最も長い歴史をもつ判例実務誌
[目次]
第1 はじめに
第2 前提となる判断枠組み
第3 留め置き等による移動の自由の制約に関する適法性審査
第4 留め置きの際の有形力行使に関する適法性審査
第5 追尾をめぐる事項に関する適法性審査
第6 押し掛けをめぐる事項に関する適法性審査
第7 その他の問題となる事項
管轄移転の請求が訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかである場合における刑訴規則6条による訴訟手続の停止の要否
入国管理局の職員が難民不認定処分に対する異議申立棄却決定を受けた被退去強制者を同決定告知の翌日に集団送還の方法により本国に強制送還する措置を講じたことが難民不認定処分について取消訴訟等の提起により司法審査を受ける機会を実質的に奪ったものであって憲法32条で保障する裁判を受ける権利を侵害し,国家賠償法1条1項の適用上違法であるとされた事例
日本の会社等が,外国の銀行に対し,同銀行の従業員の不法行為により損害を被ったと主張して,損害賠償を求めた訴えにつき,日本の裁判所が管轄権を有する(民事訴訟法3条の3)ものの,「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し,又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情」(同条の9)があるとして,訴えを却下した原判決を維持した事例
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき,父である相手方が,母である抗告人に対して,子をその常居所地国であるオーストラリア連邦に返還するよう求めた事案において,子の常居所地国がオーストラリア連邦であるとは認められないとして,子の返還を命じた原決定を取り消し,子の返還申立てを却下した事例
遺産分割の審判を本案とする審判前の保全処分における被保全権利は,既存の権利ではなく,本案の終局審判で形成される具体的権利であると解され,その発令には本案の終局審判で当該係争物の給付が命ぜられる見込みが一応あるといえることの疎明を要するとした事例
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づき,父である相手方が,母である抗告人に対して,子をその常居所地国であるフィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)に返還するよう求めた事案において,子の常居所地国はフィリピンであるとした上で,同法28条1項4号(重大な危険)の返還拒否事由があるとは認められないとして,子の返還を命じた原決定を取り消し,子の常居所地国がフィリピンであると認めることはできないとして,子の返還申立てを却下した事例
最高速度時速50kmと指定された右方に湾曲する道路において,時速91kmを超える速度で進行させたことにより,自車を路外のガードパイプに衝突させるなどし,同乗者を死亡させるなどした事案において,その走行速度が,自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条2号に規定する「進行を制御することが困難な高速度」に当たり,また,同号に規定する罪の故意が認められるとされた事例
法定管轄裁判所に訴えが提起され,管轄違いを理由とする専属的合意管轄裁判所への移送の申立てがされた事案において,訴訟の著しい遅滞を避け,又は当事者間の衡平を図るため,専属的合意管轄裁判所に移送せず,法定管轄裁判所において自ら審理及び裁判をするのが相当であるとされた事例
新型コロナウイルス感染症のまん延下の緊急事態宣言期間中に発出された新型インフルエンザ等対策特別措置法45条3項による飲食店に対する営業時間短縮命令の違法性を認めたものの,都知事が職務上の注意義務に違反したとは認めず,被告(東京都)の国家賠償法上の責任を否定した事例
中央卸売市場の移転先用地を取得するため複数筆の土地を正常価格の目安となる価格の約1.37倍から約1.41倍の価格で買い取る各売買契約を締結した都の財務局長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法であるとはいえないとされた事例
金融商品取引法166条1項5号の「職務に関し知った」及び同条3項の「伝達を受けた」の該当性について判断された事例
医療水準上未確立であり,治療効果の点でも不確実性を伴う療法を患者に実施した医師について,当該療法の当該患者に対する有効性に関する重要な事実(様々ながんの中でも当該患者の疾患である遠位胆管がんには当該療法が有効であったという症例が存在せず,当該医師自身も当該療法が遠位胆管がんに対して効果があった症例に接したことはなかった事実)を説明しなかったとして,説明義務違反を認めた事例
国公立大学医学系研究科の博士課程に在籍し,満期退学後に客員研究員であった者が,指導教員であった准教授からいわゆるアカデミックハラスメント等の違法行為を受けたと主張して,同准教授及び国立大学法人に対して損害賠償請求をした事案において,国立大学法人に対する損害賠償請求が一部認められた事例
日本及びD国の国籍を有する原告(妻)が,チェコ及びE国の国籍を有する被告(夫)に対し,離婚を求めるとともにD国及びE国の国籍だけでなく,チェコ国籍を有することに争いがある長男の親権者を原告と定めること等を申し立てた事案において,親子間の法律関係の準拠法については,法の適用に関する通則法により,原告は日本法(通則法38条1項ただし書),被告は約24年間チェコに在住していたこと等からチェコ法(通則法38条1項本文),長男はチェコ国籍を有するものと認めた上で約2年半チェコに居住し永住権も取得していること等からチェコ法(通則法38条1項本文)がそれぞれ本国法となり,子である長男の本国法と父である被告の本国法が同一であるから,親子間の法律関係はチェコ法が適用(通則法32条)されるとし,長男の親権者・監護については,チェコ民法においては,離婚後も親責任を有するが,被告は様々な国に転々と赴任し長男の養育環境としては不安定な面があることは否定できないなどとして原告の単独監護(チェコ民法907条1項)に委ねることが相当であるとし,原告の請求を認容した事例
少年が,共犯者とともに友人の自殺を援助したという自殺幇助保護事件において,犯情は検察官送致をするほどに重いとは認められず,少年の行状等も考慮すると,保護処分を相当と認めるが,安易に不適切な解決方法を選択しやすいとの問題点を自覚させ,適切な社会性を身に付けさせるためには,長期間の系統立った矯正教育が必要であるとして,少年を第1種少年院送致(2年程度の相当長期間の処遇勧告)とした事例