最も長い歴史をもつ判例実務誌
1 捕虜の待遇に関する1949年ジュネーブ条約66条、68条は、同条約が日ソ間で発効する以前に帰国した原告らには適用されず、戦犯容疑者、スパイ容疑者として抑留された他の2名についても適用することはできない 2 自国民捕虜補償の原則が第二次大戦後国際慣習法として成立したとは認められない 3 憲法11条、13条、14条、17条、18条、27条、40条等は国に対する損害又は損失の補償請求権の根拠となる実体法規ではないし、29条3項を根拠とする請求も、成立しない 4 国家賠償法1条又は不法行為による損害賠償請求は、日本は外交の権能をもたず国家主権を対外的に発動する手段をもたなかったのであり、戦争損害に対する補償立法義務は憲法の予定しないところであるから成立しない 5 原告らが降伏敵国人員として戦勝国ソ連の取扱いに委ねられたことについて国に安全配慮義務違反の責任があるとはいえない
ラオス難民に在留特別許可を与えなかった法務大臣の裁決及びこれを前提とする入国管理局主任審査官の退去強制令書発付に違法性がないとした事例
1 土地収用法に基づく収用裁決の取消訴訟において、収用委員会は収用裁決を適法に行ったことを主張・立証すれば足り、同委員会に事業認定が適法に行われたことまでを主張・立証させるのは相当でないとして、事業認定の適否については審判をしないとした事例 2 土地所有者らは口頭による意見陳述の権利を放棄したなどとして、収用委員会の審理手続が適法であったとされた事例
無線配車指示の拒否、上司に対する暴言を理由とするタクシー運転手に対する諭旨解雇が権利の濫用に当たり無効であるとされた事例
1 法人の構成部分を名宛人とする救済命令について、当該法人はその取消を求める法律上の利益を有するとされた事例 2 要求の正当性等についての説明がないことを理由とする団体交渉拒否が不当労働行為にあたるとされた事例
ビルの賃貸借に際し賃貸人に対し10年間据置後10年間均等分割返還の約定で金員を貸し渡した賃借人が賃貸借契約の終了を理由として当初の弁済期到来前に右貸金の返還を求めた事案について、金銭消費貸借契約において定めた期限の利益喪失事由に該当する事実が認められないとして賃借人の請求を棄却した事例
1 電波料額及び支払条件についての意思の合致がなくてもテレビ放送契約が成立するとされた事例 2 電波料の支払条件についての協議が整わないことを理由とするテレビ放送契約の中途解除が有効とされた事例
本案訴訟が棄却され被保全権利が存在しないことが確定した場合において、仮処分不当執行による仮処分申請人の不法行為責任が認められた事例
1 脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血を急性胃腸炎と誤診した医師に、患者の死亡に対する起因力80パーセントの限度で損害賠償義務が認められた事例 2 医師に患者の家族に対する説明義務の不履行はなかったと認められた事例 3 患者家族の「一か八かで手術断行を」という医師への申入が確固たる自己決定権の行使ではなく、また医師が自己の信念に従った診療をしている場合に極めて成功率の低い手術の強行を求めるもので、適正な自己決定権の行使とはいえないとされた事例
1 出産時の胎児血液循環障害による脳性麻痺につき、胎位を横位と診断しながら事前に帝王切開の準備をしておかなかった医師に過失を認め、その寄与割合を3分の2と判断した事例 2 出産に関する医療契約を、胎児の出生を条件とし、当該児を受益者とする第三者のためにする契約であるとする主張が認められた事例
1 民法社団法人において定款の定める専務理事の理事長代理規定が理事長死亡時に適用なく法人の代表は民法の個別代表原則によるとされた事例 2 同法人の社員資格の取得に理事会の承認が不要とされた事例 3 同法人の社員総会の理事選任等の決議が社員に対する招集通知欠缺のため、或いは議事の進行が会議体の審議に値しないため、不存在とされた事例 4 同法人の新たに選任された理事らの任期が満了し、或いは死亡してもなお同理事らの選任総会決議の不存在確認請求の訴えの利益が失われないとされた事例 5 終局判決後取下げられた訴えの再訴が許されるとされた事例 6 同法人の法人登記の抹消登記請求の訴えの利益がないとして却下された事例
米国法人が米国の裁判所に日本法人を被告として不法行為等に基づく損害賠償を求める訴訟を提起した後、右日本法人が日本の裁判所に右米国法人を被告として右損害賠償債務等の不存在確認を求めて訴訟を提起した場合に、日本の裁判所の国際的裁判管轄を肯定した事例
1 特定人が宗教団体における宗教上の地位(法主)に就任したか否かは、宗教団体自身の判断を基礎として決すべきであるとされた事例 2 宗教団体の中止命令に反してなされた全国檀徒大会の開催が住職罷免事由に当たるとされた事例
米国ニューヨーク州に本拠を置く外国法人を被告とし、日本の子会社の解散・従業員の解雇を不法行為であるとする損害賠償請求事件についてわが国裁判所の管轄権が肯定された事例
1 外国裁判所の離婚判決についても民訴法200条の適用がある 2 アメリカ合衆国カリフォルニア州の離婚判決が民訴法200条2号の要件を欠きわが国において効力がないとされた事例 3 外国裁判所の離婚判決が日本国において効力を有しないことの確認を求める訴えが許容された事例
破産管財人が裁判所の許可を受けずに管財人名義の預金の払い戻しを受けたことについて、銀行が善意・無過失であったとはいえないとして、その払い戻しを無効であるとした事例
1 改正前の法律を適用すべきことを明示しない法令適用の誤りと判決への影響(積極) 2 単純一罪である廃棄物の処理及び清掃に関する法律14条5項、25条1号違反の所為を併合罪として処理した法令適用の誤りと判決への影響(積極) 3 廃棄物の処理及び清掃に関する法律にいう事業者である会社の業務に関し同法14条5項、25条1号の違反行為をした同会社代表者の処罰にあたって同法29条の適用を遺脱した法令適用の誤りと判決への影響(積極)