最も長い歴史をもつ判例実務誌
1 威力業務妨害罪によって保護されるべき業務にあたるとされた事例 2 バス会社のストライキに際し組合側の争議手段として行われた車両確保行為が威力業務妨害罪又は建造物侵入罪の違法性に欠けるところがないとされた事例
不動産の引渡請求権者が債務者による目的不動産の処分行為を詐害行為として取り消す場合と自己に対する所有権移転登記手続請求の可否
1 勾留期間延長の裁判が従前の勾留期間経過後に準抗告審で取り消された場合と検察官が身柄釈放の手続をとるべき時期 2 違法に身柄を拘束されていたことが勾留の裁判の効力に影響を及ぼさないとされた事例
アスファルト舗装の校庭でハードル走実技の授業中、中学2年の女子生徒が転倒死亡した事故について、右舗装と事故の発生の間に因果関係がないとした事例
公示送達によって判決の送達を受けた者についてその者の責に帰すべからざる事由によって控訴期間を遵守することができなかった場合には当らないとして控訴提起の追完が認められなかった事例
賃貸建物の朽廃度が近い将来において大修繕を必要としその費用が改築と同じような金額を要する場合に、当事者双方の事情を考慮し解約申入の正当事由の存否を判断した事例
不正競争防止法違反被疑事件における捜索差押令状の請求並びにその執行につき警察官の判断が社会通念上著しく妥当性を欠くものとは認められないとして、地方自治体に対する損害賠償請求を棄却した事例
借地法10条の規定に基づく建物買取請求権の行使を受けた土地賃貸人が抵当権の登記ある建物の第三取得者に当る結果、民法577条の規定により右買取代金債務につき弁済期が到来しないとして右債務に基づく同時履行の抗弁権及び留置権の主張を排斥した事例
1 体育センターが民訴法46条の「権利能力なき財団」と認められた事例 2 権利能力なき財団が社会的評価を侵害された場合、慰謝料とは別個の変形損害の賠償請求権を取得するとされた事例
1 夫が生計の中心的地位にあるとしても、妻が建物所有者である場合、夫は当然にはその敷地の独立の占有者とはいえない 2 夫が妻所有の建物の大改造費用を負担しても、それにより夫は当然に建物共有権を取得するものではない。
動産の共有持分権に基づく引渡詰求訴訟において、共有者の一人である被告の使用収益権の主張が持分権の濫用であるとされた事例
1 隣接する二つの字の公図上の距離、角度の正確性に疑問が多いときには、占有状況及び公簿面積と実測面積の比較を重視して境界を確定するのが相当であるとされた事例 2 原告が取得時効の完成により隣接地の所有権を取得した結果境界確定の訴の当事者適格を喪失したとして右の訴を却下した事例
建物が賃借人の費用で建築され、かつ敷地価格の40%に相当する敷金が授受されているときの適正家賃は敷地賃貸借に準じて算定するのが相当とされた事例
占有者が一時使用のための賃貸借契約に基づいて土地を占有している場合の占有者の賃借の意思は、賃借権の時効取得の要件として必要な賃借の意思には該当しない
交通の不便な山間へき地の発電所に勤務し、ダムの保守管理等を担当する電力会社の職員が、バスに乗り遅れたため、自己所有の原動機付自転車を運転して社宅より出勤途上、県道から転落して死亡したことにつき、利益較量上、使用者側にその責任を負担させることを相当とする特別の事情があるとして、業務上の事由による死亡事故とされた事例
1 差入れた本の一部を謄写用インクで抹消して収監者に交付した場合、原状に復することができないので当該不許可処分を取り消す訴えの利益はないとされた事例 2 抹消箇所が原告との関係で、いずれも監獄内の紀律を害するに至る相当程度の蓋然性があるので、憲法19条、同21条に違反しないとされた事例
市道配置計画自体の瑕疵を主張してその建設工事の続行禁止を求める仮処分申請に対し、右仮処分は、結局、行政処分である道路の区域決定ないし区域変更決定の実効性を失わせることになるから行訴法44条により許されないとして却下した事例
労働契約確認・賃金支払請求訴訟の仮執行宣言付勝訴判決に基づき賃金及び一時金の支払いを受けている労働者のその後の昇給差額及び一時金の支払いを求める仮処分申請が保全の必要性がないとして却下された事例
郵便局の公式行事として行われたレクリエーション行事に参加後、自家用自動車を運転し、右競技の表彰式場に赴く途中、交通事故のため負傷した郵便局職員の災害は、レクリエーション行事の中断中に発生したものであり、右運転行為に郵便局長の支配管理が及んでいなかったとして、右災害と公務性との相当因果関係を否定した事例
国家公務員の勤勉手当算出の基礎となる勤務期間の算定については、不承認欠勤による給与減額期間を除算すべき旨の規定は、48分の欠務により1時間分の給与が減額された場合にも適用あるとした事例
労組事務所貸借契約書中の、防犯防火等その他緊急やむを得ざるときは使用者が事務室内に立入る等のことができるとの条項から、労組は使用者に対し右一定の場合以外立入ることの禁止を求める請求権を取得したとして、この権利を被保全権利としての労組事務所立入禁止等の仮処分命令が認可された例
変形脊椎症の治療としてのイルガピリンやメチロン等投与の結果、患者に対し失明同然の傷害を与えた医師の責任が肯定された事例
遮断機の設置を欠いたことが踏切の設置に瑕疵があった場合にあたらないとして踏切事故についての損害賠償請求が排斥された事例
1 交通事故による大腿骨々折等の受傷後、患者が癒着性股ヘルニアによるショック状態のため死亡した事故について、交通事故による傷害と死亡の結果との間の因果関係がないとされた事例 2 交通事故後患者が癒着性股ヘルニア等急性化膿性腹膜炎を惹起して死亡した事故について、医師の診断ないし転医を含む治療上の過失が否定された事例
原告が被告の送達場所を知りながら又は重大な過失によりこれを知らずに公示送達の許可を得て勝訴判決を取得した場合には、過失なくして公示送達を了知しえずそのため訴訟追行の機会が与えられなかった被告は、民訴法420条1項3号に基づき再審の訴を提起できるが、原告には右の故意・重過失がなかったとして婚姻無効の再審請求が棄却された事例
離婚調停中における妻から夫に対する幼児引渡請求の人身保護請求事件につき、夫と妻の双方の諸事情に明白な優劣がない以上、幼児が夫とその家族のもとで裁判時まですでに6か月(請求時まで4か月余)にわたって安定した生活をしているという幼児の生活環境の安定性・連続性を重視すべきであるとして、妻の右請求を排斥した事例
賃借権譲渡許可申立人(賃借人)において、いったん賃借権譲渡許可の承諾を得たものと信ずる場合においても、承諾の有無につき現に相手方(賃貸人)との間に争いが存し、協議による解決が得られないため、申立人は、予測される紛争の生起を避けるため借地法第9条ノ2第1項により承諾に代わる許可の裁判を求める途を選んだときは、借地人の申立の利益は当然に肯定される
非堅固建物所有目的で土地を賃借しながら10年間建物の建築に着手しなかった借地人による堅固建物所有目的への借地条件変更の申立が認容された事例
増改築にかかる建物に建築基準法規違反が現存していても、これが所管官庁による行政指導等により是正される可能性がある場合には、借地人からの増改築許可の申立が許されるとし、主文で建築基準法所定の建築確認が得られる限度で許可することを明示してこれを認容した事例
考案の構成要件に方法的記載が許されるのは、最終的な物品の形状・構造・組合せを特定するのに必要な場合だけであって、方法上の創作は実用新案法の保護の対象には含まれない。したがって方法そのものの作用効果は考案の進歩性の根拠とはならない(拒絶審決維持)
公開されたベルギー特許明細書の原本は、特許法29条1項3号にいう外国において頒布された刊行物に当らないとして、これと同一発明であることを理由に特許要件を否定した審決を取消した事例
1 審決で名宛人とされていなくとも、もともと共同出願人であり、審判手続で共同審判請求人であった者と主張して審決取消の訴を起した以上、審判の当事者に準じて、原告適格がある 2 登録を受ける権利の共有者がした共同出願の拒絶査定に対する審判請求において、共同出願人の全員が代理人に審判請求を委任していたところ、代理人が誤って審判請求書の請求人欄に原告1名の記載を脱漏したが、出願時の委任状に委任事項として審判請求が記載してあれば審判請求時に改めて委任状の提出を要しない実務慣行があることなどを考慮して、共同出願人全員で審判請求をしたものとし、原告の氏名・住所の脱落は特許法131条1項の方式違反に過ぎないから、133条1項により補正を命ずべきで、その手続を経ずに請求を却下するのは違法であるとして、審決を取消した事例
1 無効審判において、実体的審理に入らず、特許法135条のいわゆる不適法を理由とする審決についても、この取消訴訟の被告は、特許法179条但書で定められた通り、審判の被請求人である 2 審判請求後約1年7月間請求の理由を全く補充しなかったことは、特許法131条1項3号の請求の理由を欠く方式違背となるが、この不備は補正可能なもので、135条にいう「補正のできないもの」には当らない。したがって133条1項により補正を命ずべきで、その手続を経ずしてただちに審判請求を却下するのは違法である
商標法47条所定の除斥期間のある無効原因に基づく審判書の提出も、特許法19条による発信主義の適用があるものとして、到達主義によって除斥期間経過後の不適法な請求として却下した審決を取消した事例
縦書の「漫画」の文字を小さく左側にそえている横書「エロイカ」の標章を表題に付した漫画雑誌の販売・頒布が、登録商標「EROICA」(指定商品、文房具類を除く印刷物)の商標権を侵害するとした差止請求が擬制自白によって認容された事例