最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
本件は、建物の賃貸人Xの賃借人Y1及び転借人Y2に対する建物明渡請求事件で、X主張の解約申入れの正当事由の存否が専ら争われた事案である。一審は、Xの申し出た立退料一〇〇万円では正当事由を具備しないと判断して、請求を棄却し、原審は、Xが原審の口頭弁論終結時に増額した立退料三〇〇万...
《解 説》
一、Xは、浦安市の住民であり、Yは、昭和四四年九月、浦安町の町長に就任し、昭和五六年四月一日、同町が市制を施行したことにより浦安市の市長に就任した者である。
権利能力なき社団Aクラブは、ヨットの係留施設とする目的で、昭和五五年五月末ころ、浦安市第二期埋立地高洲地先の川幅四三メ...
《解 説》
共有物の分割又は土地の一部譲渡によって袋地を生じた場合には、袋地の所有者は、民法二一三条に基づき、その残余地(他の分割者の所有地又は土地の一部の譲渡人若しくは譲受人の所有地)についてのみ通行権を有するが、袋地又は残余地の所有者がその後に交替した場合における同条の囲繞地通行権の帰...
《解 説》
本件は、都(X)が都営住宅(本件建物)の占有者(Y1・Y2)に対してその明渡を求める事案である。争点は、Yらの占有権原の有無にあるが、Yらは、本件建物の入居者であったAの死亡によって、その孫にあたるY1が本件建物の使用権を相続(代襲相続)したなどと主張して、その明渡を拒んだため...
《解 説》
本件は、Yの長男であるAを通じてY所有の農地を買い受けたというXらがYに所有権移転登記等を求めた事案である。一審においては、Y名義の答弁書が陳述擬制されて手続が進められ、Xらの請求が認容され、原審においては、専らAの代理権の有無をめぐって争われたが、Yの控訴が棄却されている。こ...
《解 説》
本件は、建築基準法四二条一項四号による道路の指定が、法定の「二年以内にその事業が執行される予定のもの」に当たらないなどの違法があると主張して、道路区域内の所有権者Xらが指定者であるY区長に対し、当該指定の取消しを求めた事案である(その他、違法事由として、道路法八条、地方自治法二...
《解 説》
本件は、昭和六二年二月一級河川(柳瀬川)の堤防から河川に転落して溺れた幼児X(当時二歳)が右事故に遭遇した結果酸素欠乏に起因する無酸素性脳症状により四肢体幹機能に後遺症が残ったとして、河川を管理するY国・県に対して、国賠法二条一項に基づき総額一億円余の損害賠償を求めたケースであ...
《解 説》
Xらの子A(当時一五歳)はY1府立職業訓練校左官科に在籍していた者であるが、同校自動車整備科に在籍していたB(当時一九歳)が同校内で指導員らに無断で運転した車に衝突され、死亡した。本訴は、XらがY1及び同訓練校の校長、副校長、指導員であるY2ほか四名に対し、不法行為、運行供用者...
《解 説》
一、Y2兵庫県は、昭和五〇年六月頃から、兵庫県城崎郡香住町付近において、国道一七八号線の道路拡幅工事を施行していたが、昭和五一年一月と二月に右道路の山側に崖崩れが生じ、X所有の建物が折壊し、自動車が破損するという事故が発生した。
そこで、Xは、右崖崩れは右道路の管理の瑕疵によ...
《解 説》
児童福祉法に基づく里親制度の里親(東京都養育家庭制度の養育家庭)となって五年間Aを養育していたXら夫婦は、東京都児童相談センター(児童相談所)によってAの委託先を変更する旨の措置変更処分を受けたためAを養育することができなくなった。そこで、Xらは、これは、養育家庭センター園長で...
《解 説》
本件は、大阪地判平1・3・28本誌七〇一号一六七頁の控訴審判決であり、事案の詳細については、同判決及びそのコメントを参照されたいが、更生会社Xは更生計画認可直前の昭和五七年九月期の事業年度の税務申告において債務免除益六二三億円(億未満切り捨て、以下の金額も同じ)を含む当期所得金...
《解 説》
一、Y市の市民Xは、その所有土地についてされた固定資産税・都市計画税の賦課決定処分に従って同税を納付した。本件は、Xが、Y市に対し、右土地は地方税法三四八条二項四号により非課税とされている「墓地」であり、右処分は重大明白な瑕疵のある無効な処分であるとして、納付した金員の返還等を...
《解 説》
本件は、京都市の行った住宅改良事業に関して不正支出があったとして、京都市の住民が右事業の担当職員及びこれを監督すべき立場にあった職員に対して損害賠償を求めた住民訴訟についての控訴審判決である。
本判決の認定によると、本件支出は、補償金として支出する理由がなかったのに、担当職員...
《解 説》
本件は、東京都の住民Xが地方自治法二四二条の二第一項四号前段に基づき、都清掃局長Y個人に対し、北清掃工場の建替えに伴う地元還元公共施設(還元施設)の調査設計業務委託契約に基づく委託料三九九万円余の支出を違法であると主張して、Yに右と同額の損害賠償を都に対してするよう求めた住民訴...
《解 説》
一、事案は明確でないが、使用者(会社)と労働者との間で、企業内の低利金融について相殺予約の約定が成立していたようで、相殺予約に基づく相殺の適否が争われており、事件名が取立金請求事件であることを考慮すると、労働者が、原告になって、相殺を無効として、不払分を取立金として請求したもの...
《解 説》
一、本件は、東京と大阪に在日支店をもつ大手米国銀行が世界的な金融自由化等による収益悪化等を理由とする在日支店の合理化の一環として、大阪支店の従業員一〇名を東京支店に配転する旨を命じたところ、右従業員のうち九名が右配転命令の無効を主張して、その効力を仮に停止すべきことを求めた仮処...
《解 説》
一、秋田県地方労働委員会(Y)は、男鹿市農業協同組合(X)に課長補佐として勤務していたA及びAの所属していたB労働組合による不当労働行為救済の申立てにつき、XがAを課長職に任命しなかったことが労働組合法七条一号、三号に該当する不当労働行為であるとして、Xに対して、Aを加工課長と...
《解 説》
いわゆる賃料増額請求訴訟には契約内容としての賃料額の確認を求める賃料額確認訴訟、増額後の未払賃料債権の確認を求める賃料債権確認訴訟及びその給付を求める賃料請求訴訟の三つの態様があるとされ、賃借人が賃料増額の効果を争って適法に従前の賃料額の弁済供託をしている場合に弁済供託額の増額...
《解 説》
本件は四階建鉄筋コンクリート造りマンンョンの分譲を受けたXら一三名と分譲会社であり、マンションの区分所有者でもあるYとの間で、Yの管理費の支払義務及びYが駐車場として賃貸しているマンション一階のピロティー部分が区分所有者全員の共有に属するか否かが争われた事案である。本判決は、Y...
《解 説》
一1 執行債務者Y(相手方・不動産所有者)は、平成元年三月三一日執行債権者X(抗告人)から一億七〇〇〇万円(利息年五・七%、損害金年一四%等の約定)を借り受け、右債権を被担保債権とする抵当権をY所有土地に設定し、かつ、(債権分割の所定の手続もすませて)抵当証券の発行を受けて、そ...
《解 説》
XとY1は兄弟であるところ、昭和六一年一月遺産分割協議が成立し、本件土地の借地権をXが六割、Y1が四割をそれぞれ取得することとなった。実際にはY1が取得する部分が角地で高価であるため、Y1の取得部分はやや少なく分割された。そしてY1は自己の取得部分である三〇坪の借地権を他に売却...
《解 説》
一、Xは、「紀伊国屋書店」を経営する会社であり、都内新宿区角筈に地下二階、地上一二階の集合店舗用の本社ビルを所有しているが、昭和三七年と四七年の二回に分け、右ビルの一階を、紳士服「英国屋」を経営するY会社に対し、いずれも昭和五九年四月までの期間を定めて賃貸してきた。
ところが...
《解 説》
昭和六〇年代初頭以降の首都圏のオフィスビル需要を契機とする金融緩和の経済情勢の中で生じた著しい地価高騰現象は、いろいろな社会的局面でさまざまな波紋を起こしているが、本判決の重要な背景事情でもある。Xらは、それぞれYからY所有の土地について期間二〇年間の借地契約を結んでいるが、X...
《解 説》
本件は、XがYに対し、建物建築請負契約に基づく請負金残額の請求をした(本訴)のに対して、YがXに対し、Xのした右請負金残額を被保全権利とする仮差押の執行が不法行為に当たるとして損害賠償請求した(反訴)ケースである。
本判決は、要旨次のとおり判示して、本訴・反訴いずれも棄却した...
《解 説》
本件事案の概要は次のとおりである。X社はA社とファクシミリ、複写機に関するリース契約を締結し、同日、右契約に基づき、右機械を引き渡したが、A社がリース料を滞納したため、Xは、リース料等一切の債務についての連帯保証契約を締結していたYに対して債務の履行を求めた。これに対し、Yは、...
《解 説》
本件は、木造二階建建物の二階の一部を賃借して美容院を経営していたXが、同建物の一階の一部を賃借してパンの製造販売の店舗を経営していたYに対し、Y店舗内のY占有所有のパン焼機の設置、保存の瑕疵により火災が発生してXの右賃借部分が焼失したとして、民法七一七条の工作物責任に基づき、そ...
《解 説》
一、Xは、昭和六〇年五月当時、株式会社千趣会に勤務していたが、同月一二日、山岳同人東京青稜会のメンバーの同僚であるYとパーティーを組んで岩登りの練習をすることになり、埼玉県入間郡日高町にある日和田山ロッククライミング練習場に向った。そして、Yは、まず露岩の頂上付近に登り、そこに...
《解 説》
一、X(原告・反訴被告)は、昭和六二年九月四日、普通乗用車を運転して江南市内の道路を走行中、同市中屋敷の交差点において、自転車で進行中の訴外Aと衝突し、Aに対して、腰椎圧迫骨折、肋骨々折等の傷害を負わせた。そして、Aは、入通院して右傷害の治療を受けていたが、多発性骨髄腫を発症し...
《解 説》
一、本件事案の概要は、次のとおりである。
X1・X2・X3は、亡Zの相続人(X1はその子、X2・X3はその両親。)であるが、亡Zは、平成元年六月九日午前一時二五分頃、Y1所有兼運転の普通乗用自動車に同乗中、右車両が神戸市須磨区内市道上で横転したため、この事故により死亡した。
...
《解 説》
一、本件は未熟児網膜症事件(以下「本症」)の最新事例で、原判決は福島地判昭60・12・2本誌五八〇号三四頁である。
X1(原告、被控訴人)は昭和四六年一〇月一九日に福島市内のA医院で出生したが、在胎三二週、一六五〇グラムの未熟児で、第一度仮死の状態であった。翌日Y病院に転送さ...
《解 説》
一、控訴人は、Aの姪(三親等の傍系血族)であったが、昭和二九年一二月二日、Aと結婚した。Aには、B(昭和一九年四月九日死亡)との間に被控訴人らを含む六人の子がいるが、控訴人との間にCが生まれた。ところが、Aは、昭和六二年九月一八日、その遺産をCに包括遺贈する旨の公正証書遺言をし...
《解 説》
一、本件は、外国人がした公正証書遺言の効力が、その遺言の趣旨の口授という作成方式との関係で争われた事例である。
訴外Aは外国人で、東京都新宿区内に約一六〇〇平方米の宅地を所有していたが、昭和六二年七月に公正証書遺言(旧遺言)をし、Xを遺言執行者に指定した上、遺贈もする旨を決め...
《解 説》
一、本件は、夫婦の間で建物所有権に基づく明渡請求が争われた事例である。
原告X(妻)と被告Y(夫)は昭和六三年八月に婚姻の届出をした夫婦である。本件建物(東京都江戸川区所在のマンションの一室)はXが婚姻以前から所有していたもので、婚姻後はXY夫婦及びXの前夫との間の子が居住し...
《解 説》
一、XはYの発行済株式総数の一〇分の一以上の株式を有する株主であるが、昭和六三年七月と八月、Yに対し、それぞれ理由を付した書面をもって、本判決添付別紙目録(一)の1ないし12の帳簿、書類(以下「本件文書」という)の閲覧請求をしたが、右閲覧請求が商法二九三条の七第一号に該当するこ...
《解 説》
本件は、在日本大韓民国居留民団(以下「民団」という。)の一地方組織である原告の元議長であった被告が、自らが原告の代表権を有すると主張して原告管理にかかる土地の占有を実力で侵奪した上、土地上に建物を構築したのに対し、原告が占有訴権により建物収去土地明渡を求めた事案である。被告は、...
《解 説》
一、本件事案の概要等。本件の発端は、マンション建築工事に関して、付近住民(以下「債務者」という。)と建設会社との間に紛争が生じたことにある。建設会社は、平成二年七月二日、債務者らに対する、マンション建築工事の妨害禁止の仮処分を得た。建設会社は、その後、債務者らが仮処分に違反して...
《解 説》
一1 原告X(控訴人)は本件土地の所有権に基づいて被告Y1(被控訴人)の所有建物の収去土地明渡を求め、その余の被告Yら(被控訴人)に対し居住建物からの退去を求めており、Yらは法定地上権の成立を主張している。
2 一審はXの請求を棄却したらしい。X控訴
3 控訴審は、...
《解 説》
1 事案の争点
本判決の事案では、公訴事実のうち、住居侵入、窃盗の点が争われており、争点は、被告人の手を借りて住居に侵入し、ネックレス一個を盗んだとする共犯者の供述の信用性である。被告人は、事件当時、共犯者と同性愛の関係にあったが、その後共犯者の覚せい剤使用による幻覚症状等か...
《解 説》
本件事案の概要は、試乗車を乗り回すことに興味を覚えた被告人が、自動車販売店を訪れ、自動車を購入する旨嘘を言って商談をした後、試乗をしたいと話を持ちかけて、同店に置いてあった試乗車を乗り逃げしたというものである。被告人には窃盗前科が多数あったことから、常習累犯窃盗の罪で起訴された...
《解 説》
本件は、二階建共同住宅に住む被告人が、妻子が入浴中に、周囲をブロック塀及び自宅外壁で囲まれた風通しの悪い居室裏土間で、ガソリンをポリタンクから別のポリタンクに移し替えようとして、ガソリンを土間上に流出させ、このガソリンに被告人のいた場所から約一・五メートルの所に設置されていたガ...
《解 説》
一、①事件は、被告人が、自動車を運転して発進しようとしたところ、先刻飲食店で口論した被害者が現れ自車のボンネットの上に乗ってきたので、同人から逃げるためそのまま発進し、時速約六〇キロメートルで約二五〇メートル走行し、更に同速度で約一七〇メートル蛇行運転し、被害者を振り落として転...
《解 説》
一、Xら六名(弁護士)は平成二年二月に施行された衆議院議員選挙において広島県第一区の選挙人であったが、その当時議員一人当たりの選挙人数の最も少ない宮崎第二区の一〇万五九三九人と最も多い神奈川県第四区の三三万六八五九人との間で投票価値の較差が約三・一八対一となっていたことから、Y...
《解 説》
民事執行法一八一条一ないし三号及び二項の法定文書の性質については、これを準債務名義とする説と法定証拠にとどまるとする説とがある。このいずれの説においても、債権者は、競売の申立てに当たり、法定文書を提出すれば足りると同時に、法定文書の記載内容を他の証拠で立証することは禁じられてい...