最も長い歴史をもつ判例実務誌
判例タイムズ 469号 (1982年08月01日発売)
≪法と人生≫ 離婚の自由/三淵嘉子
≪西東間話≫ 法思想史における利益衡量概念/深田三徳
道路の設置・管理の瑕疵について(13)/國井和郎
シンポジュウム 大阪空港大法廷判決をふりかえって/淡路剛久/國井和郎/鎌田薫/野村豊弘/井上治典/滝澤正/畠山武道
刑事法ノート 30/土屋眞一
捜査実務ノート 2/寺尾淳
展望判例法/坂詰幸次郎
裁判-法廷の中と外 20/梶原史次
銀行実務と民事裁判 54/石井眞司
英米法律事情 50/上原正夫
ドイツ民事訴訟法関係新判例紹介 44/野村秀敏
-判例紹介-
安中公害裁判第一審判決、カネミ油症事件第二陣第一審判決、カネミ油症刑事事件控訴審判決、さつまあげ中毒事件差戻し後第一審判決、ほか
≪霞ヶ関散見≫ 堀木さんと雨
1 亜鉛製錬所排出物を原因とする大気汚染、水質汚濁、土壌汚染による農業損害につき加害企業の故意責任を認めた事例
2 右農業損害の賠償請求につきいわゆる包括請求方式の可否
3 農業損害に関する損害額の算定
4 加害企業の損害賠償債務消滅時効の援用を権利の濫用と認めた事例
1 食品製造販売業者が食品製造過程において有毒物質(PCB)を食品に混入させ販売した過失があるとされた事例
2 食品製造販売業者の代表取締役と民法715条2項の代理監督者責任
3 新しく開発生産した有毒物質(PCB)を食品製造販売業者に販売供給する食品製造関連業者の注意義務
4 右注意義務を怠った過失があるとされた事例
5 カネミ油症発生の原因と食品製造関連業者の責任
6 食品製造販売業者、その代表取締役及び食品製造関連業者の三者相互間の責任関係を損害の範囲を同じくする別個独立の不真正連帯債務とした事例
7 食品衛生法上の行政権限不行使が違法でないとされた事例
8 損害賠償額の年令別包括一律請求を排斥し、症状の重症度を中心とする個別的事情を参酌して慰謝料を算定した事例
1 株式会社に対し会社更生法39条の規定により弁済禁止の保全処分が命じられたのちに契約上の会社の債務の弁済期が到来した場合とその履行遅滞を理由とする契約解除
2 買主たる株式会社に更生手続開始の申立の原因となるべき事実が生じたことを売買契約解除の事由とする旨の特約の効力
1 共有物分割の訴えにおいて分割の方法を具体的に指定することの要否
2 共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損するおそれがあるときと裁判の内容
1 公職選挙法142条1項にいう「領布」にあたるとされた事例
2 不特定又は多数の者に対する領布行為につき共犯関係が成立する者の間における選挙運動文書の配付と公職選挙法142条1項にいう「領布」
1 農地法80条2項による売払いは私法上の行為であって、同条項に違反する売払いにも民法177条の適用がある
2 民法724条にいう「被害者」が未成年者で父母の共同親権に服している場合、同条にいう「法定代理人」は親権者たる父又は母のいずれか一方で足りる
額面総額78億余円のいわゆる日銀小切手の遺失物の価格は額面総額の100分の2と評価するのが相当とし、その100分の5を捨得者に報労金として支払うよう命じた事感
小学生の校外における悪戯の有無について小学校教諭がした事情聴取が違法ではないとして損害賠償請求が認められなかった事例
契約の当事者が異なることにより主張がかみ合わないとして、被告ら主張の抗弁事実を判決事実摘示欄に記載しないとされた事例
いわゆるファイナンス・リース契約の成立が肯定されリース期間満了前にリース物件が引揚げられた場合でもリース料の残額の支払義務は影響を受けないとされた事例
宝くじ1枚が当選したが、それが数人で共同購入した分か個人で購入したかが特定できない場合には、賞金は出資金の割合に応じて分配すべきものとされた事例
1 道路法に基づく市道の路線の廃止若しくは認定、区域の決定若しくは供用の開始又はこれらの公示は、地方自治法242条の2に規定する住民訴訟の対象とならないとした事例
2 市長のした道路建設が違法、不当であるとしてその原状回復を求める住民監査請求がされた場合において、右道路建設のための工事代金として公金を支出したことを理由とする右市長に対する損害賠償の請求が、右監査請求の対象と実質的な同一性を有するとして、監査請求を経由したものとされた事例
登記官が所有権保存登記申請について審査、受理及び登記記入する手続に対する執行停止が緊急の必要がないとして排斥された事例
1 地方自治法242条の2第2項1号と2号の各出訴期問の関係
2 監査委員が地方自治法242条3項に基づいて行う勧告の意義
市長職務代理者が市のごみ焼却炉建設工事の請負契約を随意契約の方法によって締結したことが違法であるとして、右代理者に対し損害賠償を請求した住民訴訟が認容された事例
条例に基づかない職員に対する違法な一律昇給処分であっても、その後にこれを正当化するための改正条例が成立し遡及適用されることになった場合には、右処分は適法となるとされた事例
長男が自分の父の財産につき弟妹の将来の相続分ないし遺留分の割合を減少させる方便として計画し、右父と長男の妻、長男の長男及びその妻の3名が同時に養子縁組するなどの事情がある場合に、当事者間に養子縁組をする意思がないとして、縁組無効を認めた事例
分娩時の子宮側壁破裂により産婦が急性心不全死した場合において、保存血の常備のほか医師の止血、転送等の措置にも義務違背がないとされた事例
胞状奇胎等との診断により予想される絨毛上皮腫に対する抗癌剤MTXの予防的投与につき、担当医師らの過失がないとされた事例
交通事故で受傷して職務を休んでいた代表取締役にその間の役員報酬を支給した会社は加害者に対し事務管理による請求をなしうるか(消極)
株主が会社に対し額面株式と無額面株式との相互転換を請求するには、転換しようとする株券を会社に提出することを要するか(積極)
1 更生計画の、更生担保権の権利変更及び弁済方法の項に「更生手続開始決定日前後の利息、損害金はすべて免除を受け、免除後の額を債権元本とする。」との定めがある場合、免除の対象となるのは更生計画認可時までの利息、損害金に限ると解すべきである
2 更生計画の、更生担保権の権利変更及び弁済方法の項に債権元本が分割払いと定められ、弁済期後の遅延損害金については定めがない場合も、弁済期後の遅延損害金が会社更生法241条により免責されることはない
紛失した線引小切手について婦人服等の卸売商が店頭で住所氏名の知れない婦人客から代金の一部として取得したことに重大な過失が認められないとした事例
振出日の記載を欠く確定日払の約束手形の支払呈示をもって、当該手形の裏書人に対する遡求権保全の要件として有効視する取引上の慣習があるか(消極)
原告商号に類似する商号を使用する被告の使用許諾の抗弁を認めて、商号使用の差止及び右商号の抹消登記手続等を求める原告の請求を棄却した事例