最も長い歴史をもつ判例実務誌
宗教団体の指導者の女性関係の乱れを指摘した文書による名誉毀損行為につき、被摘示事実の公共利害該当性、目的の公益性を肯定しながら、真実性の立証等がないとして、名誉毀損罪の成立を認めた事例
自衛隊の自動車の運転者が運転上の注意義務を怠ったことにより生じた同乗者の死亡事故と国の右同乗者に対する安全配慮義務違反の成否
農業協同組合との間の消費貸借契約に基づく理事の債務について組合に対する預金を担保として提供した第三者が農業共同組合法33条違反を理由として右消費貸借契約の無効を主張することができないとされた事例
1 当座勘定取引契約において取引印として届け出られていない実印を使用して偽造された手形、小切手の支払をした銀行に過失があるとされた事例
2 債権者の従業員のした行為が債務不履行の原因となっている場合と過失相殺
差押物を占有する第三者に対する引渡命令について右第三者は占有が正当な権原に基づくものであることを理由に執行抗告をすることができない
大作映画の公開寸前の著名な映画監督に対し、酒場での行為をマスコミに公表するとして畏怖せしめ、執拗に金銭を要求した所為は、社会的に許容される限度を超えた違法な行為で、民法96条1項の「強迫」に該当する
1 証券会社の社員が顧客に勝手に支店長名義で某商社株の信用取引で損金を生じたときは証券会社が負担するという誓約書を差入れた場合でも、その顧客がかかる誓約書は証券会社が正式に出したものでないことを認識していたか認識しないことに重大な過失があるからその損金は顧客が自分で負うべきであるとされた事例
2 証券取引法64条2項の「相手方が悪意であった場合」とは相手方が当該外務員が権限外の行為を行うことを知っていた場合と、それを知らないことに重大な過失がある場合を含むと解するのが相当である
堀こたつの側部、底部の木枠が長年の使用により蓄積過熱されて炭化状態になり、火種容器内の灰の量が通常に比べ少量であったため、過度に過熱された底部木枠が発火したことによって生じた火災について、堀こたつを使用していた者の重過失を否定した事例
建物賃貸借の解約の申入れの正当事由の判断において、貸主側と借主側の事情の比較衡量だけでは、双方共に自己使用の必要性等の根拠が十分とはいえないが、貸主側が立退料を支払うことによって、正当事由を具備するに至ることを認めた一事例
建物の登記簿上の所有名義人が真実の所有者と相異する場合に、真実の所有者は、右名義人が自己名義の所有権保存登記をするのを容認していたのであるから、右名義を真実のものと信じて買い受けた第三者に対し、登記の不実であることを対抗し得ないとした事例
登記官が、誤った登記簿及び公図を登記簿に備え付け、申請に応じてその登記簿謄本を交付し公図を閲覧させたことについて、登記官の過失を否定した事例
土地収用法39条1項の裁決申請に基づき、同法71条により決定された補償額の相当性が争われた事案において、原、被告双方の提出した鑑定評価の内容を具体的に比較検討し、被告東京都の決定額を相当である旨判示した事例
公正証書に表示されている請求権と実体上の請求権との間の不一致が著しいから、公正証書は実体に合致しない無効のものであるとして、公正証書の執行力の排除を認めた事例
売買契約の対象となった土地の一部の私道部分が、建築基準法42条2項の指定道路であった場合、売主は、民法570条、566条による損害賠償責任を負い、買主の被った損害額は、私道部分の対価として支払われた更地価格から、私道としての価格を差し引いたものとなるとした事例
アメリカ合衆国民が原告として提起した訴訟において、右原告が民訴条約特例法10条又は日米友好通商航海条約4条1項によって訴訟費用担保提供義務を免除されることはないとした事例
1 破産者が連帯債務を弁済することが破産法72条5号にいう「無償行為」に該当するか(消極)
2 破産者が根抵当権の解除の交換条件として期限前に債務を一括弁済したことにつき、それが破産者の経営再建を図ることに出たことを理由に、破産法72条4号による否認が認められなかった事例
建築基準法上の接道義務を満たしていない住宅敷地の売買において、売主が幅員4メートルの私道を設置する旨の特約をしながらこれに違反したとし、買主がその後私道敷を取得するに要した費用の約1割を損害賠償として支払うよう命じた事例
1 農地の無許可転用賃貸借がその後の事情により有効とされた事例
2 農地の転用許可ないし届出申請請求権の消滅時効が完成した事例
袋地であることを認めたうえで、当該土地が袋地となった経緯から囲繞地通行権の主張は民法213条によるべきであるとして、当該被告に対する請求を棄却した事例
訴訟の終局近く敗訴が必至となった段階において、もっぱら本件債務の履行を免れるため、実質上無価値に等しい債権を廉価で取得し、これを自働債権としてした相殺が、権利の濫用として許されないとされた事例
保証限度額の定めはなく、保証期間を1ヶ年とし、当事者の一方から何らの意思表示がない限り更新される旨の約定のある連帯保証契約が何度も更新され、実質的には期間の定めない継続的保証と同様になった場合につき、信義則により保証責任を軽減すべきではないとした事例
従業員甲が、使用者の工事現場において使用者の指示による作業に従事中、共同して作業をしていた従業員乙との具体的な作業手順に関する意見の対立を直接の原因として、乙に対し暴行を加えて傷害を負わせた場合、右甲の行為は使用者の事業の執行につきなされたものであるとして、使用者に損害賠償を命じた事例
マンションの1室を賃借している賃借人の息子が、友人と共にマンション建物の玄関付近に屯し、専用モータープールをバイクで走り廻り、モータープールに駐車していたマンションの住居者の車の間や、マンション建物内の便所でシンナーを吸ったり、賃借部屋で毎夜の如く騒ぐなど、判示のような迷惑行為をしたことを理由に、賃貸借契約における信頼関係が破壊されたとして、賃貸借契約の解除を認めた事例
1 周囲に建物が建ち、多量のかんな屑が集積放置されている裏庭において、火災注意報等が発令されているような状況下で焚火をした主婦に「失火ノ責任ニ関スル法律」の但書にいう重過失を認めた事例
2 失火による損害賠償債務についての代物弁済契約が公序良俗に反し無効とされた事例
1 登記簿閲覧の監視につき登記官に過失があるとして国家賠償請求を認容した事例
2 改ざんされた登記簿の謄本を信頼して土地を買受けた不動産会社の代表者に売主及びその所有権につき調査・確認を怠った過失があるとして過失相殺した事例
自動販売機の買入代金の立替金請求事件において、クレジット会社の本社、支店、営業所の所在地の裁判所を管轄裁判所とする旨の合意があっても、買主の住所地の管轄裁判所に移送するのが相当とされた事例
別除権を有する破産債権者の届出債権に対する債権調査期日における破産管財人の異議は、右破産債権届出の時効中断の効力を失わしめるものではないとされた事例
保安林に指定された山林の売主は、買主が第三者に転売することも予測してその指定する第三者に対し直接所有権移転登記をすることを予め承諾していた場合には、売買の時点で右第三者との関係で、保安林への地目変更登記手続をしておく義務があるとされた事例
旅館業を目的とする建築物を建築しようとする者は当該建築及び営業に関する所轄官庁への認可申請前に町長の同意を要する旨及び右同意の要件を定めた飯盛町旅館建築の規制に関する条例(昭和53年飯盛町条例19号)2条、3条が、旅館業法より高次の規制を定めるものとして、同法に違反し無効とされた事例(福岡高裁昭和58年3月7日)
仮換地指定処分がされたのちに従前地について共有物分割がされた場合において、土地区画整理事業の工事がいまだ完了していないときは、仮換地指定変更処分を経ないでされた換地処分は違法であるとされた事例(東京地裁昭和57年10月21日)
民法のラジオアナウンサーとして採用された女性職員に、他の職種である業務局編成事務部(主にキーパンチャーの業務)勤務を命じた配転命令が無効とされた事例(東京高裁昭和58年5月25日)
地方公共団体である市の女性職員が、5等級から4等級へ昇格させられなかったのは、女子であることを理由とするもので、性別による差別的取扱いであるとして、国賠法1条に基づき損害賠償を求めた請求が排斥された事例(名古屋高裁昭和58年4月28日)
国電ホーム上に視力障害者の転落防止用の点字ブロックを敷設していないことが駅ホームの設置・管理の瑕疵にあたるとされた事例(大阪高裁昭和56年6月29日)
高価品の鉄道運送委託にあたり価額の明告をしたが要償額の表示をしなかった場合には、運送人の運送品滅失による損害賠償責任額は、鉄道運輸規程の定める限度に限られるとされた事例(東京高裁昭和58年6月29日)
昭和43年10月の新宿駅騒乱事件の中心的役割を果たした中核派幹部ら21名に対する国鉄の損害賠償請求が認められた事例(東京地裁昭和58年6月27日)