最も長い歴史をもつ判例実務誌
[目次]
1 はじめに
2 杉浦論文の要旨
3 慰謝料額
4 裁判例の検討
5 杉浦論文の根拠
6 他の検討点
7 おわりに
ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否
交通反則告知書の受領を拒否したことにつき道路交通法130条2号に当たると解するのは信義に反するなどとして同号該当性を否定した原判決には法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
タクシー会社の運転手数名が速度超過運転を繰り返し,同社の運転業務の統括運行管理者がその常態化を容認していたとしても,統括運行管理者は自らタクシー乗務員として自動車を運転することはないこと等から危険性帯有者とまでは評価できず,統括運行管理者に対する運転免許停止処分は国家賠償法上違法であるとした原審の判断が維持された事例
相手方(原審申立人)(以下「相手方」という。)である妻が,別居中の夫である抗告人(原審相手方)(以下「抗告人」という。)に対し,婚姻費用の分担を求めた事案で,原審は,家庭不和に陥った原因が専ら相手方にあったとまではいえないとして,抗告人による権利濫用の主張を排斥したところ,抗告審は,別居と婚姻関係の深刻な悪化について,その経過の根底には,相手方の長男に対する暴力行為とこれによる長男の心身への深刻な影響があり,相手方の責任が極めて大きいとして,相手方の年収,現在も抗告人が相手方の住む住宅ローンを支払っていることや,長男を養育し,その教育費等を支払っているなどの経済的状況に照らせば,抗告人に対する婚姻費用分担請求は信義に反し,又は権利の濫用として許されないとし,原審判を取り消して相手方の申立てを却下した事例
1 以前から,麻薬取締官に依頼されて覚せい剤取引の情報提供を行い,麻薬取締官らにその取引状況を監視させるなどの捜査協力を行いつつ,当該密売の仲介者等として利益を得ていた被告人が,共犯者から覚せい剤密輸への協力を依頼された際に,麻薬取締官の求めに応じてこれに加担した事案について,被告人に営利の目的が認められ,共同正犯が成立するとされた事例
2 覚せい剤密輸等を行う際の被告人の保身のため,ひいては密輸等による利益のためになされていた捜査協力を量刑上被告人に有利に考慮する余地はなく,また,被告人が,麻薬取締官から捜査協力のために覚せい剤密輸への加担を求められるなどの助長を受けていたという事実により,被告人の意思決定に対する非難の程度が原判決の量刑を左右するほど減弱するとはいえないなどとされた事例
尊厳死の宣言書の登録と管理を行う事業が,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律2条4号の「公益目的事業」と認められた事例
和牛預託商法の取締りに関する情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条6号イの不開示情報に該当するとされた事例
認知をする日本国民と認知を受ける者との間の血縁上の父子関係を前提としないでされた認知の国籍法3条1項にいう「認知」該当性
私立大学の大学教授の65歳定年後の再雇用に関して,再雇用による雇用継続を期待することに合理性が認められ,大学の再雇用拒否は許されず,定年後も再雇用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものと判断した事例
他人がした投稿を引用する形式で自己のアカウントから投稿する方法(リツイート)によりなされたツイッター上の投稿が,名誉毀損に該当するとして,リツイートをした者に民法709条の不法行為責任が認められた事例
1 破産者のした弁済が,破産法162条1項2号の「その時期が破産者の義務に属しない行為」に該当するか否かが争われた事例
2 破産者のした弁済に対する破産法162条1項1号イによる否認が,債権者の単独の意思表示による相殺処理も可能であったとの理由で認められなかった事例
3 破産法162条1項柱書の「既存の債務についてされた担保の供与」の該当性につき,対抗要件具備の経緯が問題とされた事例
4 譲渡禁止特約の特約に反して債権を譲渡した債権者の破産管財人が,譲受人に対し,譲渡禁止特約の存在を理由に債権譲渡の無効を主張することが認められた事例
療養病床で入院治療を受けていた患者が,深部静脈血栓症を原因とする肺血栓塞栓症により死亡したことについて,静脈血栓塞栓症の予防措置や検査を実施していなかった医師の注意義務違反が否定された事例
被告(銀行)の従業員が原告らに対して行った架空投資案件への勧誘行為が,被告の事業の範囲内の行為ではなく,また,仮に事業の範囲内とみる余地があるとしても同従業員の担当する職務の範囲に属する行為ではないとして,被告の使用者責任(民法715条1項)が否定された事例
生活保護費の不正受給を理由とする生活保護法78条に基づく徴収金決定を受けた者がした生活保護費から徴収を受ける旨の同法78条の2第1項の申出に基づいて行われた徴収は,破産者の同意を得て行った相殺とみるべきであるとして,破産法162条に基づく否認権行使の対象とはならないとした事例
建物を共有するX1(夫)とX2(X1の父)が,建物を占有するY(妻)に対し,各共有持分権に基づき建物の明け渡し等を求めたのに対し,YはX1の建物の共有持分を夫婦の扶助義務に基づいて使用する権原を有するから,X1が被告に対して建物の明渡し等を求めることはできず,また,Yが共有者の一部の者であるX1との間で上記権原を有する以上,X2が被告に対し建物の明渡しを求めることもできないとされた事例
1 「相続分のないことの証明書」を用いて被相続人名義の不動産登記の一部を特定の相続人名義に移転させる登記手続が行われたが,同証明書の作成・交付によって相続分の譲渡又は放棄の法律効果は発生しないと判断された事例
2 被相続人の死亡時に共同相続財産である同人名義の建物を占有していた配偶者の相続開始後の占有の性質が自主占有になるとは認められないとして,他の相続人に対する相続開始日を起算日とする取得時効の主張が排斥された事例
3 被相続人名義の土地共有持分につき「相続分のないことの証明書」を用いた特定の相続人に対する持分移転登記が行われた時点をもって,同土地上の共同相続財産である被相続人名義の建物に対する同相続人の占有の性質が自主占有に転換したとして,他の相続人に対する同登記の完了日を起算日とする長期取得時効の完成が認められた事例
建物の一部についての建物転貸借契約において賃貸物件の引渡しをもって予約完結の意思表示とみなす旨の予約契約が定められていた場合に予約完結要件としての引渡しが認められた事例
内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP)等の施術によって患者に十二指腸穿孔が発生したことについての適応違反及び手技上の注意義務違反等の医師の注意義務違反,喀痰の誤嚥によって患者が低酸素性脳症に陥ったことについての痰の除去等についての医師及び看護師の注意義務違反などの医療従事者の注意義務違反がいずれも否定された事例
協議離婚した夫婦において,婚姻中に性交渉その他の性的接触がなかったことにより婚姻関係が破綻したと主張して不法行為に基づき被告(元夫)に対し慰謝料の支払を求める原告(妻)の請求について,夫婦間における性交渉等の重要性を認めつつも,単に性交渉等がなかったことだけではなく,その余の事情も考慮した上で,被告に不法行為責任を認めた事例
有罪判決を受け,執行猶予期間中である申立人が,逮捕時に報道された自己の氏名及び顔写真が現在もインターネット上に拡散されているため,就職に不利益であるとして名の変更の許可を求めた事案で,犯罪歴は,企業にとって重要な情報の一つであり,応募者として申告を求められた場合には,信義則上真実を告知すべき義務を負うものであるから,申立人が犯罪歴を企業に知られることで採用を拒否されるなど一定の不利益を受けることがあったとしても,それは申立人において甘受すべきであるから,戸籍法107条の2にいう「正当な事由」があるとは認められないとして申立てを却下した事例