最も長い歴史をもつ判例実務誌
[目次]
第1 はじめに
第2 北方ジャーナル事件最高裁判決
第3 北方ジャーナル事件最高裁判決以降の裁判例
第4 残された問題①-私人に対する表現行為における判断基準
第5 残された問題②-出版後の差止めにおける判断基準
第6 残された問題③-対象者の同定可能性
第7 残された問題④-販売を終了した出版物
第8 残された問題⑤-回収請求の可否
第9 おわりに
給与が振り込まれた預金債権に対する滞納処分としての差押処分が,給与により形成された部分のうち差押可能金額を超える部分について違法とされた事例
じん肺管理区分4の決定を受けていた元炭鉱労働者が,30年以上にわたって療養を続けた後,胃がんを併発した上,肺炎で死亡したことについて,業務起因性が否定された事例
1 複数の結果発生地がある場合における不法行為の準拠法は,最も重大な結果が発生した地の法である
2 原告一家(夫婦と子3人)が期間3年の予定で米国に海外赴任中に原告の夫とその不貞相手の不貞行為が始まり,不貞相手はこれらの事情を知りながら原告の夫との間に子をもうけて同居し,不貞行為を米国内で終了させずに切れ目なく日本国内でも3年半継続し,原告の夫が原告と子3人の収入及び住居の確保に無関心であるなど判示の事実関係の下においては,不法行為の結果発生地は日本であると判断された事例
児童相談所長が児童養護施設に入所中である未成年者の親権者に対する親権喪失の審判を求めた事案で,未成年者については,①親権者による不適切な監護養育から切り離されて保護されており,親権者による不当な引取要求に対しても児童福祉法28条に基づく入所措置または入所措置更新により対応することができること,②児童虐待防止法において親権者による面会通信や接近を禁止できると規定されていることから,親権者の未成年者に対する親権を喪失・停止させる必要があるのは,児童福祉法28条に基づく各措置,あるいは面会通信や接近の禁止によっては未成年者の保護を図れない特段の事情がある場合に限定されるとして申立てを却下した原審判を取り消し,親権者には民法834条所定の親権喪失事由があるとして,抗告人(原審申立人)の申立てを認容した事例
身寄りがなく,知的能力が十分ではない被相続人の相続財産(約4120万円)につき,同人の元雇用主が相続財産分与の審判を求めた事案で,被相続人が脳梗塞を発症してから死亡するまでの約15年間の支援にのみ着目し,分与額を800万円とする審判をした原審を変更し,抗告人(原審申立人)が被相続人を雇用していた期間(昭和47年~)にも着目し,知的能力が十分でなかった被相続人が4000万円以上もの相続財産を形成・維持することができたのは,抗告人(原審申立人)が約28年間にもわたり,労働の対価を超えて実質的な援助を含んだ給与を支給し続けてきたことや,被相続人を解雇した平成13年以降も緻密な財産管理を継続してきたためであるとして,分与額を2000万円とした事例
日本で婚姻後米国に移住して米国に帰化(日本国籍離脱届未了)した夫婦に関し,米国籍取得後に妻に無断で夫が日本方式の協議離婚届を提出し,かつ,夫に遺棄されて日本に帰国したと主張する日本在住の妻が,夫の死亡後に日本の検察官を被告として提起した離婚無効確認請求訴訟(夫の再婚相手であり日本から米国に帰化した米国在住の女性が被告を補助するため訴訟参加)につき,日本の国際裁判管轄を肯定した事例
父が石綿粉じんばく露作業により胸膜中皮腫を発症して死亡した後,その死亡に係る労働者災害補償保険法に基づく遺族補償年金等の支給を受けていた母が死亡した場合において,父の死亡に係る母の遺族給付等に関する調査結果復命書等の情報が,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項所定の「自己を本人とする保有個人情報」に当たるとされた事例
道路交通法36条4項所定の注意義務違反が認められるものの,義務違反と事故との相当因果関係が認められないとして,公安委員会がした運転免許取消処分が違法とされた事例
1 市の所有する土地の売却につき,市長が随意契約の方法により契約を締結したことが,違法とはいえないとされた事例
2 売却価額の決定に係る市長の判断に裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであったと評価されるべき事情は認められないとされた事例
1 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に沿って継続雇用制度を定めた就業規則等の趣旨に基づき,定年後に締結された再雇用契約が65歳まで継続するとの期待に合理的理由があると認めた事例
2 定年後に締結された再雇用契約の不更新が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上不相当であるとして,労働契約法19条2号に基づき,再雇用契約が従前と同一の労働条件で更新されたものと認めた事例
3 使用者による達成度評価が不当であることを理由とした賞与請求及び雇止め後の期間に係る賞与請求がいずれも認められなかった事例
地方公共団体の設置する中学校に勤めていた教員が過重業務等により精神疾患を発症し自殺したとして,遺族の国家賠償法に基づく損害賠償請求が一部認容された事例
B法律事務所に出入りしていた非弁護士(元弁護士)Y1との間で法律事務に関する相談をしていたXとB法律事務所の唯一の弁護士であるY2との間で法律事務に関する委任契約が成立したとして,XがY2に対して求めた委任契約に基づく受取物引渡請求が認められる一方で,Y1がB法律事務所に出入りする前にXから借り入れていた貸金の返還債務については,XがY2に対して求めた債権侵害の不法行為,Y1との共同不法行為又はY2の使用者責任に基づく各損害賠償請求がいずれも認められなかった事例
破産会社の破産管財人が,破産会社が発行した社債について,社債金の償還のほかに利息制限法による制限利率を超える利息の支払を受けた者に対し,過払金が生じているとして求めた不当利得の返還請求が認められた事例
本件歩道を自転車で通行していた原告が,本件歩道に敷設してあった視覚障害者誘導用ブロック上で転倒し,負傷したとして,本件歩道を管理している地方公共団体である被告に対し,国家賠償法2条又は民法717条に基づき,損害賠償を請求したのに対し,本件歩道には,両条文にいう「瑕疵」が認められないとして,請求を棄却した事例