最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一、訴訟の経過
本件は、西淀川公害訴訟第一次訴訟の判決である。第一次訴訟は、昭和五三年四月提訴、平成二年四月結審、平成三年三月二九日判決言渡しの経過をたどった。第二次・第三次訴訟は併合されて、現在審理中である。
事案の概要は、大阪市西淀川区に居住し、公健法に定める指定疾病の...
《解 説》
本件は愛媛県今治市織田が浜の埋立てに関し、住民らが同市長に対し、右埋立ては公有水面埋立法四条、瀬戸内海環境保全特別措置法一三条等に違反するとして、右埋立てのための公金の支出の差止めを求めた地方自治法二四二条の二第一項一号による住民訴訟である。右訴訟において差止めの対象とされたの...
《解 説》
一、本件は、平成二年二月一八日に行われた衆議院議員選挙(以下「本件選挙」という。)の大阪府第三区の選挙人である原告(選定当事者)(選定者一七名)が、投票価値の平等(一票一価)の保障からみて、本件選挙が依拠した公職選挙法一三条一項、同法別表第一、同附則七項ないし一〇項の規定(以下...
《解 説》
一、本誌七〇一号二二一頁に紹介した事件の上告審判決である。Y会社はA会社に汽船を売却したが、その売買残代金債権を担保するため、AがX保険会社との間で締結した船体保険契約(保険金額七〇〇〇万円)に基づく保険金請求権に質権を設定し、Xがこれを異議を留めずに承認したところ、昭和五二年...
《解 説》
一、株式の共同相続人と株主総会決議不存在確認の訴え(①事件)ないし合併無効の訴え(②事件)の原告適格が争われた事案であり、商法二〇三条二項の解釈適用が問題になっている。
①事件は、Y会社(被告・控訴人・上告人)の発行済株式の全部七〇〇〇株を所有していたAが死亡して、妻B、長男...
《解 説》
一、本件は、金銭消費貸借の借主が貸主あてに担保のため振り出した約束手形に保証の趣旨で裏書をした者が原因債務につき保証をしたといえるか否かが争われた事案である。
借主甲と貸主乙(原告・控訴人・上告人)との間で四か月間に三回の金銭貸借があり、その都度、裏書人丙(被告・被控訴人・被...
《解 説》
一、本件は、在日朝鮮人二世から国に対し、日本国籍を保有していることの確認及び慰謝料の支払等を求めた事件の控訴審判決である。Xは、昭和一九年、福岡県下において朝鮮人である両親から出生し、日本国籍を取得したが、戸籍上は朝鮮の戸籍に登載されていた。出生以来日本に居住しているXは、日本...
《解 説》
一、本判決は、いわゆる非嫡出子の住民票続柄記載事件に関する判決であり、事件の背景には夫婦別姓制の是非に関する問題もあったため、マスコミ等でも取り上げられたものである。
原告X1及びX2は、双方とも婚姻に際して氏を変更することを望まないため、婚姻の意思を有し共同生活を営んでいる...
《解 説》
一、X(原告・控訴人)の夫Aは、昭和四三年一月から訴外B会社(大日本印刷株式会社)に勤務し、印刷工、ロッカー室の管理人として就労していたが、昭和五二年二月一四日早朝、業務に就く直前に仮眠室入口付近で倒れ、同日橋脳出血のため死亡するに至った。
そこで、Xは、Y(被告・被控訴人)...
《解 説》
一、Xの亡夫Aは昭和二四年三月から同四七年五月までセメント工場やトンネル坑内での粉じん作業に従事していた者であるが、昭和四八年肺結核の診断を受け、昭和五五年六月二日付で大分労働基準局長から「じん肺管理区分管理二、合併症肺結核、要治療」の決定を受けた。その後病状が悪化して昭和五七...
《解 説》
本判決の認定によれば、Xは本件不動産をAに四億五〇〇〇万円で売り渡し、AがYに五億六〇〇〇万円(契約書上の代金額は七億一〇〇〇万円)で転売して所有権移転登記を中間省略によりXからYに移転したとのことである。Xは、X・A間の売買は、短期譲渡所得として多額の納税をすることを避けるた...
《解 説》
XはYに対し、東京都中央区銀座七丁目に所在するX所有建物の一部について期間約九か月、代償金一週間一二万円とする焼鳥店の経営委託契約を締結し、Yは右建物で自己の計算において焼鳥店を経営し、右建物を占有していた。なお、右契約の起案はXの顧問弁護士がしたものであり、期間が短く決められ...
《解 説》
本件はいわゆる赤道(里道、即ち、道路法その他の法律に基づかないまま財産として存在する道路であって、国又は地方公共団体が所有しているもの。公図上、赤で表示されているので、この名がある。)の時効取得が争われた事例である。
未登記の本件土地がもとは被告Yの所有であったことは当事者間...
《解 説》
一、本件事案は、つぎの通りである。Y(仮処分債務者)は、(一) 平成二年六月二九日、H信用金庫から、四五〇〇万円を、利息年八・七二パーセント、損害金年一四パーセント、返済方法は、平成二年七月一〇日から完済まで、毎月一〇日限り三六万九〇四八円ずつを分割して支払う旨の約定で借受け、...
《解 説》
本件は、「財団法人天下一家の会理事長U」名義で登録された債権(額面合計八三〇〇万円)の元利の支払いを受託会社Yに対して求めた訴訟である。本訴の原告Xは「財団法人肥後厚生会」(同法人は後に「財団法人天下一家の会」に名称が変更されたものの、右変更登記が職権抹消処分を受けた経緯がある...
《解 説》
債務者は、対立・抗争中の暴力団組織の組長であるが、これら暴力団組織の対立のため、沖縄においては、警官、市民を含め、複数の死傷者が出ている状況であった。そこで、右各組織の事務所の近隣住民は、その生命・身体の危険を理由とする人格権侵害を理由として、人格権に基づく妨害排除請求を根拠に...
《解 説》
1、本件は、交通事故と医療過誤との競合が争われた事例である。
昭和五八年一月一七日、当時六八歳であった原告Xは、原動機付自転車でT字型交差点を直進中、右折しながら右直進路に出ようとした被告Yの自動車に衝突されて左下腿開放骨折等の重傷を負い、約一年余の入院を経て現在は自宅療養中...
《解 説》
一、本件は交通事故の被害者が翌日に急性硬膜外血腫で死亡した事案につき、病院の責任が争われた事例である。
A(当時二九才)は昭和六〇年一一月一五日深夜、酔って歩行中に自動車にはねられ、被告Yが運営する病院に搬入された。一度目は軽傷として帰されたが、家族の希望でもう一度受診し、今...
《解 説》
一、本件は、遺言書に、抹消の外、多くの加除・訂正(乱雑等)があって、確定的な効果意思のある書類といえるか、それとも、下書き・草案にすぎないかが争われたもので、控訴審は、第一審と異なり、遺言として有効と認定し、本来的請求を認容した一審判決を取り消し、予備的請求である遺留分減殺請求...
《解 説》
本件は、原審における被告に対する公示送達による呼出しと判決の送達手続が適法であるとされ、控訴期間の追完を否定して控訴を却下した事例である。原審において、口頭弁論は判決日を除き、八回開かれたのであるが、その途中、被告の住居が競売に付され、被告の所在が明らかでなくなったため、第六回...
《解 説》
本件は、Xらが相続によって取得した土地所有権(持分権)に基づき右土地上に建物を所有して土地を占有しているYに対して、建物収去土地明渡及び賃料相当損害金を求めたケースである。Yは、これに対して、占有正権原の抗弁を主張した。すなわち、本件土地はもとYの父が勤務していたA会社が社宅用...
《解 説》
一、本件は、A管理組合(権利能力なき社団)が、昭和六一年Yらに対し係争土地に埋設された水道管の手抜き工事等を理由として一億二〇〇〇万円の損害賠償請求訴訟を提起し、係属裁判所で審理中のところ、平成元年一二月に「訴えの変更」を申立てる旨の準備書面を提出し(この準備書面はYらに送達さ...
《解 説》
一、道路交通法における速度違反罪の罪数についてほぼ同旨の判断を示した二つの控訴審判決をまとめて紹介する。
事案の内容は、いずれも、被告人が名神高速自動車国道上を高速度で運転を継続した際、二つの地点(①事件では約五九・四キロメートル、約三〇分の間隔、②事件では約一九・四キロメー...
《解 説》
本件は、被告人が、日本電信電話株式会社(NTT)の企業通信システム事業部長として、大規模な複合通信システムのコンサルティング、設計、建設、販売、保守等の業務に従事していたところ、リクルート社がNTTから提供を受けた高速デジタル回線を分割して再販売する事業(いわゆる回線リセール事...
《解 説》
一、原告の夫亡Aは長年粉じん作業に従事した結果けい肺結核症に罹患し、昭和五二年九月に「健康管理区分四要治療」の決定を受けたが、昭和五三年七月自殺した(死亡時七四歳)。原告はAの死亡は業務に起因するものとして労災保険法上の遺族補償給付等を求めたが、被告はAの死亡の業務起因性を否定...