最も長い歴史をもつ判例実務誌
《解 説》
第一 事案の概要
一1 X(原告、控訴人、上告人)は、「グアニジノ安息香酸誘導体及び該グアニジノ安息香酸誘導体を含有する抗プラスミン剤と膵臓疾患治療剤」という名称の化学物質と医薬品についての発明に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有していたが、本件特許権は、平成八年一月...
《解 説》
一 婚姻届を提出せずに夫婦生活をしているX1及びX2が二人の間に生まれたX3の出生届を提出したところ、Y1(市長)はX3の住民票に世帯主であるX1との続柄を「子」と記載した。当時は、嫡出子の世帯主との続柄は「長男」、「二女」等と記載されるのが例であったので、Xらが、右続柄の記載...
《解 説》
一 本件は、京都市の住民であるXらが、京都市民生局及び住宅局の職員らが架空の懇談会等の名目で内容虚偽の会計処理文書を作成し違法に公金を支出したとして、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、市に代位して、右職員らに対し、右違法な公金の支出により市が被った損害の賠償を求めた事案...
《解 説》
本判決は、全面的価格賠償の方法による土地及び借地権の分割を認めた原判決を上告審として是認する結論を採ったものであり、事例として参考になると思われる。また、本判決には、全面的価格賠償の方法による分割を命ずる場合の判決主文の在り方について、遠藤光男、藤井正雄両裁判官の詳細な補足意見...
《解 説》
一 本件は、交通事故で死傷した被害者とその相続人が加害者と自動車の保有者に対して損害賠償を求めた事件であり、事案の概要は、次のとおりである。
Y1は、片側二車線の国道の歩道寄りの第一車線をY2保有の自動車(Y車)を運転して走行中、中央線寄りの第二車線に進路変更しようとした際、...
《解 説》
一 被告は特許庁に対し、原告特許の無効審判を請求し、無効審決がされた。本件は、原告が本件無効審決の取消しを請求する審決取消訴訟であり、原告は、本件訴訟を提起するとともに、特許庁に対し、明細書の特許請求の範囲を減縮する訂正審判を請求し、訂正を認める本件訂正審決がされた。平成五年法...
《解 説》
今回の改正に係る民訴法は、高等裁判所が控訴審として言い渡した判決に対する最高裁判所への不服申立てについて、これを上告と上告受理の申立てに二分する制度を採用したが、本決定は、右各手続の相互関係に関する論点の一つを解決したものである。
一 本件の原告であるXらは、その被相続人であ...
《解 説》
一 本件は、Xが、Yに対し、商法二六六条の三に基づき、損害賠償を求めた事案である。
原審は、Yはその代表取締役としての職務を行うについて重大な過失があったものというべきであるが、Xにも損害の発生について重大な過失があるとして、過失相殺を行い、Xの請求を一部認容した。原判決に対...
《解 説》
一 本件は、一般債権者が配当要求をした後に不動産競売手続が取り消された場合において右配当要求に係る債権が時効の完成により消滅したか否かが争われた事件であり、事案関係の概要は次のとおりである。
1 Yらの被相続人であるAは、Xの保証の下に、昭和五一年七月三一日に㈱中国銀行から二...
《解 説》
一 本件は、Y町の住民であるXら(七名)が、Y町の情報公開条例に基づいて、建築業者Aによるマンション新築工事に関する情報公開請求を行ったところ、Y町がAから提出されていた「意見書」について、約一年半の間にわたって何らの非公開事由も存しないのにこれを公開しなかったため、その間、X...
《解 説》
一 本件は、原告の夫(本件被相続人)が平成四年九月に死亡したことにより開始した相続に係る原告の相続税に関して、原告が右相続により取得した取引相場のない株式であるA株式会社の株式(本件株式)の価格(相続開始時における時価。相続税法二二条参照)がいくらであるかが争われたものである。...
《解 説》
一 事案の概要
甲県の住民であるXらは、Y1が甲県から指名競争入札により水道管理所施設工事二件を受注したのはYら業者の談合の結果であり、甲県は、Yらに対し、談合がなければ形成されたであろう価格と落札価格との差額相当額等の損害賠償請求権を有しているところ、その行使を違法に怠って...
《解 説》
一 本件は、島田市の下水道施設の電気設備工事について独占禁止法違反の談合を行ったとする日本下水道事業団と各社に対し、島田市に代位して、談合がなければ形成されたであろう価格と実際の落札価格又は請負価格との差額相当額等の損害賠償を求めた住民訴訟である。
本件において、原告らは、財...
《解 説》
一 本件は、女性従業員Xが、勤務先のY1会社の男性上司Y2から懇親会の席上でキスをされたりスカートをめくられたりなどのわいせつ行為(セクハラ行為)をされたとして、Y1、Y2に対し、慰謝料等(二二〇万円)を請求すると共に、Y1に対し、Y1の責に帰すべき事由により出勤することができ...
《解 説》
一 本件は、書籍販売会社の営業部次長として、中学生用学習教材の訪問販売に携わっていた被災者が、営業部員の販売活動に同行しての営業指導中、脳内出血を発症したとして、労働者災害補償保険法に基づき休業補償給付の支給を請求したところ、業務外と認定する処分(不支給処分)を受け、これに対す...
《解 説》
一 事案の概要
本件は原告が被告との間でマンション(以下「本件マンション」という。)の一室(以下「本件建物」という。)について、売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したところ、本件マンションの近隣に公衆浴場(沢の湯)があり、その煙突(以下「本件煙突」という。)の存在...
《解 説》
一 Mの債権者であるNが、不動産競売事件においてMが根抵当権者として受領すべき配当金交付請求権を差し押さえたところ、Mから同競売事件の申立てを受任した弁護士である抗告人が、Mの代理人として同競売事件を申し立てその手続を進行させた結果、NはMに対する債権の回収を図ることができるの...
《解 説》
一 判決により認定された事実関係は次のとおりである。
Xらは税理士であるYに相続税の申告手続を依頼した。右依頼に際し、Xらは、被相続人の先代に関する相続税の支払も残っているので、今回の相続税額をできる限り低くしてもらいたいと考えていることをYに伝えた。ところで、Xらには二億円...
《解 説》
一 XはYとの間で平成六年一一月重油等の売買をしたので、その代金請求をするというのが、本件訴訟である。この売買は、当事者をY・A・X・Yとする環状取引(被告から売却され、最後に被告に売却されるもの)として成立させようとするものであったが、YはAに対して代金相当額を帳簿上計上して...
《解 説》
一 女子高校生であるAは、平成五年、膠原病の一種である全身性エリテマトーデス(SLE)に罹患し、広島市内の大学病院で入通院治療を受けていたところ、伯母から、鹿児島市内で神霊療法(心霊術)による治療行為を行っていたYの神霊療法を受けるよう勧誘を受けた。A及び母は、これに応じて、同...
《解 説》
一 本件は、「事案の概要」にも記載がある通り、Yの車に同乗していたXが衝突事故によって傷害を負ったことにつき、運転者・保有者のYに損害賠償を求めた事案であるが、本件の特徴は、その後の経緯がかなり長い中で「心的外傷後ストレス障害」が争われたことである。
Xは一八歳であった昭和六...
《解 説》
一 A(大正一〇年生まれの男性)は、肺気腫、結核、一二指腸ポリープ、肺ガン等により、被告病院への入院を繰り返していたが、昭和六二年九月の左上葉肺切除手術後は慢性呼吸機能障害の状態に陥り、同年一二月から昭和六三年五月まで、同年六月から七月一九日までの間、肺気腫等により被告病院に入...
《解 説》
本件は、家庭裁判所による遺産分割審判の確定後に、同審判における具体的相続分(民法九〇三条一項)の算定を不服とする相続人(原告・控訴人)が、自己の主張する具体的相続分につき、地方裁判所に民事訴訟(確認の訴え)を提起したという事案である。原判決は、大阪地判平2・5・28本誌七三一号...
《解 説》
一 訴外A(明治三三年生)は、平成七年一二月一六日に満九四歳で死亡したが、同年一月一〇日、入院中の東京都老人医療センター内において、公正証書によって遺言をした。
しかし、Aの四男であるBの妻及び子であるXらは、Aのその余の相続人であるYらを相手方とし、Aは、遺言当時、危篤状態...
《解 説》
一 X(夫、原告)は、オハイオ州で生まれた米国人であり、中国人のY(妻、被告)と婚姻して、香港で同居し、米国籍の長男Aをもうけた。その後、Xの転勤で、XとYは来日し、日本で数か月同居していた。しかし、X、Yは不仲になり、いったんYはAを連れて実家のある上海に戻ったが、Yを追って...
《解 説》
一 Yは、平成一〇年一月一日、第三者割当ての方法で新株二〇〇万株を発行したところ、Yの株主であるXが、右新株発行は、特に有利な価額をもってなされたにもかかわらず、株主総会の特別決議を経ていないとして(商法二八〇条ノ二第二項)、右新株発行の無効確認訴訟を提起した。これに対し、Yは...
《解 説》
一 本件は、職務発明をした従業員Xから会社Yに対して、特許法三五条三項に基づき、承継についての相当の対価を請求した事案である。
本件の主な争点は、①相当対価の額はいくらか、②発明考案規定により、Xの対価請求権が制約されるかである。Yは、①については、本件発明は、他の従業員Aの...
《解 説》
一 本件は、大阪精神医療人権センター(以下「人権センター」という。)に所属する原告ら弁護士が、被告医療法人北錦会開設にかかる大和川病院(診療科目は精神科と神経科)に入院中の患者に面会を求めたところ、その面会申入れが違法に拒絶されたため精神的苦痛を被ったとして、被告北錦会のほか、...
《解 説》
一 本件は、被告人が、知人の暴力団組長からその面子を潰したとして、暴力団事務所に拉致され監禁状態に置かれた上、連日殴る蹴るなどの暴行を加えられたため、この際、右事務所に放火して騒ぎを起こし、組員らが消火に当たっているすきに逃亡するしかないと考え、右事務所の壁等に放火し、同室の一...
《解 説》
一 本件は、被告人の税務申告等の顧問を務める税理士の集金事務代行者が、税理士が顧問先から受け取る顧問料等の一括振込先を誤って被告人名義の銀行普通預金口座にしたため、本来右税理士が受けとるべき顧問料報酬金七五万円余が被告人名義の右銀行口座に振り込まれ、これを奇貨とした被告人がその...
《解 説》
一 本件は、特別賄賂罪すなわちモーターボート競走法における贈収賄事犯である。公営ギャンブルとしてのモーターボート競走は、都道府県に設立される公益法人モーターボート競走会が通常、競争施行者である自治体から委託されて事務を行う。このモーターボート競走会の役員等に関して贈収賄罪が規定...