最も長い歴史をもつ判例実務誌
Yが投資資金名下にXから金員を騙取した場合に,Xからの不法行為に基 づく損害賠償請求においてYが詐欺の手段として配当金名下にXに交付し た金員の額を損益相殺等の対象としてXの損害額から控除することは,民 法 708 条の趣旨に反するものとして許されないとされた事例
会社分割に伴いゴルフ場の事業を承継した会社が預託金会員制のゴルフク ラブの名称を引き続き使用している場合における上記会社の預託金返還義務の有無
1 犯罪捜査に当たった警察官が犯罪捜査規範 13 条に基づき当該捜査状
況等を記録した備忘録は,刑訴法 316 条の 26 第 1 項の証拠開示命令の対象 となり得るか
2 警察官が捜査の過程で作成し保管するメモが証拠開示命令の対象とな るものか否かの判断を行うために,裁判所が検察官に対し同メモの提示を命ずることの可否
1 日本道路公団総裁の解任処分について,「その他役員たるに適しない と認めるとき」に該当する処分理由が存在し,適法であるとされた事例
2 日本道路公団総裁の解任処分に係る聴聞の手続に違法性はなく,解任 処分の理由も特定して提示されたものと認められた事例
ホテル等建築の適正化に関する町の条例が風俗営業等の規制及び業務の適 正化等に関する法律や旅館業法に抵触しないとされた事例
麻酔科医が急性心機能不全により死亡した事案につき,病院開設者に安全 配慮義務違反による債務不履行責任を認めた一審判決を維持したが,業務 起因性等につき詳細に判示し,かつ,同医師の過失割合を拡大して認定した事例
豊田労基署長事件 自動車製造会社の品質検査業務に従事していた労働者の心停止の発症及び これに続く死亡が業務に起因するものであるとして,労働者災害補償保険 法に基づく療養補償給付,遺族補償年金及び葬祭料を不支給とした労働基 準監督署長の各処分が取り消された事例
借地借家法 38 条 2 項により交付すべき「書面」は,常に,賃貸借契約書と 別個独立の書面を要すると解することはできないとされた事例
特別養護老人ホームにおける入所者の誤嚥死亡事故について,ホームを設 置した社会福祉法人の不法行為責任が認められた事例
1 被告らが主張する,一般人の感覚からは公表を好まない事実も含めて 積極的に公表していた人物と婚姻し,さらに当該人物が原告との婚姻の経 緯や婚姻生活などのプライバシーを詳細に公表していたなどという事実を 前提としても,名誉毀損の被害者と主張する者において,不貞行為を行っ たという摘示事実についてまで公開を容認したことにはならないとされた事例
2 ある人物の社会的評価を低下させる記事について,被告らが主張する 取材経緯に照らして,その内容が真実であるとか,真実であると信じるに つき相当の理由があったとはいえないとされた事例
江戸川区受動喫煙訴訟判決 区が区役所の執務室内において区職員の生命及び健康を受動喫煙の危険性 から保護するよう配慮すべき義務に違反したとされた事例
平成 9 年 9 月期及び平成 10 年 3 月期における銀行の関連ノンバンクに対する貸出金の償却・引当に関する会計処理をするに当たり,商法(平成17年法律第 87 号による改正前のもの)32 条 2 項所定の公正なる会計慣行と 認められる資産査定通達等により補充される改正後の決算経理基準による ことなく,それまで公正なる会計慣行とされていた税法基準により補充さ れる改正前の決算経理基準によった場合であっても,前者の基準が当時に おける唯一の公正なる会計慣行とはいえず後者の基準もなお当時における 公正なる会計慣行であったとして,同基準に従い配当可能利益があるとし てした配当手続に違法はないとされた事例
1 著作権法 2 条 1 項 10 号の映画製作者についての認定がされた事例
2 著作権の譲渡契約において,翻案権についての 61 条 2 項の「特掲」が されていたとはいえず,さらに,翻案権が譲渡人に留保されていたとの推 定を覆すに足る事実も認められないと判断された事例
3 映画の著作物について,複製権侵害が認められなかった事例
1 マンションを販売した不動産業者に,当該マンションで飛び降り自殺 があったことを告知,説明すべき義務があるとされた事例
2 上記義務違反によって原告が被った損害は,性質上,損害額を立証することが極めて困難であると認められるとして,民事訴訟法 248 条の趣旨 を援用して,慰謝料名目の損害賠償を命じた事例
刑訴法 316 条の 32 第 1 項の「やむを得ない事由」について,同法 328 条に よる弾劾証拠の取調請求には,「やむを得ない事由」があるとした上,原 審裁判所が,弁護人のした同条による請求をすべて却下したことが違法であると判断した事例