び大阪ガスが供給するガスの消費者である原告らが、通産大臣が昭和五五年三月二一日に行った関西電力に対する電気料金の値上げ(平均四三・三六パーセント)を主な内容とする電気供給規定変更認可処分及び大阪ガスに対するガス料金の値上げ(平均四五・一二パー...
《解 説》
本件は、国Yの防衛費の支出が憲法前文の平和的生存権、九条・一九条・二〇条等に違反するとして、Xら二〇名がYに対し、①所得税のうち自衛隊関係費相当分の納税義務がないことの確認、②YがXらの納付する所得税を自衛隊関係費に支出してはならない義務の確認、③Yが自衛隊関係費を支出し、また...
《解 説》
一、本件は、大阪市が、阿倍野そごう、関西スーパーといった大型店舗に、建築施設(ビル)の一部を公募価額より著しく低廉な価額で売り渡したとして、住民(法人)が右売買契約の決済をした当時の市長に対して、大阪市を代位して損害賠償請求した事案である。
なお、法人が住民訴訟を起こせるかに...
《解 説》
東京都江東区は、各種事務事業の住民への周知、文書等の配布等の事務を町会・自治会及びこれらの連合会に委託し、その経費として事務委託料を、これらの事務を処理するために町会等の役員が使用する会議費、交通費など事務委託料でまかない切れない経費の一部に充当する趣旨で町会等の会員数に応じて...
《解 説》
本件は、大手タクシー会社の管理職(営業部長)にあった被傭者(債権者)が、突然守衛部署に配置転換されたうえ、その配転の一か月後に普通解雇されたため、解雇権を濫用して行われた当該解雇は無効であるとし、賃金仮払いと雇用契約上の地位保全を求めて仮処分を申し立て、これが全面的に認容された...
《解 説》
一、Xは、昭和三三年四月、家電販売会社Yに雇用され、昭和六〇年二月から物流担当部長の地位にあったが、昭和六一年四月、飲酒運転により免許停止処分を受けたことや業務上の不始末などを理由に「部長職を一般職に降格する」旨の処分を受けた。
そこで、Xは、右降格処分は、Yの就業規則で定め...
《解 説》
本件は退職金請求の事案であり、Xが主張した事実の要旨は、次のとおりである。①Xは、昭和二三年八月一日、A会社に雇用された。②Xは、昭和四七年四月一日、A会社との雇用契約を継続したままY会社に出向することを命じられ、以後Yに勤務していたが、昭和五三年九月三〇日、A会社から出向を免...
《解 説》
一、事案の概要は以下の通りである。
X社はノースウエスト航空の子会社で、成田でホテルを経営しているが、昭和五〇年代から労使紛争が続いていた(その内容については、第二事案の概要一(争いのない事実)2(背景となる事情)参照)ところ、Xは昭和五七年二月、ホテルの運転手で組合員・組合...
《解 説》
一、本件は、医院経営者の依頼を受けてクリニック院長になる医師を斡旋した人材スカウト業者がその医院経営者に対し職業安定法(以下この解説では単に法ということがある)で認められている以上の報酬(約定の紹介料)を請求した事案であって、一・二審とも、職業安定法で認められている限度でしか、...
《解 説》
一、丙(Y)は運送会社、乙は丙(Y)の運送業務の下請会社、甲は丙(Y)の子会社である石油販売会社であり、甲は乙に車両燃料を継続的に販売し、乙は丙(Y)から継続的に運送業務を下請してきたものであるが、①昭和六一年二月一二日甲と乙は「甲は甲の乙に対する債権で乙の丙(Y)に対する債権...
《解 説》
一、本件は、Yが昭和天皇死去約一〇日後の平成元年一月一八日に発行する東京新聞「昭和史特集保存版」に、X発行の書籍「ドキュメント昭和天皇」の広告を掲載する旨約したにも拘わらず、Yは契約に反し広告掲載を拒否したとして、XがYに対し、一二〇万円の損害賠償を請求した事案であり、広告掲載...
《解 説》
一、本件は、親族間での使用貸借契約の終了が争われた事例である。
原告Xは土地の所有者であり、被告Yはその娘婿であって、昭和六〇年からX所有の土地の一部を使用借して建物(本件建物)を所有している。Xの長女がYと結婚するに際し、Xは、長女夫婦に自分の老後の面倒を見て貰うと共に、い...
《解 説》
一、本件は、原告が、被告に対し、被告の発行する週刊誌に掲載された記事によって名誉を毀損されたとして、慰謝料八〇〇万円の支払いを求めたのに対し、被告が、記事の公共性・公益性・真実性ないし真実と信ずるにつき相当の理由の存在を主張して争った事案である。
本件で問題となった記事は、①...
《解 説》
電話機の販売・工事などを業務とするX株式会社は、平2・6・20付け読売新聞朝刊において「四桁局番変更に便乗、今の電話機はもう使えぬ、悪質商法三億円稼ぐ」という見出しの記事により、訪問販売法違反に該当するような商法で荒稼ぎをした旨の報道をされた。これにより、Xは取引先から取引を停...
《解 説》
一、本件は、高圧酸素療法中での点滴に関する過誤が争われた事例である。
原告X1は小学校五年生であった昭和六〇年八月、交通事故で(この部分は新聞報道による。)両足を骨折し、被告Y1が運営する救急医療センターに入院して治療を受け、同年一〇月には骨折部の固定手術を受けたが、その結果...
《解 説》
一、本件は、Y町立羽村第一中学校の三年生であったX1が二学期開始後間もない昭和六〇年九月一七日から登校拒否をしたことについて、同級生であるA、Bらのつっぱりグループからいじめを受けたことがX1の登校拒否の原因であり、学校側がいじめを発見して防止する努力を怠りこれを放置したために...
《解 説》
一、本件は、手乗りインコの雛二羽をY経営の大型店舗内のペットショップZから購入してXら家族で飼育していたところ、右インコのうち少なくとも一羽がオウム病クラミジアに感染していたことにより、Xらが次々とオウム病に罹患し、そのうちの一名が特に重篤なオウム病性肺炎を発症して死亡したとい...
《解 説》
一、特許法一七条の二により許されている出願公告決定謄本の送達前の補正は、法四一条により一応は要旨変更がないものとみなされるが、特許請求の範囲のより上位概念的な記載への変更、実施例の増減、発明の詳細な説明の項の大幅な加入など、問題となるケースが少なくない。
この補正を経た公告公...
《解 説》
一、いわゆる「自由技術の抗弁」は、侵害訴訟において特許発明の技術的範囲をどのように考えるかという分野で問題とされる主張である。これは、公知技術は万人共通の財産であり、特許権の存否とは関係なく、何人もこれを自由に使用することができるものであるとの考え方に基づくものである。しかしな...
《解 説》
一、本件は新聞発行者の著作権に基づく差止請求を、将来発行される新聞に関するものを含めて認めた仮処分事件であり、債務者からの異議申立てに対する審理の継続中であるが、新聞報道等のなされた事件であるので紹介する。
二、債権者はアメリカの代表的な経済紙「ザ・ウォール・ストリート・ジャ...
《解 説》
一、本件は、事実関係だけでなく、訴訟の経過がやや複雑であるが、その概略を示すと、次のとおりである。すなわち、暴力団組長である被告人(甲)は、当初、「配下組員乙らと共謀の上、丙に暴行を加えて死亡させた」旨の傷害致死の訴因で起訴されたが、検察官は、冒頭陳述においては、甲に暴行を指示...
《解 説》
本件は、集団行動の際、公務執行妨害罪を犯したKを現認した警察官が、約三〇分後に集団行動が散会となり右附近にいたKを緊急逮捕しようとしたところ、Iがこれを妨害したという公務執行妨害・傷害の事案について、逮捕警察官が被疑事実等の理由及び逮捕する旨の告知をしなかったため、右緊急逮捕に...
《解 説》
本件は、被告人が、自閉症に罹患している自己の長男(当時六歳)を、「先天性梅毒による進行性麻痺」に罹患していて関係者によって安楽死させられるとの妄想から、荷作り用ビニール紐で窒息死させて殺害したという事案である。
本件で、弁護人は、被告人の本件犯行当時の責任能力を争い、当時罹患...