最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
一、本件は、原告(被上告人)二四名が、昭和四七年一二月から同五二年五月にかけて、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法(以下「措置法」と略称)三条一項又は公害健康被害補償法(現在の題名は「公害健康被害の補償等に関する法律」となっている。以下「補償法」と略称)四条二項に基づき...
《解 説》
一、Y区立の中学生Aが自殺したことにつき、Aの両親Xらは、(1)Y区に対して①教育諸法上の在学契約関係に基づく安全配慮義務違反を理由として債務不履行による損害賠償請求、②教育関係法規に基づく安全配慮義務違反を理由として国家賠償法一条一項に基づく損害賠償請求を、(2)教員の給与そ...
《解 説》
1 X(原告・控訴人・上告人)は、スペインで購入した外国製刀剣であるサーベル二本を鉄砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)一四条一、二項、銃砲刀剣類登録規則(以下「登録規則」という。)一条に基づいて「美術品として価値のある刀剣類」に該当するとして登録申請をした(これに...
《解 説》
一、本件は、就業規則の退職金に関する規定が、退職金の支給は「支給時の退職金協定による」と定めている場合において、退職金協定が失効したのち新たな退職金協定が締結されるまでの間に退職した労働者の退職金の額は、何を基準にして確定すべきかという点が争われた退職金支払請求事件である。事案...
《解 説》
一、民法八四三条は「後見人は、一人でなければならない。」旨規定している。本件は、右規定にもかかわらず、事実上複数の後見人が選ばれてしまったという珍しい事件であり、その複数の後見人が代理して締結した売買契約の効力が争われた。この点は、一審、原審では争点になっておらず、上告理由で初...
《解 説》
商標制度には、登録により発生するという主義(登録主義)と、使用により発生するという前提に立つ主義(使用主義)の二つの立法例がある。わが国では登録主義が採用されている。この法制の下では、登録要件に合致する商標は、使用されていると否とを問わず登録される。しかしながら、登録主義の下に...
《解 説》
Xら夫婦は、郷里の村に合計一億二〇〇〇万円を寄付し、所得金額の申告に当たり、これを控除して申告したところ、Y税務署長は所得税法七八条一項の定めるところに従い、右寄付金額を所得金額の二五パーセントを限度とし、これから一万円を引いた額のみを控除額として更正及び過少申告加算税賦課決定...
《解 説》
一、X1とX2の次男Aは、昭和六一年八月当時、Yの設置、管理する船橋豊富高校一年に在籍し、相撲部に入部していたが、同月七日、他の高校との相撲の合同合宿に参加するため、相撲部のB教諭に引率されて、天羽高校に赴いた。そして、Aは、同校において練習に参加し、中学生、高校生、大学生を相...
《解 説》
一、本件事案は、警察官がAに対する逮捕状に基づき逮捕のためAの居宅付近で張り込み中、たまたま通り掛かった原告Xを身体特徴からAと誤認し、その確認のための職務質問を開始するとともに任意同行を求めたが、その際の有形力行使の有無程度が問題となったものである。Xは、滋賀県警の警察官三名...
《解 説》
一、本決定は、市長が発した公金の支出命令が違法な財務会計上の行為に当たることなどを理由として提起された、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づく損害賠償請求訴訟において、地方公共団体が、被告を補助するためにした参加(補助参加)の許否につき、消極に解したものである。
二、この問...
《解 説》
原告は、被告が、当時、町長であった被告補助参加人町の住民であるが、被告補助参加人が、業者との間で随意契約の形で締結したし尿処理施設建設工事請負契約が、地方自治法及び施行令が例外的に随意契約によることができると定めた場合に当たるとする旨の積極的かつ合理的な理由がないとして、住民訴...
《解 説》
本件は、建設作業中の左官職人が急性心臓死したので、その妻が、右死亡は、業務に起因するものであるとして、労災補償保険法上の遺族給付等を求めたのに対し、被告が、右死亡と業務との起因性を否定し、不支給処分をしたので、それを争って、右不支給処分の取消を求めた事案である。
法律的な争点...
《解 説》
一、本判決は、業務外の交通事故により傷害を負い、就業規則の定めに従って自然休職となった従業員が治癒を理由に申し出た復職を会社が拒否し、出勤した右従業員を帰宅させようとして課長らの管理職が体を押したことによって、右従業員が転倒して再度負傷したため、休職期間が満了したという事実を認...
《解 説》
一、本件は、先に本誌七五五号一六四頁に掲載された東京地判平2・2・21の控訴審判決である。本件では、不当労働行為の成否について、多岐にわたる問題点があったが、本判決は、判示事項に掲げた二点において原判決の判断を覆しているので、ここでは、この二点に絞ってコメントするに止まる。その...
《解 説》
一、本件は、賃貸建物の譲渡担保権実行による所有権移転に伴い、賃借人が差し入れていた保証金の返還義務者が争われた事例である。
原告Xは、昭和五九年、被告Y1からその所有にかかる建物の一部を賃借し、保証金四九七〇万円を預託していたが、その後昭和六一年一月にY1は右建物をY2に譲渡...
《解 説》
一1 本件は、ゴルフ会員が会費の支払いを怠ったために除名にされて全員資格を失った者が、原告となって、いわゆるゴルフ会員権が高額に売買されていることから除名によりその権利を失うことを不服とし、かつ、会員を除名されても一般にゴルフ会員権が譲渡されていることを主張して、会社であるカン...
《解 説》
判旨事項に関する範囲で事案を述べると、反訴原告が、反訴被告に対し、継続契約において一方的に商品供給を停止したとして損害賠償請求を求めたのに対し、反訴被告には、支払い能力に不安がある客観的状況があるので、いわゆる不安の抗弁を根拠に、商品供給を拒むことができると、主張した事案である...
《解 説》
一、本件は銀行預金の権利者が争われた事例である。
亡AはY銀行に当座、総合、普通の三口、合計約二億円の預金を有していたが、そのうち当座預金の大部分はAの死亡後に他から入金されたものであり、また普通預金は、これもAの死亡後に、Aの子であるBが「故A相続人B」の名義で開設したもの...
《解 説》
本件は、二階建倉庫に設置された商品名クマリフトという荷物運搬用の昇降機(電動ダムウェーター、以下「本件クマリフト」という。)を使用して一階で荷降ろし作業に従事していたAが本件クマリフトに上半身を挟まれ死亡した事故につき、本件クマリフトの納入業者でその据付工事を担当したY1及びA...
《解 説》
一、本件は、交通事故により脳挫傷等の傷害を負った高齢の被害者(事故当時八二歳の男性)が、事故のため痙性四肢麻痺の後遺障害が残存したことから、将来の介護費用として将来の差額ベッド代及び付添看護費を、主位的には定期金賠償で、予備的には一時金賠償で求めた事案であり、本件判決は、「不法...
《解 説》
一、Xらの息子Aは、国の設置する中学校の三年生であったが、放課後、教室においてささいなことから他クラスの生徒であるYと喧嘩になり、Yに後頭部等を殴打され、その結果クモ膜下出血により死亡した。Xらは、Yに対して不法行為に基づく損害賠償請求をするほか、Yの両親に対しては監護教育義務...
《解 説》
一、本件は売掛代金請求事件であるが、特に法人格否認と和解条項中のいわゆる清算条項の効力が争われた事例である。
食品卸売商であるXは、昭和五九年一一月以降「株式会社商店流通共済会全国事業本部」なる会社に食品(もち)を継続的に販売していたが、右会社が代金を支払わないので、Xは法人...
《解 説》
登記商号権者からする、不正競争の目的による類似商号使用の差止請求であるが、不正競争行為の把握の見地からすれば、不正競争防止法一条一項二号を根拠とする営業主体混同行為と競合するところがある。
本件は代理店契約に含まれる競業避止義務を顧慮して、詳細な事実関係を検討した上での不正競...
《解 説》
一、本件は、賭博ゲーム機一〇台を備えたゲーム店を経営するAが、経営者に準ずる地位にあるBや従業員のCとともに約一か月半にわたり、Dほか不特定多数の客を相手として、いわゆるゲーム機賭博を行ったという事案である。争いになったのは、従業員Cの罪責であり、弁護人は、単純賭博罪の幇助犯が...
《解 説》
本件は、労働組合の争議行為の一環として、会社側の操業再開を妨害した行為が、労働組合の正当な行為として認められるか、威力業務妨害罪としての可罰的違法性を有するかが争われた事案である。
被告人らは、生コンクリートの製造、販売を業とするA社の従業員であり、甲労働組合を上部団体とする...
《解 説》
一、Xは、不動産の賃貸等を業とする株式会社であるが、昭和二一年三月、印刷業を営むY1に対し、自己所有の五階建店舗ビル(東京都中央区銀座六丁目所在)のうち約二三〇〇平方メートルを期間八年と定めて賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、その後右賃貸借契約は期間の定めのないものとして法定更新...