最も長い歴史をもつ判例実務誌
[目次]
第1 はじめに
第2 使用者による請求について
1 訴訟物
2 賠償・求償の制限1(特約によらない制限)
3 賠償・求償の制限2(特約による制限等)
第3 被用者による請求について
1 逆求償について
2 返還等について
第4 おわりに
債権執行における差押えによる請求債権の消滅時効の中断の効力が生ずるためにその債務者が当該差押えを了知し得る状態に置かれることの要否
高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合が当該後期高齢者医療給付により代位取得した不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務についての遅延損害金の起算日
貸金の支払を求める訴訟において,前訴でその貸金に係る消費貸借契約の成立を主張していた被告が同契約の成立を否認することは信義則に反するとの原告の主張を採用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例
1 振替口座簿に開設された被相続人名義の口座に記載又は記録がされている振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分に対する差押命令の適否
2 振替株式等の共同相続により債務者が承継した共有持分について譲渡命令を発することの許否
ロードバイク型の自転車運転者が市道の路肩に設けられた排水溝の隙間に自転車の前輪が挟まれて転倒する事故により負傷した場合において,隙間に向かう勾配や隙間の幅,夜間における視認可能性・通行状況等を考慮しても,当該市道ないし路肩が通常有すべき安全性を欠いていたということはできず,その設置又は管理に瑕疵があったとみることはできないとされた事例
1 仲裁人と同じ法律事務所に所属する別の弁護士が,別件訴訟において仲裁事件当事者の関連会社の訴訟代理人の地位を有していたとの事実は,仲裁法18条4項の開示事実に該当する
2 仲裁人の所属する法律事務所が一般的な水準のコンフリクト・チェックシステムを構築している場合,仲裁人は同チェックシステムの存在を前提に,同チェックシステムで必要とされる行動をしている限り,合理的な範囲の調査を継続的に行ったものと評価すべきである
第1種少年院送致の決定が確定した住居侵入,強制わいせつ,窃盗保護事件について,非行事実の存在が認められないにもかかわらず保護処分をしたことを認め得る明らかな資料を新たに発見したことを理由とする保護処分取消しの申立てを棄却した原決定に対する抗告につき,新たな資料と他の全証拠を総合的に評価しても,非行事実の存在を認めた確定決定審の事実認定に合理的な疑いが生じるものではないなどと判断し,原決定の判断を是認して,抗告を棄却した事例
斜面に隣接する区域を対象とする開発行為に関する工事について,指定都市等の長が都市計画法81条1項2号に基づき同工事の注文主に対して同斜面の崩壊等の防止に必要な工事を行うよう命じないことが,行政事件訴訟法37条の2第5項所定の「行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるとき」に当たるとされた事例
労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料給付の各支給処分につき,それら支給額の基礎となる給付基礎日額にはいわゆる固定残業代を算入した上で算出しなければならないところ,これを算入していない誤りがあるとして,取り消された事例
宗教法人が運営する霊園内において独占的に墓所を分譲販売して建墓工事を行う権限があるとされる石材業者からその権限の一部を付与された指定石材店が,自ら販売した墓所につき独占的に建墓工事を請け負う権限を取得したが,他の業者による施工が宗教法人によって承認されたことについて,指定石材店から宗教法人に対する不法行為に基づく損害賠償請求を認めないとした事例
転貸建物の賃貸人が,賃借人の賃料未払を理由に原賃貸借契約を解除したものの,同解除は賃貸人と賃借人の合意による解除であり,これによって転借人の権利は消滅しないとして,賃貸人の転借人に対する建物明渡請求を棄却した事例
1 意思能力を欠く常況にある区分所有者に対してされた通知をもって,区分所有法59条2項の準用する同法58条3項に基づく弁明の機会が付与されたということはできない
2 上記弁明の機会を付与することなく,同法59条1項に基づいて競売の請求の訴え提起を議決した集会決議には瑕疵があるが,当該訴え提起後に選任された特別代理人に対して弁明の機会が付与され,集会決議において当該訴えに係る訴訟手続を継続する旨の決議がされれば,その瑕疵は治癒される
1 人間ドックの上部消化管造影検査(平成14年,15年実施)につき読影上の注意義務違反が否定された事例
2 ステージⅣの胃がんに対する胃切除手術(平成16年実施)につき,当時の医学的知見の下では適応を欠くとはいえないとする一方,説明義務違反を肯定した事例
3 説明義務違反につき自己決定の機会が奪われたこと等に係る慰謝料の限度で因果関係を肯定した事例
癌ではなかったのに癌であるとして甲状腺切除術が実施されたことについて,穿刺吸引細胞診を行った病理医の診断に関する過失,主治医である外科医の病理医に対して診断内容等を確認すべき義務違反及び説明義務違反の過失がいずれも否定された事例
1 分娩後,胎盤剥離徴候が認められなかった産婦に対し,産科医師としては,癒着胎盤である可能性を念頭において必要な手順を経た上で胎盤用手剥離を行う注意義務があったにもかかわらずこれを怠り,必要な手順を経ないまま強引に胎盤用手剥離を行ったとして,担当医師の過失が認められた事例
2 原告に生じている後遺障害は胎盤用手剥離における注意義務違反から生じたシーハン症候群によるものであるとした上で,原告の労働能力喪失率は,後遺障害別等級第9級に相当する程度を超えている一方で,後遺障害別等級第7級に相当する程度にまで至っているものとはいえないとし,後遺障害別等級第8級に相当するものと認められた事例
ジャーナリストである被告が執筆し,週刊誌に掲載された弁護士の弁護活動に関する批判的記事について,事実摘示部分の真実性ないし相当性を認め,論評部分については論評としての域を逸脱したものとはいえないとして,名誉毀損による不法行為の成立を否定した事例