最も長い歴史をもつ判例実務誌
建物の建築請負契約の注文者に対し下請業者が元請業者との間の下請契約に付した所有権留保特約に基づき新築建物について所有権を主張することが権利の濫用になるとされた事例
住居専用、店舗(医院)併用住宅の建築しか認めない建築協定が締結されているにもかかわらず、信義則上天理教教会併用住宅の建築が許されるとされた事例
対抗力を欠く土地賃借人に対する土地所有者(転得者)の土地明渡請求につき、権利濫用ないし背信的悪意者にあたるとする賃借人の抗弁を排斥した事例
幅員約50センチメートルの通路があっても、袋地性は否定されないとしながら、囲繞地通行権の主張及びこれに基づく妨害排除請求が権利濫用として排斥された事例
1 原告の所有地であることについて原被告間に争いがない場合でも、被告が現に右原告の所有地を妨害しているときには土地所有権の確認を求める訴の利益があるとされた事例 2 原告の所有地内に投棄された土砂の取除き工事及び断崖の崩壊防止工事を求める請求が権利の濫用として許されないとされた事例
地上権者が支払うべき地代につき積算方式による結果に重点をおき、スライド方式、賃貸事例比較方式の結果並びに地上権設定目的の変更について承諾料が支払われていないことを参酌して適正額を算定した事例
土地の賃貸借期間満了を原因とする建物収去土地明渡請求訴訟において正当事由を補強する趣旨で金8億円の支払いと引換えに土地の明渡が認容された事例
建物の適正賃料額につき、鑑定結果を採用せず更新の際合意された賃料額を基準としその後に生じた事情(敷地賃料の増額・公租公課の増大・物価の上昇等)を考慮してこれを算定した事例
借地約330平方メートルの半分を占める庭についてなされた借地法6条の異議につき、庭が賃借人の職業上建物と一体をなすものとみるべきであるとして、その正当事由の存在を否定した事例
申立人が予定するペンシルビルの建設は都市開発上望ましいものとはいえないが、共同ビルの建設が不可能であればやむを得ないとして、相手方の権利濫用の主張を排斥し借地条件の変更を許可した事例
土地の使用貸借を賃貸借に切換えるに当り従来の使用貸期間5年を賃貸期間に算入した賃貸借期問の定めが借地法2条、11条により無効とされた事例
1 土地の賃貸期間を短縮するため、その始期を5年余り遡らせて賃貸期間を20年とした合意が、借地法11条により無効であるとされた事例 2 建物が老朽化し、すでに市場価値が失われているにかかわらずなお建物として使用可能であるとして「朽廃」したものとは認めなかった事例
ショッピングセンタービル内の店舗について賃貸借期間満了を原因とする右店舗明渡請求訴訟において、正当事由を補強する趣旨で明渡移転料として金1400万円の支払いと引換えに店舗の明渡が認容された事例
建物の賃貸借に当り貸主に預託された保証金の一部につき償却、補充の特約がある場合、右償却、補充部分は礼金又は更新料の性質を有するものと解すべきで右特約は法定更新の場合には適用されないとされた事例
賃貸建物の積算賃料の算定にあたり建物敷地が更地価格で取得されたものではないことを理由に鑑定に使用された適正利回り率を減額修正して計算した事例
市場の移転を理由とする市場内店舗の賃貸借の解約申入れにつき、右移転の計画に必要性、合理性、相当性があり、かつ、市場内店舗の賃借人の大多数が右計画に賛成しているうえ、反対する賃借人(原告)に対しても充分な配慮、説得に努めたものであるとして正当事由が認められた事例
自衛隊機搭乗員の練度不足のためクルー編成が夜間飛行に適しないのに、その上司が練度不足の情報伝達を欠いたため事故が発生したとして、国の安全配慮義務違反を肯定した事例
1 立て掛けてあるドア約20枚を倒れないよう支える作業に従事していた女子従業員が右ドアの重量を支えきれずに転倒し死亡した事故につき、会社の安全保護義務違反による損害賠償責任が認められた事例 2 安全保護義務違背を理由とする損害賠償債務は債権者からの催告を受けた時に遅滞に陥る
大学医化学研究室の技手が有機合成実験により生成する反応生成物の分析と精製のためペーパークロマト実験をした際、ベンゼンガスを吸引したためベンゼン中毒症に罹患したとして、右技手の大学に対する安全配慮義務不履行を理由とする損害賠償請求が排斥された事例
ビル管理会社の保守係員が電気室内の計器用変圧器の裸充電部に頚部を接触して感電死した事故につきビル管理会社の安全配慮義務違反が否定された事例
建築工事の元請業者と孫請業者の雇用者との間に実質的使用従属関係があるとして右元請業者の雇用者に対する安全配慮義務が認められた事例
原因は不明であるが、プレス機械の安全装置が動いて安全であるべき状態のときに、プレス機械が急に動いて手指を切断された事故につき、会社の安全配慮義務違反が認められた事例
1 河川根固工事現場において、下請人の従業員が、護岸から切梁りH鋼を経て作業台船へ渡る途中、護岸から切梁りH鋼に掛け下したハシゴの下端支持部が滑ったため、ハシゴから転落して負傷した事故につき、元請人と下請人の従業員との間に使用従属関係があるとして、元請人に安全配慮義務を尽さなかった債務不履行責任を認めた事例 2 右事故を原因とする債務不履行による損害賠償について、事故発生の日から遅延損害金の支払を命じた事例
新幹線の列車内で飲食物等の販売の業務に従事していたアルバイト学生が、深夜右勤務を終え、同僚と共に使用者の設けた宿泊所に帰る途中、歩道上の公衆電話ボックス内にあった毒入りコカコーラを同僚が拾い上げたので、これを右宿泊所に持ち帰って飲んだために死亡した事故につき、使用者に安全配慮義務違反等による損害賠償責任がないとされた事例
金銭貸借の際授受された証書や白紙委任状に偽造の文字を加えて、借主を他人の債務の連帯債務者にし、その所有不動産にその債務のための根抵当権を設定させたような権利関係を作出した上、競売を申し立て取り立てようとした金融業者を「悪徳金融業者」等の見出しで報道した新聞記事につき、部分的に不正確なところがあっても大筋において証拠による認定事実と合致しまた当時警察本部長の定例記者会見における公式発表に基いて裏付取材をした記事であることから、「大筋において真実と合致し、かつ真実と信じるにつき相当の理由があった」と認定し、金融業者に対する名誉毀損の不法行為に基く損害
1 捜索差押許可状に記載と異なる場所の捜索が違法とされた事例 2 捜査機関の犯罪事実の公表について名誉毀損の不法行為が認められた事例
第一種住居専用地域において、地盛のうえ2階建を築造し、隣家への日照を阻害したことに違法性があるとして、その建築主および建築業者に対し損害賠償責任を認めた事例(但し、家屋一部撤去の請求部分は棄却)
1 府条例により、日影規制対象区域より除外された土地上に、高さ約18メートルの6階建の建物が建築されたために、その北側にあるX1宅X2宅の通風が阻害された外、冬至における日照時間がX1宅は1時間未満、X2宅は2時間30分となったとして、X1につき金100万円、X2につき金50万円の損害賠償請求を認め、その日照時間が冬至において4時間30分以上あるX3X4については、損害賠償請求を認めなかった事例 2 民法235条により窓に目隠の設置が命ぜられた事例
工業地域における鉄筋5階建共同住宅の建築につき、附近住民からなされた日照、通風被害を理由とする建築工事続行中止の仮処分申請の却下された事例
廃材等を燃やすために掘られた穴に雨水等がたまってできた水たまりに幼児が転落して死亡した事故につき、工作物責任を肯定した事例
1 マンションのガス配管施設が民法717条1項にいう土地の工作物に当るとされた事例 2 マンションの賃貸人兼管理人が、賃借人と重畳してガス配管施設を占有しているとして、右ガス配管の施設のガス元栓口からガスが流出爆発して起きた事故につき、右施設の設置・保存の瑕疵によって生じた損害の賠償責任を負うとされた事例
東海道新幹線高架下に設置された吸上変圧器室の金網の破れ目を放置したこと等をもって土地の工作物の保存の瑕疵に該るとした事例
1 競輪選手に対する日本自転車振興会等のあっせん保留及び自転車競技会のあっせん辞退が不法行為を構成するとされた事例 2 右自転車競技会のあっせん辞退は行政事件訴訟法44条にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するか(消極)
横領の嫌疑により辞職を余儀なくされた私立高校校長から事態を画策した学校の理事及び教員に対する慰藉料請求が認容された事例
1 ベルトコンベアの電流コードの欠陥によって生じた感電死事故につき、被用者であるコンベアの保守係の過失を認めて使用者責任を肯定して事例 2 無免許運送業者の逸失利益の算定につき不確実要素部分35パーセントを控除した事例
1 いわゆるマルチ商法を企画・実施した会社及びリクルート(加盟員の募集、昇進)に当たった加盟員の不法行為責任を認めた事例 2 マルチ商法の被害者の慰謝料請求を一部認めた事例
長年に亘り、一般交通の用に供されてきた私有地の道につき、市長による道路の認定手続がなされていないため道路法上の市道とはいえないけれども、右認定手続がなされた場合と同視し得る状況にあること、その後に右道の敷地の所有権を取得した者からの取得をするに際し過失があったこと等諸般の事情から、右道の所有権に基づく道の明渡請求が権利の濫用に当るとし、また、市及び市からその使用を認められた者の道の使用が違法ではなく不法行為を構成しないとして、右道の明渡請求及びその使用による賃料相当の損害金(不法行為に基づくもの)
プレス機械による作業を停止した際に誤って機械を作動させたために発生したプレス工員の受傷事故につき、使用者に安全配慮義務を怠った過失があるとして損害賠償責任を認め、かつ、右工員にも過失があるとして、6割の過失相殺を認めた事例
依頼者が、弁護士に訴訟委任をした事件について、弁護士に無断で相手方と和解をし訴を取下げた場合において、弁護士報酬請求及び右取下げが不法行為を構成するとしてなされた損害賠償請求が排斥された事例
旧法に基く不動産任意競売の競落人が、競売対象物件とされた土地につき、別訴で他人の所有権が確定された結果現実に取得できなかった場合でも、執行裁判所に過失がなかったとされた事例
書籍の訪問販売業者(原告)が顧客との間に書籍売買契約を成立させたのち、同業者(被告)が同書籍を1割引で販売する旨申し向けて顧客をして右売買契約を解除させ、自ら同顧客に売込みをなした行為が信義則上不法行為を構成するとされた事例
釜ケ崎越冬闘争実行委員会(越冬実)が釜ケ崎地区の労働者に夜食の弁当を支給し、その代表者がハンドマイクを使用して大阪市当局を糾弾する旨の演説を行ったところから、これを阻止しようとした警官隊が労働者側と対立状態となったところ、その際に警察官が右越冬実のメンバーの1人に暴行を加え、傷害を負わせたとして、大阪府に対する国家賠償請求が認容された事例
市の同和行政批判を目的とする市政報告会であることを理由とする市立公民館の使用拒否が違法であるとして市に損害賠償責任を認めた事例
被害者の告訴、供述により恐喝事件の被疑者として逮捕、勾留されたことを理由とする損害賠償請求を被害者、捜査官、裁判官に帰責事由がないとして棄却した事例
1 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和27年法律127号)の合憲性(積極) 2 第二次大戦におけるわが国の民間罹災者に対し戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和27年法律127号)所定の補償と同様の補償を与える法律を国会議員、国会、内閣総理大臣等が発案、制定しない行為と国家賠償責任の成否(消極)
執行官作成の評価書本文の評価物件には幅員約6メートルの未舗装道路が通じている旨の記載と原告の競買申出及び競落との間に因果関係がないとされた事例
執行官が不動産を著しく低額に算定評価したことにつき過失があるとされたが、右不動産の所有者に損害を生じたとは認められないとして損害賠償請求が棄却された事例
登記官が土地の登記簿を移記するに際し、その表示の記載を誤った過失があるとして、国に国賠法1条の損害賠償責任を認めた事例
登記済権利証書が偽造であることを看落して登記申請を受理した登記官に過失がないとして国賠法1条1項の賠償責任が否定された事例
高校1年生の水泳部員のプール死亡事故につき、右プール取水口に防護柵を設けなかったこと等をもって市のプールの設置、管理に瑕疵があったとして賠償責任を認め、かつ、右事故の発生について被害者の過失割合を7割とした事例
全寮制をとる研修所の寄宿舎内で起こった寮生間の暴力行為による死亡事故につき、研修所職員に過失があるとして、設置者である県に損害の賠償を命じた事例
放課後担任教諭の許しを得て教室内で居残り学習中の児童(小学5年生)が同級生の画鋲付紙飛行機遊びにより負傷した事故について担任教諭に過失がないとされた事例
陸上自衛隊における榴弾砲の実弾射撃訓練の際、隊長が砲弾の過早破裂により死亡した事故につき、公の営造物とみるべき砲弾の設置又は管理に瑕疵があったものとし、国の不可抗力及び消滅時効の抗弁が排斥され損害賠償請求が認容された事例
河川を暗きょにする工事中の集中豪雨による家屋浸水被害につき、河川管理者に国賠法2条の管理の瑕疵に基づく損害賠償責任が認められた事例
公営運動場の万年塀の一部が運動場利用者の行為によって落下し、見物客が受傷した事案につき、営造物の設置、管理に瑕疵があったとした事例
3歳4ヶ月の幼児が、府の設置管理にかかる公園内において、児童遊戯場から約10メートル先のコンクリート製擬木と鉄柵との間の約40センチメートルの間隙をくぐり抜け、約7メートル先にあった水深約1.6メートルの池に転落して溺死した事故につき、府に公の営造物である池の設置管理に瑕疵があったとして、国賠法2条1項による損害賠償を命じた事例