最も長い歴史をもつ判例実務誌
1 不正競争防止法1条1項1号の規定にいう「商品」とは、少なくとも有体物であることを要するから、控訴人らの創作した「タイポス45」と称する平仮名及び片仮名の書体は、これに含まれない 2 同号の規定によって保護される客体は、信用の保持者たる商品主体、すなわち商品取扱業務に従事する業務主体に限られる 3 文字の書体には法律上の保護に値する利益はないとして、控訴人らが創作した「タイポス45」と称する書体に類似する活字及び母型の製造、販売行為による不法行為の成立が否定された事例
映画「エーゲ海に捧ぐ」の配給元・宣伝主体から承諾を得ている被告レコード会社がその映画の宣伝とワコール(洋衣料製造・販売)の宣伝を兼ねたキャンペーンソングとして制作れたヒット曲「魅せられて」収鑑のレコードに、「エーゲ海のテーマ」の表示及び「池田満寿夫監督作品「エーゲ海に捧ぐ」イメージソング」との表示を付した行為は、そのレコードの内容を右映画主題曲であるとの誤認混同を生じさせることにはならないとして、右映画主題曲の著作権に関する総管理権を有する原告音楽出版社から提起された不正競争防止法1条1項5号に
商品ウイスキーに使用する「ゴールデン・ホース」の表示及びその英語表示並びに図形化表示が、同じく商品ウイスキーについての著名商品表示である「ホワイトホース」、その英語表示、図形化表示と類似していないとして、不正競争防止法上の、いわゆる商品表示主体混同行為が否定された事例
回転式立体組合せ玩具であるいわゆるルービック・キューブの本体及び容器の形態が、その技術的機能に由来する部分を除外しても、その輸入発売元である債権者の商品表示として、玩具業界・一般消費者問に周知であったとし、これに類似する玩具の本体・容器を販売する債務者の行為が、仮に販売経路を異にするとしても、不正競争防止法1条1項1号の商品主体混同行為にあたるとして、当該商品の販売差止・執行官保管の仮処分決定が認可された事例
原告日産自動車株式会社が販売する純正部品の包装に使用してきた標章が、不正競争防止法1条1項1号にいう商品表示として周知性を有するとして、同一標章を使用して自動車部品を輸出している被告に対する差止請求及び損害賠償請求が認容された事例
被告が原告製品の性能につき虚偽の事実を記載した文書を原告取引先に送付したことが、営業上の信用を害するものであるとして不正競争防止法1条1項6号に基づく差止請求及び損害賠償請求は認められたが、その虚偽事実の内容と送付態様からして信用回復措置請求までは認められないとされた事例
原告会社が、その経営する料理店芦月で、その創始にかかる、いわゆる紙なべ料理の営業に使用している「紙なべ」の表示が、大阪市附近で知名度が高いとしても、東京附近にいたるまで周知であったとはいえないとして、東京都で「紙なべ」の看板を掲げ紙なべ料理を営業する被告らに対する不正競争防止法1条1項2号に基づく差止請求及び損害賠償請求が却けられた事例
債権者が漢方製剤の薬方名に付して使用する商品番号は、自社商品の品名表示機能を有するにとどまり、不正競争防止法1条1項1号における、いわゆる商品表示としての自他商品識別機能は備えないとして、同一商品番号を使用する他のメーカーに対する差止請求が排斥された事例
優先権に基づく特許出願の際に提出される第一国出願の明細書は、優先権証明の効力を持つに過ぎず、発明の内容を開示させる資料とはなり得ないから、その翻訳の際の誤訳があったことを理由に、明細書中の「臭素」を「硼素」と補足することは許されない
審決取消訴訟係属中になされた分割出願は、適法になされた別個独立の特許出願手続にほかならないから、訴の取下があっても、有効な出願手続として存続する
特許請求の範囲に「又は」の文字が使用してあっても、一つの構成要件の中の構成分肢を選択的に表現した単一の発明を表示するに過ぎず、又その一つの分肢による構成に拒絶の理由があれば、他の構成について判断をなすを要せず、発明は全体として拒絶されうる(ただし同一発明の点で審決取消)
1 権利者の特許発明の目的物と相手方が生産・販売する物と同一であること、そしてその物が出願前公知でないことが主張・立証されれば、特許法104条の推定が働き、この推定を覆すためには、相手方において自ら実施している方法を開示するだけではなく、それが特許発明と異なる方法であり、それを侵害するものでないことを主張・立証しなければならない(ただし侵害否定) 2 特許発明の目的物質に属する化合物中に公知のものがあっても、相手方が生産・販売する物質が目的物質に包含され、これが公知でない以上、特許法104条の推定
実用新案登録無効審決が確定しても、その無効審判継続中に締結された当該実用新案権に関する通常実施権設定契約に、意思表示の錯誤による無効は認められないとして、実施の許諾を受けた者からする契約金・実施料返還請求が却けられた事例
審判事件理由補充書の送達がなく、被請求人である意匠権者に対し答弁をする機会を与えずに、刊行物を引用する新たな無効事由の主張を採用した無効審決は、重要な手続違背があるとして、取消された事例
被告が小犬のぬいぐるみを製造・販売する行為は、いわゆるキャラクター商品として著名なスヌーピーのぬいぐるみの意匠権を侵害するものとして、差止請求および販売価格の10%に当たる実施料相当額の損害賠償請求が認容された事例
商標法26条1項1号に基づき商標権の効力の範囲外とされうる自己の名称は、普通に用いられる方法で表示されているものに限られるから、めだつ字体など特殊な態様で表示されているときには、他人の商標権の効力によって抹消されても違法な執行とはいえない
被告らが、制糖作用のある健康食品として販売していたバンザクロ・ガバの果実を顆粒、粉末等にした商品に「制糖茶」等の標章をしたことが、原告の登録商標「制糖」(指定商品、第29類 茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷)の商標権を侵害するとして販売利益額の20%相当の損害賠償が認められた事例
1 第9類に属する「食料または飲料加工機械器具」を指定商品として登録された商標「つきたて」は、電気餅つき機に使用される場合、その効力は、業務用餅つき機に限られ、家庭用電気餅つき機には及ばない 2 原告が電気餅つき機に使用している「つきたて」なる表示(商標)は、電気餅つき機の効能を表現・連想するにとどまり、特別顕著性を有しないので、不正競争防止法1条1項1号ないし2号にいう商品表示・営業表示には当たらない
1 類似商標の使用につき、登録商標権者に対抗できる、いわゆる先使用の要件としての、需要者の間に広く認識されているといえるためには、1県及びその隣接県の一部程度にとどまらず、相当広範な地域において認識されることを要するとして、先使用権の抗弁が否定された事例 2 登録商標者からする類似商標の使用に対する差止請求が権利濫用に当たるとして否定された事例
ひろく歌いつがれながらも作曲者不明とされてきた軍歌「同期の桜」の楽曲は、西条八十作詞、大村能章作曲による「戦友の唄」(昭和14年頃レコード録音・発売)を元歌とする著作物であるとの事実認定に基づき、原告が作曲した「神雷部隊の歌」の複製物であるとして、著作権確認、レコードの製作・販売行為の差止、著作権料支払を求めた請求がすべて却けられた事例
科学等の著述に当たって、その分野の先行文献を引用するか否かは、著述者の自由に委ねられているものであって、特定の先行文献について、これを引用しない以上、当該先行文献の著作者の著作者人格権を侵害する問題は生じない
著作権の信託的譲渡を受けている音楽著作権の管理団体から提起された、著作権ないしその支分権に基づく演奏差止請求ならびに損害賠償請求が認容された事例
1 一級河川長良川堤防の決壊につき、河川管理者たる国に国賠法2条の管理の瑕疵に基づく損害賠償責任を肯定した事例 2 計画高水流量、計画高水位以下の洪水で破堤した場合、その事実のみから、当該河川の設置・管理に瑕疵のあることが推定される旨の主張を否定した事例 3 破堤が通常の予見の範囲を超え、客観的に管理責任の範囲を逸脱する異常な降雨、洪水に起因する旨の不可抗力の主張を否定した事例 4 水害による物的損害の算定につき、損保方式を含む定型的算定方法を一部採用した事例